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シリーズ・留学を考える [28] - こんな留学生がいた : 小学生からの長期留学

ここ数年、留学のお問合せの年齢が低くなってきている。

それにともなって、中学高校留学を始める年齢が、以前は日本の中学3年生の3学期から3年間が多かったけれど、中学2年生から4年間、中学1年生から5年間などの人が増えてきた。

留学を中学生から始めると、やはり英語力の伸びが違う。もちろん個人差はあるけれど、15歳と14歳では、英語力の、特に聞く力の伸びが異なると、長い間たくさんの留学生を見ていて感じる。

14歳で留学を始めた人は15歳で始めた人よりも、英語が聞けるようになるまでの時間が短い。全く英語が聞けなかった人がおおよその意味がつかめるようになるまで、平均して3ヵ月くらいかかるだろうか。それが14歳ならもう少し早く聞けるようになるし、年齢が一つあがるにつれて、だんだん長くなる。

だから、友達や先生との英語での会話をスムーズにできるようになるためには、特に聞く力を伸ばすためには、少しでも早く留学をスタートさせるのがいいと言える。

ただ、話す力はその人の性格にも大きく依存するし、読み書きは自分で机に向かって勉強しなければなかなか伸びない。誰にでも積極的に自分から話しかける人や日本でもよく話すタイプの人は話す力も伸びるし、一人の時間に英語の読み書きの勉強をしっかりとやる人は、その力も伸びる。

留学は経験だし、破壊と再構築が必要だ。経験を自分のものとしそこから学び成長したり、それまでの自分を壊し再構築するには、やはり年齢が若いほうがいい。今までの常識を疑い、それまでの考え方を一旦わきに置き、新しい文化を学び、それを吸収して自分のものにする。そんなことをするには、できるだけ若いほうがいいだろう。

多くの留学生を見てきて感じるのは、日本で高校生活を1年以上送った人は、それまでの自分をなかなか壊せない人が多いことだ。なぜかはわからないけれど、日本の高校に1年以上通った人とそうでない人とでは、留学生活での成長の仕方が違うように思う。

もちろん個人個人で違うし、高校生から留学に来ても大きな成長をする人もいる。でも、15歳という年齢が、日本での常識や考え方が固まり始める一つのポイントなのかもしれないとも思う。あるいは、SNSなどでずっと日本の高校の友達とやり取りしていると、どうしてもそちらに引っ張られるのかもしれない。

英語力の聞く力や、留学生活での成長の度合は、そのスタート時の年齢によっても、大きな影響があるのだ。

弊社の留学生の中には、12歳から長期の中学高校留学を始めた人も何人かいる。その中でも、2014年2月、日本の小学6年生の3学期から、ニュージーランドの高校のYear 9 で5年間の中学高校留学をスタートした留学生がいた。

男子校の寮で留学生活をスタートさせた彼は、最初はホームシックで「日本に帰りたい」と泣いていた。大きな夢を胸に留学生活を始めたけれど、小学6年生12歳で親元を離れて、18歳の大先輩もいる寮で一人で留学生活を始めたら、誰でもホームシックになるだろう。

でも、3週間ほどたつとホームシックもなくなり、伝統高校の寮生活にもなじみ始め、友達もでき、ゆっくりとその生活を楽しめるようになってきた。

彼はラグビーも留学の大きな目的の一つだったけれど、留学初年度から、学校の年齢別のトップのチームに入り、地域の代表にも選ばれ、めきめきと実力を発揮し始めた。留学初年度中に13歳の誕生日を迎えたとはいえ、まだ日本では中学1年生の年齢だ。そんな彼が、留学生活に自らなじみ、友達を作り、ラグビーでも高く評価された。

まだまだ親御さんに甘えたい年齢だし、もし日本にいれば身の回りのことをほとんどお母さんがやってくれただろう。でも、留学生活で寮のルールを守り、団体生活をし、言葉もわからない中で、周りからの高い評価を得た。誰もができることではない。

その後も毎年ラグビーの地域選抜に選ばれ、高校最終学年のときにラグビー強豪高校である留学先のセントビーズカレッジで、1st XVに選ばれた。その連絡を受けたときは、小学6年生で留学をスタートしてからの彼をずっと見守ってきた私も、ほんとうにうれしかった。

多くのニュージーランドのラグビー強豪高校のグラウンドには、いくつものラグビーフィールドがあり、いつもラグビーポールが立っている。その中でも、1st XVしか使えないフィールドがあり、ナンバーワングラウンドドなどと呼ばれている。彼の留学当初のゴールは、そのナンバーワングラウンドで1st XVとして試合に出場し、ハカをすることだった。

その夢を、5年間の留学でみごとにかなえたのだ。どれほど努力をしたことだろうと思う。小学6年生からコツコツと5年間、自分の夢に向かって継続して努力するのは、ものすごく難しいだろう。それをやって夢をかなえたのだ。

高校留学最終学年のときに彼に会ったある日、彼が遠くから歩いてくるのを見て、少年だった彼がとてもいい好青年になっていると感じた。ついこの間小学生だったのに、もうすっかり大人に近い雰囲気を出していたのだ。

ニュージーランドでの中学高校留学で、いろんな経験をして、いろんな失敗もして、いろんなことを学び、そして大きく成長したのだなあ、と感じて、とてもうれしかった。

彼は留学当初からニュージーランドの大学進学を目指していて、高校卒業後もしっかりと勉強して、今はカンタベリー大学でスポーツコーチングを学んでいる。もちろん、ラグビーも地元のクラブチームでずっと続けている。

まだまだ彼も夢を追い続けている。私たちもずっとこれからも、彼を応援し続けたいと思う。


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