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【きちnote】お堅くない校長先生が生み出す優しい雰囲気が子供たちは大好きだった
長男が通い、次男が通っているフライブルクの郊外にある小さな小学校の話。
みなさんは校長先生にどんなイメージを持っている?
入学式や始業・終業式、卒業式といった学校の催があるごとに最初に壇上に上がり、コホンと咳払いをして、「服装の乱れは心の乱れ」みたいな人生の訓戒みたいなことを恭しく語られる。
ひょっとしたらすごくいいことを言っていたのかもしれないけど、子ども時代はとにかく校長先生の話はよく分からなかった。長いし、とかく小難しい。
早く終わって欲しいなぁと思いながら足で地面に何重もの丸を描き続けたりしてしのいでいた記憶がある。
流石にもう20年近く日本にいないので、今の学校がどんなかんじかはわからない。ひょっとしたらすごく変わっているのかもしれないし、今もしたたかにかつての校長先生スタイルは健在なのかもしれない。
とりあえず僕が言いたいのは30年以上前の思い出話ではなく、ドイツの小学校で感じた校長先生の身近さだ。
長男の入学式の様子を今でも鮮やかに覚えている。
当時暮らしていた住まいはその小学校の学区からすると外れに位置していた。長男が通っていた保育園は隣の小学校の学区内にあったんだ。
だから同じ小学校に通う友達がほとんどいなかった。
長男も、僕ら両親も「すぐにいい友達ができるかな」「どんな先生が担任になるのかな」とドキドキしていたわけだけど、式が始まる感じになったらなんだかとてもふんわりとした優しい雰囲気になった。
校長先生が一年生が集まって座る前に笑顔で立つと、マイクを片手に挨拶を始めたんだ。校長先生は、若い女性の方だった。
堅苦しい挨拶は一切ない。
「みんな小学校楽しみー?」と声をかけると、「じゃあ最初だからみんなにクイズを出すよ。わかったら手を挙げてね!」といってなんだか、カバンを取り出したんだ。
カバンの中からはいろんなぬいぐるみや道具が出てきて、子供たちはワクワクしながらそれを見ては手を挙げて答えようとしている。
そういった遊びをしながら、なんとなく「学校とはこういうことをするところなんだよ」という話をして、それから「じゃあ、2年生のお兄さん・お姉さんに学校の歌を歌ってもらうからみんな聞いてね」といってたので、これで校長先生はお役目ごめんかなと思ってみていたら、今度はギターを片手にマイクの前に座った。
校長先生によるクラシックギターの演奏をバックに2年生の子たちが大きな声で学校の歌を歌う。すごく生き生きとした空気だったし、「学校ってすごく楽しそう!」って1年生のみんなが感じているのを、外から見ていて心底感じたのだ。
校長先生は担任は持たないけど、フランス語の先生として教壇にも立っていた。ドイツの小学校は4年生まで。各学年2クラスで全校生徒130人ほどの小さな小学校。
だからというのもあるかもしれないけど、校長先生は全校生徒みんなと仲良く話をしていた。一人外でぽつんとしている子を見ると、「どうしたのー?」と声をかけてあげる。子どもたちからも人気だから、姿を見つけると駆け寄ってくる子供たちも多い。僕ら保護者が子供の迎えに来ていると、さっと声をかけてもくれる。そのさりげなさが素敵だ。
いつも笑顔で、いつもポジティブで、いつも優しくて、いつも子供たちのことを気にかけて、いつも元気をもらっていた。そんな校長先生のいる学校を長男も次男も大好きで、おかげさまで健やかに育っている。先生との出会いがめぐりあわせなのだとしたら、その縁のありがたさに感謝してもしきれない。
僕がドイツのことを好意的にとらえているのは、こうした人たちとの出会いがたびたびあるからなのは間違いない。
残念ながらその校長先生は現在病気療養中で職場から長く離れているけど、どうかはやくまた元気になってほしい。