シリーズ・留学を考える [9] - 小中学生からの留学
弊社では、中学生の年齢から長期で留学する人も増えてきた。
小学6年生の2月からニュージーランドの中学や高校に入学して、5年~6年間留学する人もいる。
留学は大学からで十分だとか、中学生の年齢で留学は難しいだろうとおっしゃる方もいるだろう。
実際はどうなのか?現実に小学6年生や中学生から留学した人たちを見てきた経験から考えてみたい。
たとえば、5年制のニュージーランドの高校を、現地生徒と同じタイミングで入学して5年間在籍する場合は、日本の中学1年生の3学期から5年間留学するのが一般的だ。ただし、生年月日によっては、日本の学年とニュージーランドの学年が一致しないことがあるので、小学6年生のときにニュージーランドのインターメディエイトスクールから留学を始めて、6年間留学をしている人もいるし、小学6年生から5年間留学している人もいる。
どちらにしても、ニュージーランドの高校(High School)の初年度、Year 9 から学校に入ると、現地生徒たちもいろんな中学校(Intermediate School)から入学してくるので、みんな一緒に新しい学校でスタートを切ることになる。友達もできやすいし、先生たちも、留学生を含めて全ての生徒が学校に慣れていないことを前提に、授業運営や学年運営をしてくれる。
特に、寮生活をする場合、Year 9 から入ると、現地学生も親元を離れるのが初めての人が多いから、ほとんどみんながホームシックになっていることを考慮して、寮監督がいろんなイベントをしてくれたり、ケアをしてくれたりする。みんな状況が同じなので、親元を離れてさみしい思いをしている留学生も、同じ気持ちのYear 9 の同級生と分かり合える。
これが、Year 9 (あるいはYear 7や8)から留学をする一つの大きな利点だ。
また、特にラグビー中学高校留学生は、留学期間中に何回ラグビーシーズンを経験できるかというのも大きなポイントだ。
ニュージーランドでは強豪高校でもラグビーシーズンが決まっていて、シーズン以外は、一部のアカデミーの授業がある高校を除き、練習も試合も原則行われない。だから、たとえば3年間の留学だと3回しかラグビーシーズンを経験できない。もし、強豪高校のトップのチームでプレーすることを考えるのなら、3回目のシーズンで一軍に入る必要がある。それを考えると、2回目のシーズン、つまり留学2年目にはある程度の実力が認められる必要があるし、そのためには、1回目のシーズン、つまり留学初年度で十分に実力を発揮することが求められるだろう。
ラグビーシーズンはおおよそ5ヵ月間。その間に実力を発揮して、認められるのはかなり大変だ。特に留学初年度は、生活に慣れて英語力を上げることにフォーカスをするので、ラグビーで力を発揮するまではいかない人も多い。
ニュージーランドのラグビーのやり方にも慣れていないし、シーズン中いつどこで何が行われるのか、相手チームはどんな実力があり、そのために何を準備しなければならないのか、などもよくわからない。
もちろん私たちは、今までの経験をもとに、留学が始まるときに、年間のスケジュールを伝えるし、いつまでにどんなことをするべきか、どのタイミングでどんな力をつけるべきか、それを誰にいつどのように示すべきか、などをきちんと伝える。けれど、留学生は未経験ゆえに、実感としてなかなかわからない。多くの留学生は、2年目から自分で考えて動けるようになってきて、長く留学することで、いろんなチャンスがめぐってくる。
また、英語の伸びを見ていると、多くの場合、一年でも若い人のほうが、聞く話すの英語力の伸びが早いことも、留学を中学生の年齢から始める大きなポイントの一つだろう。
一年遅れるとその分英語力の伸びはにぶる。もちろん個人差もあるし、それまでの英語力にもよる。また、留学生の性格や留学生活の過ごし方によっても変わってくる。
けれど、今まで15年以上たくさんの若い留学生たちを見てきた経験から言えば、15歳と13歳では、明らかに英語力の伸びが違う。英語力の伸びだけを考えると、できるだけ若い年齢で留学して英語環境で生活するのがいい。
ただ、年齢が若いときから留学するマイナス面も確かにある。
やはりホームシックが強い人がいることも問題になるだろう。小学6年生や中学生の年齢で一人で留学に来るのは、精神的な負担が大きい。まだ親に甘えたい年齢で、言葉もわからず、文化も違う場所で長く暮らすのは、とても大変だ。そして日本で見守る親御さんも、子どもがホームシックになるととてもつらい。すぐにでも飛行機に乗って会いに行きたいと思う。
ただホームシックは3週間もすればほとんどはおさまる。だからホームシックの期間どう過ごすのか、どんなサポートがあるのか、そこがポイントだ。
また、親御さんのなかには、中学生の年齢から長く留学すると、もう日本でいたときの感覚や感性がなくなってしまうのではないか、と心配する方もいらっしゃる。
確かに、留学生はみんな、中学や高校を日本でずっと通う人たちとは違う成長の仕方をする。感覚や感性も、留学先の影響を大きく受けるだろう。
でも逆に言えば、そのために留学をするのだ。日本でいるのと同じ成長の仕方をするのなら、留学の意味は半減する。
12歳から長く留学している人でも、機会があれば日本食を食べたいと言うし、日本の文化もずっと好きだ。話をしていても、日本の中学高校生と似た感覚や感性も持ち続けているのがわかる。
だから、すでに12歳にもなると、そこから感覚や感性が根本的に全く変わってしまうことはあまりないようにも思う。何年留学しても、どこかで小学生のときに身についた感覚や感性が残っている。
これらのプラス面マイナス面、いろんなことを考えて、最近は、早ければ小学6年生から、遅くても中学2年生くらいからの長期留学を考える人が増えてきている。
その場合、留学を考え始めるのは、小学4年生くらいだ。弊社でも、小学4年生か5年生の方からのお問合せが増えている。
つまり今は、10歳前後が、留学を本気で考え始める最初の年齢なのだ。
そして、実際に小学6年生や中学生の年齢から留学を始める人は、本人もご家族も、小学5年生か遅くても6年生の時には、「留学しよう」と一度決断をする。つまり中学高校留学は、小学生の人生の決断なのだ。
それは早すぎるだろうと思われる方もいらっしゃるだろう。そう考えるのも無理はない。
でも弊社で12歳や中学生の年齢から留学している留学生たちを見ていると、その年齢から留学したからこそ今の彼ら彼女らがある、と思える人たちばかりだ。もしもうすこし遅く留学をスタートしていたなら、今の成長はないし、今の進路もないし、今の結果もないだろう、と確かに言える。本人に聞いても、「中学生のときから留学してよかったです」と断言する。
もちろん個人差もあるだろう。ご家族の考え方もあるし、費用も大きな問題だ。
でも、長年たくさんの若い留学生たちとその後の成長を見ていると、もし状況が許すのなら、日本の小学生や中学生の年齢から、5年間以上の留学を考えてみるのもいいと思う。