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「意図の三つ編み」

沖縄とはいえ、しっかりと寒い朝。
とはいえ、家は南国仕様。湿気対策が第一だから、通気性だけはすこぶるよい。
仕方なくセーターを重ね着したら、なんと無数の穴がっ。虫の仕業。

脱ぐのが億劫で、着たまま繕った。

毎年のように思う。「なんなら冬眠したい」。
布団至上主義者と化す二月の就寝は夢三昧。

昨晩の夢の中で、わたしは直径3メートルくらいの円盤状の物体を前にし、ハナレグミの永積くんからレクチャーを受けていた。
永積くんは、「まあ、思い切って入っちゃって。とりあえずこの中で起こることはぜーんぶこの漫画に描いてあるからさ。いちおう目、通す?」
あの美声で、そう言った。
で、「はい」って手渡された漫画本。ページをパラパラとめくっただけで、内容をほとんど把握する。
そしたら円盤の上部が勢いよくパッカーンと開いて、「よっこらしょ」と跨ぐ。
と、たちまち視界に広がっていたのは、だだっ広い赤土の大地。一瞬、「火星?」と思ったけど、どうやら地下のようだ。
わたしは小高い丘にいる。
眼下にはミニカーくらいの軍用車両がうじゃうじゃと訓練をしていて、粉塵が舞っていた。
「あー、これ漫画で見たやつだ」
と、そのとき踵になにかがドシッとぶつかってきて、「はっ!」と見たら、世にもおぞましい人面の、猫くらいのサイズのムカデだった。
ギョッとしながらも、「これも漫画で見たやつ!」でしかないので、そいつが攻撃しないのも分かっているから、生理的にぞわぞわしつつもかわす。

場面変わって、巨木の下にたくさんの人間が寛いでいる。自由に隆起した根っこはダイナミックにぐにゃりと波打っていて、サキシマスオウノキかもしれない。
人々は根っこの壁にもたれたり、その形状を使ってかくれんぼをしたり、それぞれの時間を公園みたいに過ごしている。

「この風景も見たやつだ」

のちに続くことも全部、いいこともそうじゃないとことももはや既知でしかない。
それはある意味、最強だった。


起きてから、しばらくぼーっと考える。
(イシスの巫女、『タフティ』の言うように)「やっぱりシナリオってあるのかなぁ」。
せっかくなので、無駄に長いわたしの三つ編み(ズボンのゴムに挟まるほど伸びた髪)を、脊髄感覚のメタファーとして機能させなくちゃな!笑

昨今は、有象無象の情報が飛び交っていて、いったい何が真実かなんて皆目わからん。
わからんながらも、「この人の言ってることは好き」とかはあって、でもその影響がいつのまにか自分の領域まで及び、大切な境界線が曖昧になっていたりすると、たちまち夢でふわっと警告される。
情報の多くは、そもそも一度も会ったことのない人たちによってもたらされている。
そしてその人たちはそれぞれの自分の世界線を生き、その役目を全うしている、だけ。

目の前で起こることに、ピントを戻そう。


昨日、那覇空港まで長男&長女を迎えに行った。わたしと潤ちゃん、末っ子、犬のコザもいっしょに。
コザは車が大好きなので、老齢ながらも尻尾を振ってヨタヨタ付き合ってくれる。
それに「ただいまー」って車のドアを開けたらコザ居たー!なんて、長男&長女にとっては最高なお出迎えなはず。

で、いざ空港で出待ちしていると、コザが舌を出してハアハアし始めた。喉が乾いたのだ。
がしかし、水は持てども肝心の皿が見当たらない。
なんとか車内で代わりになるようなものをガサゴソ探していたら、末っ子が「ここにお水をいれたらいいんじゃない?」と、自分の両手をすぼめた。
そ、それは最終手段だと思ってたのに、こんなにも早い段階で出してくるとは。
わたしはその尊いくぼみに水をそそぎ、その水をコザはペチャペチャ飲んだ。

「目の前」が、いちばんの特等席である。

追伸:永積くんから渡された漫画本には、「起こる出来事」は描いてあっても、それに対する「感情」や「解釈」はいっさい描かれてなかった。



















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