こんな辞め方もあると言う話

以前、退職代行なんて使わなくて
いいよという記事を書いたのだが
少し反応いただいたので、
メール以外の別バージョンの辞め方に
ついて書こうと思う。
そう言えばこんな辞め方をしたことが
あったなって思い出したので。

昔高円寺にある小さな服屋で
働いていた。
まだ若く二十代前半の頃。
当時は高円寺で働くなんて
オシャレすぎる!と思い
嬉しすぎて期待していた。

ちなみにその店はもうない。
今でも会社は存在していて
原宿とか新宿とか各地に店舗が
まだあるが、そこでの出来事を
書きたいと思う。
当時はまだ店舗数も少なく
媒体としては画期的なシステムの
服屋だった為、異質な種類だった。
代官山のオフィスまで行って
面接を受けたのを覚えている。

辞めるに至った経緯も面白いので
そこから書いていく。

小さなお店で細長く縦に
作られた店内に女店長と
2人きりで勤務していた。
面接は本社で行い高円寺店が
どんなお店でどんな店員が
いるのかも知らず、
しかも本当は吉祥寺店で
働きたくて応募をしたので
実は高円寺店は希望の店舗
ではなかった。

たた高円寺も好きだったので、
まいっか!と考えていたのだが
これが地獄の始まりだった…

今なら絶対避けるのだが、従業員が
自分合わせて2人しかいない
店で働くのは最悪だ。
店長と仲良くなれればいいが
うまくいかない場合それはもう
生き地獄である。

当然2人しかいないのでワンオペは
多いが、むしろ1人の
方が気楽で幸せだったりする。
女店長も最初から意地悪だった
わけではないのだが
結構気分のムラが激しく機嫌が
悪いと当たられることもあった。
またワンオペの日は当然開店から
閉店まで店を空けられないので
自由がなくてキツかった。
結果的に言うと私は一月半で
辞めている。
今でも覚えているが、真夏に勤務して
いた為、クーラーが全く効かない
店内で汗だくになりながら
働いていた。

女店長は掃除がなってない!とか
たたみかたが下手!とか
常にキレていたが
(今考えても初めての服屋勤務で
私も畳み方がうまくなかったかも
しれないが、掃除は毎日
していたし畳み方もそこまで
酷くはなかったと思う)

単に好かれていなかったの
だと思う。
あんなにキレられていたのは。
常に前に働いていた子と比べ
られていたし。
それから生理になると機嫌が
悪くなる節があり本人もそれを
言っていたので女性特有の
嫌さもあった。

高円寺は商店街の街である。
隣近所のお店とは必然的に
関わりが深くなり、交友がある
のだが、当時隣の服屋の
おばさまが好意的に話しかけて
くれていた。
働き始めて初日か2日目の頃
そのおばさまが挨拶に来て
くれると女店長がその人に

この子、服屋で働いた経験が
なくて畳むことすらできないのよ!
と言われ微妙な気持ちになったのを
覚えている。
そんな風に言わんでも…
私はここを辞めてかなり経ってから
またアパレル勤務した経験が
あるのだが、その時は畳み方に
ついて怒られることはなかったので
やはり女店長がいびりたかった
だけなのだなと思う。

まあそれで、段々と女店長とは
折がうまくいかなくなっていき
当時の私は今と違いまだ、気が弱く
言い返すとかそう言うこともできず
ひたすら大人しく耐えることしか
できないで過ごしていた。

女店長は頭が本当におかしくて
決定的な事件を起こす。
それが客からお金盗む事件だった。

ある日女店長がお会計をしていた
のだが、お客から万札で出された
お会計に対し、お釣りのお札を
返さず小銭だけを渡していたのだ。

私は最初気がついておらず、お会計を
終えてお客が帰ったのを確認した
後に女店長から誇らしげに
みた?いまの?と言われた。
私が、よく理解できず戸惑っていると

今ね、本当は4300円返さないと
ならないところ300円しか返さなか
ったのと自信満々に私に告げたのだ。

益々意味がわからず、困惑する
私に女店長が手順を説明し始める。

お客が大きいお金で支払いした
場合、本来お札と小銭のお釣りが
発生するが、意図的に小銭から
おつりを返すようにする。
そしてお客からお札は?と言われ
ない限りはそのまま何事もなかった
ように送り出す、客は意外と
気が付かないと言うのだ。
これによりお札の(お客から盗んだ)
余剰金が発生する。
ではそれはどうするのか?と言うと
レジのマイナスが出た場合に
充てると言うのだ。
金庫に閉まって。

でもこれ、嘘だと思う。当時は
信じてしまったが、そんなことを
する人間が自身の懐に入れて
いないとは思えない。
また、そもそもそんな犯罪行為を
何も悪びれず私に意気揚々と話す
女店長も全く理解できなかった。

犯罪だ。
では私はなぜ警察や本社に
訴えなかったか。
今考えても自分の弱さや情けなさ、
私の落ち度でしかないのだが
私は女店長に口を封じられた。

その話をした後で、したたかな
女店長は私の口を封じることも
抜かりなかった。
その話をした後、余剰金から
500円玉を取り出した女店長は
そっと私の前に置き、これ
とっておいてと言ったのだ。
圧はすごかった。私に絶対
言うなよ?という意思がかなり
伝わった。これを受け取ったら
お前も共犯だからな?という
考えが透けて見えた。

当時私は21歳。今の自分から
みれば子供でしかないが成人
していることに変わりない。
でも私は常識の足りなさ
から逆らえなかった。
これを断ったら何をされるか
わからなくて怖かったのだ。
(すでに虐められていたので)

そして私はその500円を受け取って
しまう。情けなく、意思が弱い。
わたしも同罪で共犯者である。
悔しかった。後で返すとか色々
考えたが実行できなかった。

今の私ならその場に直面した
時点で即本社に電話するか警察に
言ったと思う。あり得ないことだ。
でも当時は何もできず無力であった。

それが入って2週間とかもう少し
経った頃の出来事だったと思う。
私は勿論辞めたかった。

しかしワンオペと言うことが
なかなか辞められない原因になって
いた。かと言って女店長に直接
辞めたいと言うこともできない。
なんとか本社のマネージャー
と連絡をとりたかったがそれも
難しかった。
当時はメールでやり取りとかそう言う
概念はない。応募も電話とかだったかな。
情報誌で見て応募した気がする。

とにかく今とは勝手が違う。

でもお釣りの犯罪事件が起こって
以降、なんとか辞める方法を
模索していた。
ある日女店長がお昼買ってくると
外に出た後、わたしは店の電話を
使い急いで本社のマネージャーに
連絡した。
怖かった。
経験がなく、こんな時どう伝える
のがいいかわからず震えた。
女店長が帰ってきたらどうしようと
パニックだった。

なんとか辞めたい旨を伝えると
明日そっちに行くから
そこで話そうと言われる。
明日はワンオペの日だった。

私はこれでなんとかなると
思ったが、犯罪の件を言うべきか
悩んでいた。
自分も犯罪を犯していることに
なっていたからだ。

翌日夕方、ワンオペで店を開けて
いるとぞろぞろと男性陣が
現れた。
なんと、マネージャーだけではなく
社長らも来ていた。
当時、その会社の社長は3人いた。

そもそも原宿の路上で手売りから
始まったこの店は男性3人組で
起ち上げた企業で私はこの日まで
社長が3人もいることを知らないで
いた。

社長やマネージャーに
連れられ店を一時的に閉めさせられ
近くにあった七つ森(純喫茶)に
入る。
社長らはワイワイと、七つ森
名物のカレーやラッシーを頼む中
私は何も喉を通る気がせず
コーヒーを頼んだのを覚えている。

結局わたしは犯罪のことを
言えなかった。どうしても自分が
500円を受け取ったことが怖くて
言えず、ただ店長と折が合わない
ことや辞めたいことを伝えた。

結果はよくあるように説得をされ
とりあえず来月いっぱいまでは
続けてみて欲しいと説得されて
終わった。
そう、正攻法で辞めたいと言うと
結局引き留めに合うのだ。
私は意思が弱い。
引き留められると留まってしまう。
そう言う性分だ。
それがわかっているから、今は
本気で辞めたい時は言わずに
辞めるのだが、当時は勿論そんな
ことはできず言いたいことも言えず
結果辞めることができなかった。

ではどう辞めたのか。
私はそこから少し働くのだが
堪えられず逃げ出している。
トータルで一月半しか働いて
いない。あの女店長のことが苦手
すぎて一緒にいることは不可能
だった。

社長からはワンオペが多いから
土日一緒の日を我慢するだけだよ
とか無責任に言われたがそれでも
無理だった。生理的に気持ち悪いと
女店長のことを思っていた。

当時近所の仲良くしてくれて
いた服屋のおばさんからも
私は煙たがられていた。
最初仲良くしてくれていたのだが
店長と仲が良かったおばさんは
私のあることないことを恐らく
吹き込まれ、いつのまにか私
とは話してくれなくなっていた。

そんな商店街気質のある街で
店を営業していると、色々と
不都合ができてくる。
隣近所や周囲のお店と仲良く
やっていかないと、相当働き
辛くなるのだ。
私は社長らが来た日の夕方から
2時間ほど
本来営業時間であるに関わらず
店を閉めたことを隣のおばさん
から店長に伝わるのではないかと
ビクビクしていた。

案の定翌日、いつもは遅い
女店長が私よりも早く来ていて
私の様子を見ながら上目遣いで
何かあった?と聞いてきた。

私は何も言えず、特に問題ない
ように返事したと思うが

わたしも色々さ、上にバレたら
まずいこともしてるしね…

と言われたので、何か私が上に
話したのではないかと勘づいて
いたのだと思う。
それにしても、今考えると
この人自分が悪いことをしている
自覚はあったんだよな。
タチが悪い。

私は犯罪の件は誰にも
話していないので、当然店長が
上から咎められることはなかった。

そんなこんなで日々が少し過ぎて
いくのだが、結局店長の当たりが
強く我慢の限界が訪れて辞めた。

こう言う店の場合、辞めることは
本当に厄介だ。難しい。
ワンオペなので自分がいないと
店が開かないとか、店の鍵を
持たされているとか
色々あるのだが、とりあえず
その日わたしはこうして辞めた。

女店長と一緒に勤務の日である。
朝早く店長よりも前に出勤した。
シャッターを上げて鍵を開け
中に入る。
そして置き手紙を残した。

そこには辞めたい旨、鍵は後日
郵送する旨を書く。
色々あるが、辞めることで
迷惑かけることに違いはないので
これ以上何も書かないと記した。
(これは店長の犯罪に対しての
牽制であった)

そしてそのまま鍵を閉めると
店を後にした。
シャッターは上げたままにした。
かなりドキドキした。
途中で店長が来たら、隣のおばさんが
気がついたらおしまいだと思った。
怖かった。

女店長は出勤し、私の手紙を
見るだろう。
結局その後鍵を郵送で送り
問題なく辞められた。
特に電話が来ることも、引き留め
られることもなかった。
あっさりと辞められた。

実はわたしは辞める前、
いつも一度は相談している。
この時もだが、本当は前に書いた
退職代行なんて…の記事を書いた
ときも一回は上の人に辞めたい
続けられない旨を匂わせる。
そこはやはり義理があるし、常識
として即辞めなんて行為は本当は
したくないのでそうしているのだと
思う。しかし伝えて引留められて
働いてみたところで改善されることは
一度もなく、結果我慢の限界が
きて無言で辞めることになる。

私からすれば、言ったからね?
あれだけ言ったよね?変わらなかった
のはそちらだよね?
と言う気持ちで最後はせいせいと
辞めている。

二度も三度も辞めたい相談をして
しまうと、こいつは本当には
辞めないだろ、辞める辞める詐欺だと
認定されるし厄介者として
昇級することもない。
一度伝えて改善されないなら
辞めるのみだ。


最近はもうメールやらLINEやら
伝える手段はたくさんあるので
もっと遂行しやすいが
当時は連絡先も知らず、伝える
手段が直接か電話しかなくて
相手が原因の場合それすら
できない状況だったので
まさかの置き手紙と言う形で
辞めたのだが
こんな方法もあったよと言う
話。
それにしても、今考えると
あの犯罪の件は上に伝えるべき
だったと後悔しているし
500円玉を受け取ってしまった
ことは今でもわたしの心を
虐ませている。
所詮私もあの女店長と同じことを
してしまった共犯者なのだ。

だから墓場まで持っていく。

本当はこの後に有料記事で社名
書こうかと思った。
今でもしっかり営業していて
モールにも入ってるような
それなりに有名な店だ。

まあでも高円寺店は数年後に
潰れたし女店長も辞めただろう。

私が辞めた後も同じことはして
いただろうし、いつかは悪事は
バレる。
売上も高円寺は少なかったしね。

と言うわけで、置き手紙でも辞める
ことはできると言う話。


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