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メキシコわくわく旅行日記⑫ヒメネス工房へ
メキシコシティの喧騒を離れ、オアハカの街はゆったりとした空気の流れている。ちょっと、観光地になり過ぎている感じもあるけれど、活気もあるし何より治安がいい。
今日は、ウッドカービング工房を訪れる日。
メキシコに行く前から濱田庄司の記念館などでみて興味があったので、今回の旅行でウッドカービングの工房を見に行けるのはわくわくしかない。
メキシコ旅行が決まった時。ピンポーン!ウッドカービング!と、即答。
「オアハカの動物たち: Vintage Oaxacan Wood Carving (民衆藝術叢書)」
は歴史や、マヌエル・ヒメネスの作品が見れるとてもいい本。
ガイドがホテルまで迎えにきてくれて、ヒメネスの家族の工房にレッツラゴー。ガイドの名前は、フルーリオだったと思う。(?定かではないけど、メモ書いていた名前。)
ガイドと聞いて、メキシコシティのガイドのおじいさんを思い出したが、今回のガイドはメキシコ出身のとてもいい人。歳はほぼ同年代。彼自身が、ヒメネスのウッドカービングの工房に初めて行くらしく、ちょっとわくわくしているのが可愛い。
日本語がとてもうまかったので、世間話をしながら、車を走らせる。
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しかし、妻は昨晩から体調がちょっと悪そう。車の中でも、身体をドアにもたれ掛けて目を瞑っている。なぜか、メキシコシティで購入した、元気一杯の模様のセットアップを着ているが、調子が悪そう。
ヒメネス工房は、吉祥寺のメキシコ民芸の店LABRAVAや大阪の民芸店トンボラが色々イベントをしたり、日本に紹介したりしているので日本での認知度は高いと思う。
車が進むにつれてどんどん街から村と景色が変わっていく。
オアハカ中心街から2時間くらい車で走った丘の中腹にヒメネス工房はあった。
工房の一室は、6畳くらいの広さのお父さんのマヌエル・ヒメネスの作品の展示してある部屋があり、とても興味深かった。さすがマヌエル!
息子のイサイアス・ヒメネスさんはいなかったけれど、作品販売スペースがあったり。
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◯ Isaias Jimenez Hernandez(イサイアス・ヒメネス・エルナンデス)
1961年生まれ。
マヌエル・ヒメネス・ラミレス の三男のイサイアスは、
兄アンヘリコとともに17歳から父の木彫りを手伝うようになり、
その技術を学びながら自らも腕を磨いていった。
家族を持ってからも父マヌエルと同居していたため、そのまま生家の一部を増築しマヌエル・ヒメネス博物館を設立。
※トンボラのホームページより抜粋
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マヌエルの作品は色が抜けていたりするものの、素朴で愛らしい。
ヒメネス工房は、ごめんなさい。正直、期待が大きかった分、少しがっかり。観光に来る人が多いのか?物販(Tシャツとかマグカップとか、イサイアスさんの作品とか)ちょっと商売っ気を感じてしまったのと、イサイアスさんの作品があまり好みではなかった。一応、マグカップなんて購入したりしたけれど、工房を見せてもらって退散。
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ヒメネス工房を出ると、ガイドのフルーリオが、
「隣にもお兄さんの工房だけど見ていく?」
と言うけど、
「別に見なくていい」と僕は言ったのだけど、妻が「せっかくだから」と訪れることに。
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隣のお兄さんのアンヘリコさんの工房。
作品を見せてもらって、びっくりしたのが、とにかく、よかった。
お父さんの作風を継承しつつも独自のものがある。何か、新しい物をつくり出そうとしている感じがする。兄弟でも、違った感じの作品を創るのは面白い。別に兄弟が仲が悪いとかでもなさそうだけど。
○Angelico Jimenez Hernandez(アンヘリコ・ヒメネス・エルナンデス)
1954年生まれ。
マヌエル・ヒメネス・ラミレス の次男で12歳から父の木彫りを手伝い始める。彼が製作に加わるようになり、大きく作風が変化。
しっかり研鑽し滑らかな質感の仕上がり。またいち早くアクリル塗料を取り入れ、ドット模様や細部に至るまでムラなく塗装が為されるようになり、現在のファミリーの作風を作り上げた功労者とも言える。作家性を保つために署名をいれるようになり、父マヌエルのサインも彼が代わりに書いていたようだ。
※トンボラのホームページより抜粋
アンヘリコさんは在宅していて、話をすることができた。
「日本は本当、いい国。前に展示会に行った時も本当に興味深かった。」
という感じで、気さくに話しかけてくれる。
日本の民藝ブームで、アンヘリコさんが潤っているのだったら、本当に日本の民藝ブームも悪くないかなあと思った。
「日本はナイキが安くていい。」とおもしろ発言もあった。ナイキ、メキシコでは高いみたい。アメリカのメーカーの物は値段が上がってるようで、日本でナイキが安くて驚いたと言っていた。
アンヘリコさんのアトリエは、結構質素。
入口では、モニターでディズニーのリメンバーミーがリピート再生されていたけど。お客さんが来たら流すみたい。リメンバーミーの舞台なんだって。
アンヘリコさん、僕が美術を教えていると言ったら興味を持ってくれたらしく、色々話せて本当に良かった。
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そして、悩んだ挙げ句、アルマジロの作品を購入。そして、ディスカウントまでしてもらいました。「日本人は特別」と言いながら。多分お世辞だろうけど。
今思うと、ディスカウントするべきではなかったし、もう何体か購入しても良かったのかも知れない。本当にすごく安くしてくれたので。
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「僕の作品を君の生徒にも見せてくれ。そして、今年日本に行く予定だから、また会おう。」
とお別れを言って、アンヘリコさんと別れた。
本当に、人として良い人。謙虚で。庭に大きな自画像を書かせているので、そんなに本当は謙虚ではないのかも知れないけれど。僕の持った印象は、謙虚ないい人。
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そして、日本に帰ったきてから5ヶ月。インスタのタイムラインに残念な記事が流れてきた。
本当のお別れになるとは思わなかった。
アンヘリコさんが12月23日の早朝に亡くなったことを知った。あんなに元気そうで、笑顔だったのに。
日本で会おうと笑顔で言っていたのに。
作品、大事にしようと思うし、彼の作品の良さを伝えていくことができればと思った。
メキシコのウッドカービングの良さって、中々伝えるのが難しいけれど、デジタルでもなく、技工的でもなく、ストレートな表現の良さは、今後、大切な表現になってくるはずだし、現代の子供達にほうが、新鮮に受け止めるのかもしれない。
本当のお別れ、突然のお別れはとてもつらい。また会えると思っていたから。