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真顔の音節
こんばん和栗。
某洗剤のCM、匂い戻りなしへ! とかの “へ” が許せないきくっちゃんです。
それ言えばなんでもいけるバカにすんな。
石川遼優勝へ! みたいなのもね。
いま気になってその洗剤のサイト行ってみたら
ニオイ戻りなしへ!
だった。
ニオイがカタカナなのも最後の!が半角なのも気に食わない。
センス合わん人種との接触ゼロへ!
さて唐突ですが、こう言ってみます。
歌モノ音楽を作っていると強烈に意識させれられること。
日本語=サウンド面での演出が不得意な言語
英語=言葉自体のサウンドで演出かましてくる言語
あー、英語ってずるいんですよね。
もう言葉それ自体がサウンド面での演出を持っている。羨ましい。
"I love you."
アラヴャって一瞬で言ってもいいし、アィラーーーーヴヤ! みたいに引き伸ばしても間が持つ。
アーィ! ラーヴ! ヨウ!
って一個ずつ投げてもいい。そして、この “一個ずつ” の最小単位が適度に広がりを持つ。これが素敵。
ア!
イ!
とはならずに、最小でも
アーィ!
音楽的だなあ。使いやすい。
強弱や高低やスピード変化もどんどん要求してくる。
子音だけの音節なんてのもひゅんひゅん飛んでくる。
羨ましい。
さきほど「英語:言葉自体のサウンドで演出かましてくる言語」
と言ったのはこういうことなんです。
言語自体がサウンド面での演出をしっかり持っている。
脚本に演出が書かれていると言いましょうか。
それに引き換え日本語は、それ自体がぜんぜんサウンド演出かましてこない。
全ての音節の母音をしっかり発音するのでそれぞれがしっかり独立し、さらにボリュームも同じで、めちゃんこフラットに並んで僕らの耳にやってくるのです。てくてくてくって。
「あいしてる」
この言葉、ただ「あ」と「い」と「し」と「て」と「る」が真顔でてくてくやってきます。
スピードも強弱もまったく要求してきません。
まさに文字ブロックで「あ」「い」「し」「て」「る」って並べた感じ。
音節フルフラット言語。
もう一度英語。
"Silent Night(サイレントナイト)"
ああ、サウンドの質感ごと耳に入ってくる。
もう言葉自体が、僕らの耳に入る前に質感を宿しているのです。
僕はSilent Nightというサウンドをまず楽しみ、そしてその意味を楽しむ。
羨ましい。
耳を楽しませる芸術が音楽だとすれば、英語はもうそれ自体が音楽になっている。
じゃあ文字ブロックを並べるみたいな日本語が全く質感を持たない言語なのか、というと、
そんなことねえ! と思いますよね?
サウンド面で演出をぜんぜん助けてくれない日本語に質感がないのか、というと、そんなことねえ!と思いますよね?
僕も思います。
静かな夜
このフレーズ。静かな夜をちゃんと表していますよね?
青っぽい色が浮かぶ人。
近所の街並みが浮かぶ人。
特定の人の声で再生される人。
ただただ心が落ち着く人。
まあとにかく、「静かな夜」には質感があります。
声に出してみるととっても気持ちいいです。
演出をしてくれない言語なのに。
英語同様やっぱり気持ちいい。
じゃあこの質感はいったいどこで生まれているのか。
英語のように、僕らの耳に入る前から宿しているのか。
うーん。
「し」「ず」「か」「な」「よ」「る」。
文字ブロックにはその質感が宿っているようには感じられない。
てことは・・・。
脳か。
脳だ。
心と言ってもいいか。
日本語の質感って、こちらの心で生まれるのか。
単体で真顔の「し」や「ず」を耳がキャッチし、それらがある一定数心に溜まると突然質感が生まれる。
静かな夜、っていう質感が。
いいなあ。
日本語って変だなあ。
音楽的じゃないけど、なんか可愛いなあ。
小説とか、この真顔の文字を何万字も並べるんだもんなあ。
変わってるよなあ。
この、単体で真顔の音節がてくてくこっちにやってくる感じ、どうにか(西洋音楽ベースの)歌にできないかなあ、と日々悩んでおります。
いっこ試しに作ったのがこの「たたかい」って曲です。
コロナだもんで、メンバーそれぞれ在宅テレワーク制作したんですが、ボーカルしょったんがiPhoneで自作したこのMusic Video、まさに僕がずっと悩んでる日本語の音節の話を映像化していてびびった。
日本語の音節一つ一つにはなんの顔もないことを鮮やかに表現してる。
そういう話メンバーでしないのよねえ。
興味あったら聞いてね(宣伝でした)
あ、歌詞も載っけておこう。
「たたかい」
島から島へと違う奴らを見つけに行くんだこれから
愛の愛の愛の愛の愛のうるさいよ
誰の誰の知らないよね
蒸気の柱が黄道面を照らす
街から街へとお前らしさなんて全然いらないし
愛を愛を愛を愛を愛をうるさいよ
選ぶ選ぶ選ぶ選ぶ要らないよね
堪えきれない性格なんだよこのトークはこれでお終い
人から人へとたねをうつして行くのうつしに行くんだよ
愛の愛の愛の愛の愛のうるさいよ
誰の誰の知らないよね
蒸気の柱が黄道面を照らす
そろそろバイトなのでこのトークはこれでお終い