あなたがいる世界に私も生きてる話-2019年観劇作品 自分内ベスト3のこと-
※2020/01/20の記事です
もう2020年に入って20日が経ちましたね早い。
去年の手帳を見返していたら、2018年ほどではないにしろ、たくさん舞台やイベントに行ったなあ……となんだか感慨深くなりました。
ガンガン通ってます!みたいな人には全然及びませんが、去年は刀剣乱舞以外の2.5や2.5ではないストレートの舞台にも足を運んだり、見るものの幅が広がって忙しなくも楽しい一年でした。私には合わなかったなあ…という作品がないという奇跡のような一年だった。
備忘録的な意味も込めて、去年見た中で個人的にすごく面白かった舞台ベスト3を書き残しておこうと思います。見てくれ…そして私と感想を話し合ってくれ…
ゴールデンレコード
推しが主演するので、ということで見に行ったらはちゃめちゃに面白くて、千秋楽後にしばらくロスになった作品。もうちょっと見ておけばよかったなあ…
主人公が二人ともよく考えると結構壮絶な生い立ちだな?って部分だったり、魂とか心のありかだったり、シリアスになりそうな要素はめちゃくちゃあるのに、一片たりともシリアスにならない。ちょっと重たくなりそう、と思った次の瞬間に打ち上げ花火みたいに爆発するストーリー。怒られますよ!!??というギリギリを攻めに攻めたパロディ。幕が上がって五分で、女性物下着を被る推しが見られるのはここだけ!
アンドロイドが嫌い、って言ってたタカが、トシをはじめとしたいろんなアンドロイドと触れ合って、どんどん心境が変化していくのがすごく好き。物語の後半で、体を張ってトシを助けようとぼろぼろになりながら説得する姿はコメディのはずなのに泣いてしまいました。刑事の武器は銃じゃなくて言葉……
スラップスティックコメディかと思いきや、冒頭からさりげなく張られていた伏線が、ラストシーンになって生きてきたり、キャラクターの数も多いのに、それぞれに背景がわかりやすくて、もっともっとその世界に触れていたくなる、とても魅力的な舞台でした。
どうにもならないことはたくさんあるけど、皆それをちゃんと飲み込んで前を向いて笑っているような、お腹抱えて笑った後にちょっとだけ泣いて、楽しかった、のほかにも心に何かが残る物語。
個人的に『面白かった』以外にも何かが残る物語は良い物語だと思う。タカ&トシの物語もっと見てみたい。お互い『家族』ってものの縁が薄かった感じがするから、お父さんとタカトシの三人で暮らしてくれないかなとか思ってる。
DVD早く届かないかなー!ていうかよく円盤に残せたね!?本当にギリッギリだったよ!?
ミュージカル『刀剣乱舞』 髭切膝丸 双騎出陣2019 ~SOGA~
ラーメンを食べるつもりで行ったら、回らないお寿司が出てきた、みたいな公演。
源氏の双騎出陣っていうから、ずっとライブやるのかな、って思って行ったら、2部構成で1部は『源氏兄弟の影も形も無い』という攻め攻めに攻めた構成に度肝を抜かれました。
当然ハマる人とハマらない人が顕著に出たわけですが、私はドストライクです。
運がすごく良くて、かなり前の方で見られたのも相まって、会場に入ったときに、世界に飲み込まれた感覚になったのがとても印象に残っています。雨に濡れる荒れ屋敷の庭に迷い込んだような。
髭切、膝丸の演じる、凝縮された曽我物語のあまりの濃密さ。一時間ほどにまとめられた、苛烈で、純粋で、燃え上がるような兄弟の一生。歌舞伎や能や日本舞踊や、あらゆる伝統芸能をミックスした上で、バレエとブレイクダンスすら混じり合う混沌とした、しかしあまりに美しい演目。
親しみやすいのに格調高い。今までのミュージカル刀剣乱舞とは明らかに一線を画した公演でした。ずーーーーっと全てが美しかった。なんという僥倖、なんという眼福。
私は源氏兄弟は『好きだけどものすごく好きというわけではない』という程度の気持ちで行ったのですが、源氏の重宝舐めてかかるなよと後頭部を思い切り殴られた気分になりました。すみませんでした完敗です。
物語の構成もどこか不思議で不気味で呪術めいている。ミュージカル刀剣乱舞のそういうところが大好きなんですが、双騎出陣は、明らかに観客を装置にした『儀式』で、それに気がついたときにはやられた、となりました。あれは『観客』がいないと完成しないまじないです。自分は蚊帳の外の傍観者と思いきや、いつの間にか『逃げられない』状態にされている。ぞっとする、たまらない、もっとやってください。
観客が語り継ぐ事で、双騎出陣は完成します。観客の知覚を利用して、膝丸という刀はますます清廉に、美しく、怪しく輝く。
それはそれとして、まるで夏の夜の幻のように、雨音と雁の羽ばたきの音の中に現れた『曽我十郎祐成』と『曽我五郎時致』に私はもう一度会いたい。再演が楽しみです。
舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice
https://psycho-pass-stage.com/1st/
まっったくのノーマークだったこの舞台を観に行ったのは、原作好きな上司がチケットを余らせていたからで、私は『ひろきさんが主演だし原作も嫌いじゃないのでいいですよ』くらいの気持ちで譲ってもらいました。
それが、見終わって、立ち上がってから膝が震えていることに気づいた、できれば許される限り椅子に座っていたかった。ノーマークだったゆえに、強烈なボディーブローが刺さった、みたいな。
なるべくしてなるしかなかった結末へ突き進んでいく物語には、涙を挟む余地もなく、納得しかできないけれど、それはそれとしてしんどい…という感情を余すことなく味わい、私のゴールデンウィークを塗りつぶした作品。
文句なし2019年ナンバーワン舞台です。見終わった瞬間『私たち何を見せられてたんですか』って言った舞台は初めてだったなあ。
『人間らしさとは何か』『本物とはどういうことなのか』という根源的で答えのない問いを二時間足らずの時間に濃縮して、延々突きつけてくる物語。しかし、難解でありながらエンターテイメントとして成立する、絶妙なバランス。PSYCHO-PASSの名前を冠しているのに、登場人物は全て舞台オリジナルキャラクターという攻めた構成なのに、全員キャラが立っていて、無駄がない。全員の存在に意味がある。
むしろ、PSYCHO-PASSを知らない、2.5を見たことがない、という人でも、用語さえ押さえればあとはストレートの舞台として楽しめるのでは……と思います。
スクリーンを使ったリアルタイムでの映像表現も世界観とマッチしていて美しい。
生で見た時は感動しました。
リアルとバーチャルが交差する世界で、いい男たちが、オーダーメイドのスーツで大暴れするのでそういう絵的な格好良さ、美しさという意味でも見ていただきたいです。スーツのステゴロをたっぷり楽しめます。
あと!ドミネーターが!動く!!喋る!!超テンション上がります。
鈴木拡樹さんの凄まじさを改めて感じた作品でもあります。
とある事情でブレが発生するキャラクターを、シームレスに演じている。それが意図的だと気づいた瞬間戦慄しました。人間性のブレを計算して、違和感なく演じるってそんなことできるの?????
何を話してもネタバレになりそうで何も言えない…けれど、『心をぐちゃぐちゃにかき回される物語』が好きな人は是非見てほしいです。
銃声と暴力と裏切りの果ての裏切り。乖離する記憶と真実。グラン・ギニョールと呼ぶにふさわしい夜。
ホログラムの海は、本物なのか、偽物なのか。
それでも私が何を見せられていたのか、という答えは、私の中にしか存在しない。
ハッピーな気持ちになる!って作品ではないんですが、この道しかない、って結末にたどり着くお話はカタルシスを与えてくれるものです。
もう本当に大好き。結末含めて大好き。
「納得」は全てに優先するぜ。
振り返ると、ノーマークだったゆえに横から蹴り飛ばされた、みたいな作品ばかりだったな、と思います。
逆にそういう話の方が強烈に印象に残りやすいのかもしれません。
あと、悲劇が好きなわけでははないけど、感情を揺さぶられたいんだなあということが如実にわかる…突き刺してかき回してくれよ…生きてるって感じさせてくれ…
期待していたもの、ノーマークだったもの含めて、去年はたくさん良い作品を見られたなあと思います。幸せだった。今年もそういう年だといいなあ。