【きちnote】いまフライブルガーFCのトップチームで監督をするかつての教え子に、選手時代にどんな考えを持っていたのか聞いてみた
ルカ・モルドルはかつてフライブルガーFCで僕がU16からU18まで監督をしていた時の選手で、その後指導者として素晴らしいキャリアを積んでいる。ドイツサッカー協会公認A級ライセンスまで獲得し、いまや26歳ながら5部リーグに所属するトップチームで監督を務めるまでに。すごい。
そんなルカに17年11月に行ったインタビューからいくつか興味深い発言を拾ってみたいと思う。
中野 最初の監督はどんな人だっ?
ルカ まだ若い学生の人だった。一生懸命だったし、良かったと思う。でも、その次の監督は年配の人で、正直指導者としての能力があまりなかった。U13の監督も悪くはないけど、『うーん』という感じだった。ただ、Cユース(U15)ではいい指導者に巡り合えた。
僕は一年目にU15のファーストチームに選ばれたんだけど、その監督は若い女性で女子U世代の選抜チーム監督をしたり、ちゃんとしたバックグラウンドを持っていた人だったんだ。彼女自身も選手時代にかなり上位のリーグでプレーしていた。
あのときの経験があったから、『もっと上のレベルでやりたい』と思えるようになったんだ。翌年、フライブルガーFCへの移籍を決断した。当時の監督はユルゲン・プリルという人だったけど。
中野 そうか。彼がやっていた年代か。A級ライセンスを持っている。
ルカ そうなんだ。確かに興味深くはあったけど、彼にはU15が合っていなかったと思う。理論が多すぎたんだ。ミーティングで20分以上しゃべり続けることがしょっちゅうあったんだ。14歳の選手がそれを聞いていられるだろうか。みんな2〜3分くらいで、もう聞くことをやめて、話が終わるのをただ待っている状態だったな。
でもいま思うと、毎年のように違う監督のもとでやってきて、それぞれの監督からアイディアをもらって、自分自身のサッカー感を作り上げれたんだと思う。いい面からも悪い面からもね。だから、一人の監督がずっと同じチームを見続けるのは良くないと思うんだ。子どもたちには、様々なサッカー観の中でプレーできる環境が必要だ。
中野 出会った数多くの指導者の中には、僕も含まれているわけだけど(苦笑)、君にとってはどんな指導者だったんだろうか?
ルカ ハハハ(笑)。そうだね。まず難しかったのは、あの頃の僕は選手としてモチベーションが保ちにくくなっていたんだ。それまでのように全力でがむしゃらに、という時期は過ぎていてしまったと思う。
でも、キチからはサッカーの専門的な理論がバックにあるといつも感じていたよ。ほとんどすべての練習から『なぜそうした状況が起こるのか』『なぜこうしたプレーが必要なのか』という意図が感じられた。意味のある練習だったんだ。それって大事なことだろ?
キチがフライブルガーFCを去ったのは、本当にすごく残念だったんだ。もっといい形を見つけることができたと思う。ベストの例はそうだな、U19のときにいった合宿だね(僕はU19コーチとして帯同していた)。
キチがほとんどのトレーニングを指導していたけど、U19監督だったディノには『ダメなことをダメ』と言える強さがあった。二人はもっといいコンビになれたと思うんだ。キチには、アイディアがあった。ディノにはそれを伝えきる強さがあった。いいミックスになったし、いいトレーニングだったよ。選手はみんなキチのアイディアに耳を傾けていたからね。
ルカは当時フライブルガーFCのU15監督として2部リーグ昇格へと導いた。挑戦は健闘むなしくも残留まであと勝ち点3が足らずに一年で降格となったが、その戦いは彼にとっても、子どもたちにとっても大きな財産となったことだろう。
中野 オーバーリーガで監督ができる、という経験は誰にでもできるものではない。実際にやってみてフェアバンツリーガ(3部)とオーバーリーガの一番の違いはどこにあった?
ルカ うーん。年齢にもよるね。U15での違いと、U19での違いはまた別だから。でも、大きな違いはフィジカル的なクオリティかな。オーバーリーガにはみんなフィジカル的に非常に先を行っていた。プレークオリティ自体はそこまで大きな違いはなかったかもしれない。あとは、全体的によりプロフェッショナルな雰囲気があった。
オーバーリーガの指導者には、審判や相手を罵倒するような人はほとんどいなかったよ。みんな自分の選手をどのように成長させるかに集中して仕事をしているように見えたな。とてもやりやすい環境だった。
あと他の地区や州の選手はより成熟している。『サッカーを知っている』というのかな。ある試合だけど、完全に自分たちの方がボールを支配していたし、試合の流れをつかんでいたと思っていたんだ。でも、ゴールチャンスをあまり作れないまま、相手が2-0で勝利したよ。守ることにも慣れているし、集中力を保つことができる。競り合いもよりハードだし、駆け引きの部分もより柔軟だ。単純のことかもしれないけど、そうしたところでの選手のクオリティが高かったと感じたよ。
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