しばた的2024年ベストバウト2選
去年末、『今年の自分的ベストバウト』を聞かれたのですが、バタついてその席では話せなかったのでここに記します。
「興味のない方にもわかっていただけそうな言葉を選んで書くつもり」とか前回書いておいて、今気づきましたが試合動画へのリンクってそのサービスに登録してないと意味がないですね。すみません。
現地観戦、もしくは動画で見た試合の中から選んでいます。
また、どうしてもどちらかを選ぶことができず、2本あります。
■DDT 2024/5/5
KING OF DDT~20th Anniversary~1st ROUND
セミファイナル トーナメント1回戦 時間無制限一本勝負
遠藤哲哉 vs 男色ディーノ
https://www.wrestle-universe.com/ja/videos/j7KftNBZvYiKdVRz4JyJCk
このトーナメントを勝ち抜いた人は『KO-D無差別級王座』に挑戦する権利が与えられます。
要はDDTの中でタイマン張って、今一番つえー奴誰なん? を決めるためのトーナメントです。
文科系プロレスなイメージが強いDDTの中でも、このトーナメントだけはみんな真面目にビシッとガチタイマンしている印象があります。
そのトーナメント1回戦、わたしの最推し様である男色ディーノ選手と、推しである遠藤哲哉選手(この試合で推すようになった)がぶつかったこの日の試合が、わたしにとっての2024年ベストバウトその1です。
男色ディーノ選手って、イロモノレスラーとか、ゲイレスラーっていう肩書があるんですよ。
だからどうしても試合運びが、一見面白い感じになっちゃいやすいし、特にKING OF DDTトーナメントみたいなガチめのシーズン中だと箸休め的な位置づけなのかな……という先入観がある状態で観ました。
でも、とんでもなかったんです。
この試合でディーノさんは負けてしまい、トーナメントを脱落しますが。
試合相手の遠藤哲哉選手のフィニッシュがもう、すごいんです。
ディーノさんの『ケツを出す』という土俵にきっちり乗っかった上で、ちゃんとふたりにしかできない試合をした上で、ものすごい説得力を以て勝利していた。
わたし、そんな遠藤哲哉選手にシビれてしまい、ひそやかに推し推ししています。
そしてそのすごさを引き出したのは間違いなくディーノさんで、ディーノさんにしかできないお仕事だったので、もう本当にこの試合が大好きなのです。
後日「この試合すごく良かったです!」ってご本人に口頭でお伝えしたけど、考えてみたら負けた試合を「すごく良かった」って失礼な話ですね……
しかし仕方ないんです。
プロレスラーの方々は勝負事の世界の方々だから、やはり勝敗というのが優先順位のかなり高いところにあるだろうというのも納得ですが、勝った推しからしかもらえない心の栄養と、負けた推しからしかもらえない心の栄養は別物で、どちらも必要な栄養素です。
努力や熱意の結果に得た勝利、そして敗北したときの悔しがり方や受け入れ方。
そういうの全部ひっくるめてプロレスは人生の縮図で、見せられるものが生の感情に近ければ近いほど引き込まれてしまうというのは確実にあります。
■新日本 2024/06/10
エル・デスペラード自主興行 DESPE-invitacional
セミファイナル スペシャルシングルマッチ
ザック・セイバーJr. vs 佐藤光留
https://despe-invi.com/
新日本プロレス所属の覆面レスラー、エル・デスペラード選手(わたしの神推し様)の自主興行で、幸運にもチケットを取ることができ現地観戦しました。
プロレスっていろんな団体があって、それぞれにいろんな選手が所属していて、フリーの選手もたくさんいます。
で団体が所属選手メインで興行を打って、フリーの選手や他に所属している選手も参加して試合をすることもある……というのが通常のやり方です。
ちょっと考えてみたんですがお芝居なんかをやる劇団の形に近いかもしれませんね。
DESPE-invitacionalは、エル・デスペラード選手が自分で興行をプロデュースした自主興行という形だったのですが、この興行、ヒントはいくつもあったものの、事前にどんな選手が参加するのか、どんな試合があるのかまったく公開されないまま、秒でチケットが完売しました。
考えられます?
たとえば後藤ひろひとさんや松尾スズキさんが「プロデュース俺、脚本演出俺、出演もまあする、でも他のキャストは当日まで教えない」って興行打って小屋をいっぱいにでき、いやできるな……すみませんちょっと例えが(主にわたしの年齢由来の発想力が原因で)大御所すぎました。
とにかく、大御所・ベテラン枠ではないものの、超大手のプロレス団体でそうとうな人気を誇る選手が、そういうアクロバティックな自主興行を打ったんです。
もちろん(?)わたしの最推し様である男色ディーノ様もメインイベンターとして試合をされました。
『推しの試合はすべてベストバウト』な意識は別にして、わたしの心に刺さったのがセミファイナル(書き忘れていました、最後のひとつ前の試合ってことです)のザック選手と佐藤選手の試合でした。
もうね、立ち上がりは一見ものすごい地味だったんですよ。
セミまではもう、本当にお祭りみたいに大騒ぎ、お客さんも大熱狂&大歓声の試合ばかり続いたんです。
コーナーの上から跳ぶとか、場外に飛ぶとか、流血マッチとか、アクロバティックに投げたり投げられたりとか。
ここにきて一転、セミはまるで柔道の試合みたいに、ストイックに静かに、寝技に寝技をかけてかけられという試合です。
だけどお互いの表情でわかるんですよ。
今ふたりは、ものすごい緊迫感のある試合をしているんだと。
ワーとか返せーとかいけーとか言えない雰囲気だし、そういう、決着に向けて観客のボルテージが上がっていくというような試合運びじゃないんです。
お互い触れるか触れないかのところで牽制しあっていて、まばたきした次の瞬間にはヤバそうな関節技が極まってる。
だからたまに思わず「アッ……!」とか言っちゃう。
ものすごい引き込まれる、見入っちゃう試合でした。
そして、この試合が最高だったと思った理由がもうひとつ。
ザック選手は2024年のプロレス大賞という、まあ権威のある大賞を受賞しました。
大手のプロレス団体に所属していて、ガチボコに強いんです。
そして対する佐藤選手、プロレスラーの中ではそれほど身体が大きいというわけでもなく、どちらかというと、戦績(強さ)についてよりも、イロモノとして、または打つ興業の話題性のほうが先に来てしまうことが多い選手です。
なんかやっぱり、それぞれのバックボーン的にも、「まあザックが勝つやろ……」みたいな雰囲気は、うっすらあったと思うんですよ。最初。
でも、あれれ? ですよ。
ザックがあんな必死な顔してるの初めて見た。
ザックが試合中、あんな痛がってるの初めて見た。
あれ、これもしかして佐藤選手、もしかしちゃうんじゃないの……って、もう試合中、心はめちゃくちゃ佐藤選手応援して手に汗握ってるんです。
そして結局、(すみません書いちゃいます)結果は当初の予想通りの結果になるわけなんですけど。
勝敗が決まったときの、佐藤選手がもう、めちゃくちゃ、もう本当にめちゃくちゃ悔しがってたんです。
本気で勝ちに行ってた。
イロモノって評判のほうが先に立ちやすいひとが、あんな説得力のある試合をして、ガチの戦いをした上で、その結果、本ッ気で悔しがって、その感情を隠すことなくさらけ出していた。
わたしあのときちょっと泣いてたと思う。
こんなすごいものを見せてくれてありがとうという気持ちに、あの日、他のどの試合のあとよりも思いました。
(他の試合もぜんぶすごかったです。ふたを開けてみたら参戦選手は半分以上わたしの推し様たちでした)
DESPE-invitacionalはDVDになった時点で、新日本の動画配信サイトからもなくなったので、DVDを持ってないと観ることができません。
もしも万が一、観たいかも……と思ってくださるお友達がいたら、わたしとプロレス鑑賞会しましょう。
大丈夫だよ。怖くないよ。
そんなわけで、2024年しばた的ベストバウト2本でした。
大晦日と元旦は絶対に仕事しないと決めて年末年始を過ごしましたが、仕事しなかったぶん、仕事じゃない文章を仕事と同じくらいの熱量&文字数書いてしまいました。
仕事始めしてからもコンスタントにプロレス記事書きたいな。