誇りを持つ
「風の男白洲次郎」青柳恵介著(新潮社)を読み始めて
母方の祖父のことを思い出していた。
元は教師だったが、戦後は首長となって地域の復興に努めた人だ。
ハンサムで教師時代は女学生にモテモテだったらしい。
祖母とは駆け落ち同然の恋愛結婚だったというし、
戦時中は国のやり方に反対してよく喧嘩をし
生徒を守る言動を貫いていたそうだ。
市政においては空港建設の反対派とも相当やりあったと聞く。
ヨガを体得していて体は柔らかで
その逝去は、まるで花びらが落ちるように安らかで自然だったらしい。
前日までごく普通に生活していたというのだから
寿命を全うした健康的な最期だと思う。
市葬に招かれて、祖父の大きな写真が飾られた会場に
親族として両親や兄弟たちと入場した時の感覚は
今でも忘れられない。
こういう気持ちが「誇りを持つ」というんだなと。
私の名前は祖父がつけてくれたものであり
その名をつけてくれたことにとても感謝している。
「風の男 白洲次郎」は
次郎を敬愛する多くの人たちによって生まれ
書き手も白洲正子さんが指名した青柳恵介氏が担い
その魅力と生きた証が詰まった愛情いっぱいの本だ。
私の知らない各界の要人の名前が登場し、細かな内外の情勢など
次郎の生きた時代が鮮やかに蘇る。
堤清二が語る次郎は
「私利私欲を持って付き合おうとする人間を白洲ほど敏感に見抜き、それに対し厳しい反応を示した人を他に知らない。そして、そういう人間は白洲を怖いと思うだろう。白洲が晩年に至るまで、仲良く付き合っていた人に共通した性格があった。私心のない人、大所、高所に立って、自分の考えや行動すらも客観的に捉えられる人、本当の愛情のある人。白洲次郎は真の国際人であったが、「国際化」が叫ばれる今日、むしろ国際化の逆コースをたどっている。経済界で本当の「国際人」が何人いるか・・・」
この本は多くの若い人に読んでもらいたいと心から思った。
そして勇気を持って自分自身を生き切ってほしいと思う。