みんなが「そういうものだ」って思ってしまう世の中のしくみ
こんにちは!今日は少し難しいけれど、とても大切なお話をしたいと思います。「どうして世の中には、お金持ちの人とそうでない人がいるんだろう?」「どうして、生まれた環境によって、将来が決まってしまうことがあるんだろう?」そんな疑問について考えてみましょう。
「そういうものだ」と思ってしまうわけ
ある日の放課後、ユウタくんは友だちのアキラくんと公園で話していました。
「ねえ、アキラくん。どうして大人になったら、みんな違う仕事をするのかな?」
「そりゃあ、得意なことが違うからじゃない?」
「でも、僕のおじさんは『自分は大学に行きたかったけど、お金がなくて諦めた』って言ってたよ。今は工場で働いているけど、本当は科学者になりたかったんだって」
「ふーん、でもそれって仕方ないんじゃない?世の中そういうものでしょ」
この「世の中そういうもの」という考え方が、実は今日のテーマなんです。心理学では、これを「システム正当化」と呼びます。難しい言葉だけど、簡単に言うと「今の世の中のしくみは、たとえ不公平に見えても、それなりの理由があるはずだから、受け入れよう」という気持ちのことです。
どうして「そういうもの」と思ってしまうの?
人間の心には、不思議なはたらきがあります。自分の置かれた状況が良くないときでも、「これが普通だ」と思って、がまんしてしまうことがあるんです。
例えば、こんな場面を想像してみてください:
タロウくんの家は、お金があまりありません。新しいゲームや服が欲しくても、なかなか買ってもらえません。最初はとても悲しく思っていましたが、だんだん「うちはお金がないから仕方ない。贅沢は言わないようにしよう」と考えるようになりました。
これは、タロウくんが自分の気持ちを楽にするために、現状を受け入れようとしているんです。実は、私たち人間は誰でも、つらい現実よりも「これでいいんだ」と思える方が、心が落ち着くようにできています。
3つの理由:どうして「このままでいい」と思うの?
1. 小さい頃から聞かされること
「うちの家はこれが精一杯だから」「みんながお金持ちになれるわけじゃないよ」といった言葉を何度も聞いていると、自然とそれを「当たり前」だと思うようになります。学校でも「努力すれば報われる」と教わりますが、実際にはそうならないこともあります。でも、何度も聞かされると「そういうものなんだ」と思ってしまいます。
2. 心のバランスをとるため
「なんで自分だけこんな思いをするんだろう」と考え続けると、とてもつらくなります。そこで心は、「これが運命なんだ」「みんな何かしら大変なことがあるんだ」と考えて、自分を守ろうとします。これは悪いことではなく、心の健康を保つための自然な反応です。
3. 周りの人と比べること
「隣の家の子はもっと大変そうだな」「テレビで見た外国の子どもたちよりは恵まれているな」と比べることで、自分の状況を受け入れやすくなります。これも心のバランスを保つための方法です。
実際の生活ではどうなっている?
学校での経験
ハナちゃんは、勉強が少し苦手です。テストの点数があまり良くないと、先生から「もっと努力しなさい」と言われます。でも、ハナちゃんの家には勉強を教えてくれる人がいないし、塾にも行けません。だんだん「自分は頭が悪いんだ」と思うようになり、「将来は難しい仕事はできないかも」と諦めてしまいます。
これは、本当は環境の問題なのに、自分の能力の問題だと思ってしまう例です。実は、勉強ができるかどうかは、家の環境や支援によって大きく変わることがあります。
働く大人の世界
タケシさんは、アルバイトを3つ掛け持ちしています。正社員になりたいけれど、なかなか採用されません。「自分には能力がないから仕方ない」と思っていますが、実は社会のしくみが変わって、正社員になるのが昔より難しくなっているだけかもしれません。
テレビやインターネットの影響
テレビでは、お金持ちになった人の「努力ストーリー」がよく紹介されます。「あの人は寝る時間を削って勉強したから成功した」というお話を見ると、「自分が成功できないのは努力が足りないからだ」と思ってしまいます。でも、実際には見えない特別な環境(親からの支援や人脈など)があったかもしれないのに、そういった部分はあまり伝えられません。
心の中で起きていること
「これで大丈夫」と自分に言い聞かせる
ミキちゃんは、新しい習い事をしたいけれど、家計が苦しくて諦めました。最初は悲しかったけれど、「習い事なんてなくても、学校の勉強をがんばれば十分だよね」と自分に言い聞かせるようになりました。これは、現実を受け入れて心を守る方法です。
自分の価値を見つけ直す
シンジくんは、高価なスニーカーを買えません。でも「物よりも友情が大事だ」「お金で買えない価値もある」と考えるようになりました。これも、心のバランスを保つための大切な方法です。
仲間と一緒にいる安心感
同じような環境の友だちと過ごすと、「自分だけじゃない」という安心感があります。「うちもお小遣いは少ないよ」「みんな同じだよね」と共感し合うことで、現状を受け入れやすくなります。
実際の研究でわかったこと
研究者たちは、子どもから大人まで様々な人に調査をして、「システム正当化」の傾向を調べました。すると、お金がない環境で育った人ほど「今の社会のしくみは仕方ない」と思う傾向があることがわかりました。また、長い間同じ環境にいると、その状況が「当たり前」に感じられるようになり、変化を求めにくくなることもわかっています。
どうしたら変えられる?これからの社会へのヒント
では、こういった「そういうものだ」という考えから抜け出すには、どうしたらいいのでしょうか?
1. みんなが良い教育を受けられるように
どんな家庭の子どもでも、質の高い教育を受けられる社会が大切です。例えば、お金がなくても塾に行けるような無料の学習支援や、誰でも使えるパソコンがある図書館があれば、チャンスは広がります。
2. 働き方を変える
大人になったとき、正社員になれる人と、いくつもアルバイトをしなければならない人の差が小さくなるように、働き方のルールを変えていくことも大切です。また、新しい技術や知識を学べる機会があれば、大人になってからでも新しい仕事にチャレンジできます。
3. 情報の伝え方を工夫する
テレビやインターネットでは、様々な立場の人の声を伝えることが大切です。「努力すれば必ず成功する」という単純なメッセージだけでなく、社会のしくみによって難しいこともあるという現実も伝えれば、「自分だけがダメなんだ」と思い込む人が減るでしょう。
4. みんなで考え、話し合う場をつくる
地域の集まりや学校で、「どうしたら誰もが幸せに暮らせるか」を話し合う機会があると良いですね。自分と違う環境の人の話を聞くことで、「当たり前」だと思っていたことが実は変えられるかもしれないと気づくきっかけになります。
いろいろな意見と、これからの展望
この「システム正当化」という考え方にも、いろいろな意見があります。「人間が現状を受け入れるのは自然なことだ」という意見がある一方で、「社会のしくみそのものを変えなければ、個人の考え方だけでは解決しない」という意見もあります。
また、実際には「これはおかしい!」と声を上げて、社会を変えようとする人たちもたくさんいます。歴史を振り返ると、「そういうものだ」と思われていた不公平なルールが、みんなの力で変わってきた例がたくさんあります。
これからの研究では、「どうしたら人々が『そういうものだ』という考えから抜け出せるか」という方法をもっと探っていくことが大切です。また、実際に社会のしくみを変えた後、人々の考え方や生活がどう変わるかを調べることも必要でしょう。
まとめ:あなたにできること
ここまで読んでくれたあなたは、すでに大切なことに気づいているかもしれません。それは「当たり前だと思っていることを、時々疑問に思ってみること」の大切さです。
例えば、友だちが「うちは貧乏だから、将来の夢なんて持てない」と言ったとき。「そうだよね、仕方ないよね」と同意するのではなく、「どうしてそう思うの?」「本当にそうかな?」と一緒に考えてみることが大切です。
また、自分自身も「これは無理」と思う前に、「本当にそうかな?」と立ち止まって考えてみましょう。もしかしたら、それは「そういうものだ」と教えられてきただけかもしれません。
世の中は完璧ではありません。不公平なこともたくさんあります。でも、「そういうものだ」と諦めるのではなく、「どうしたらもっと良くなるだろう?」と考え続けることが、少しずつ世の中を変えていく第一歩になるのです。
あなたの「どうして?」という疑問が、未来を変えるかもしれません。だから、疑問を持ち続けてください。そして、友だちと一緒に「もっと良い世の中」について話し合ってみてください。それが、みんなが幸せに暮らせる社会への第一歩です。
今日のふりかえり
今日は「システム正当化」という、ちょっと難しい考え方について学びました。簡単にまとめると:
人間は「今の世の中のしくみは、たとえ不公平でも仕方ない」と思いがちである
それは自分の心を守るための自然な反応である
でも、そう思い込むことで、変化を求めなくなってしまうこともある
「そういうものだ」と思わずに、「どうしてだろう?」と考え続けることが大切
難しい話だったかもしれませんが、ここまで読んでくれてありがとう。「どうして?」と考え続けるあなたの力が、きっと未来を変えていくと思います。一緒に、みんなが幸せになれる社会について考えていきましょう!
明日やってみよう!
最後に、明日からできる小さなチャレンジを紹介します:
「当たり前」だと思っていることに「どうして?」と疑問を持ってみる
友だちと「もしも〇〇だったら、世の中はどう変わるかな?」というゲームをしてみる
自分と違う環境で育った人の話を、本やインターネットで探して読んでみる
「これは無理」と思ったとき、「本当に無理なのか、それとも『無理だ』と思い込んでいるだけなのか」を考えてみる
あなたの「どうして?」が、きっと世界を少しずつ変えていきます。応援しています!
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