シリーズ・留学を考える [2] - 場所を移動する意味
前回、留学とは「経験」で、その経験の条件として「場所を変える」「出会う人を変える」「生活の時間を変える」の3つをあげた。
今日は場所を変えるということについて書いてみたい。
留学は、日本でそれまで暮らしていた場所を出て、海外に行き、そこで暮らす。
場所を変えるということは、留学する本人がフィジカルに「動く」必要がある。動くには大きなエネルギーがいる。そのエネルギーを「動く」ことに向けるためには、何らかの動機もいる。その動機を持つためには、動く前に十分、そして深く考える必要もある。
また、留学する前には、動いた先がどんなところなのか詳細にわからないことが多い。自分がどんな場所に行くのか、どんなところで暮らすのか、それが事前に具体的によくわからないのが留学だ。だからとても不安だ。
その上、動くのはたいていの場合、自分ひとりだ。留学に行く前はいろんな人が声をかけてくれるし、助けてもくれる。けれど、飛行機に乗るために出国ゲートをくぐるのは、自分一人だ。とても孤独だ。
そして、実際に留学に行く、つまり生活の場所を変えると、目に見えるものがそれまでと大きく変わる。それまでの生活では見えなかったものが見える。目だけではなく、耳で聞こえることも、肌で感じることも変わる。
人間、見えたり聞こえたり肌で感じたりすることが変わると、必ず何かを感じる。「おっ、なんだこれは?!」とか「信じられない!」とか「なんでこんなことがあるんだ?」とか、「すばらしい!」とか「最悪だ!」とか、場所を変えたからこそ感じることを強烈に感じる。
そんないろんなことを感じると、それに対して何かを考える。「この目の前にあるものはなんなのだ?」「こんなことが起こる原因はなんなのか?」「日本と違うことがあたりまえなのはどうしてなのか?」そして、文化とか習慣とか、民族とか差別とか、国とか政治とか、経済とか歴史とか、そんなことについて考える人もいる。
留学をすることで、生活の場所を変える。生活の場所を変えるには、事前に大きなエネルギーや動機、深く考える時間が必要で、先のことを考えるととても不安で、移動するときはとても孤独だ。
移動した先では、それまでいた場所では感じないことを強く感じ、それによっていろんなことを考え、今までに興味がなかったことにも目を向ける。
その結果、日本で暮らしていたときとは全く違う成長をする。
それが、留学によって場所を変えることの意味だと思う。