No.025 竹澤仁美(生活介護事業所/支援員)
【逆境に立ち向かっていく】
1.どうして福祉の仕事を選びましたか
(法政現福に入学したきっかけは何ですか)
親戚のお姉さんが、高齢者介護の仕事をしていた。
当時、高校生で将来の仕事を考える時期に差し掛かったとき、そのお姉さんの存在があり、介護や福祉の仕事を身近に感じることができた。
自分の性格的にも、福祉の仕事があっていると思った。
大学で学んだことを仕事に生かしたいと思い、福祉学部に進学することにした。
法政大学以外にも、立教大学や福祉系専門大学などいろいろ受験したが、オープンキャンパスなどを経て、法政大学現代福祉学部への入学を決めた。
就職活動も、ほぼ福祉一本だった。
◎施設感がなく、地域になじんでいる
◎障害のある人にも、しっかり給料(工賃)を支払う
このあたりにしっくりきて、いまの社会福祉法人への就職を決めた。
まだまだ障害者に厳しい世の中だけど、逆境に負けないよう、立ち向かっていきたい。
そんな思いで仕事を始めた。
【その人に合わせて作業を工夫する】
2.今のお仕事について教えてください
杉並区にある、知的障害の人の通所施設(生活介護事業所)の支援員をしている。
私はだいたい11人ほどのグループを担当している。
生活介護なので、比較的障害が重度の人が多いが、
法人の理念でもある、どんなに障害が重くても、仕事を提供して、給料(工賃)を支払うということを大事にしている。
そのためには、いろいろな工夫が必要だ。
例えば、渋谷区の会社からの受注社業で、ドリップコーヒーの計量や梱包の仕事がある。
コーヒーの粉を正確に計量し、こぼれないようにフィルターに入れるといった、なかなか神経を使う大変に思える仕事だが、この工程を細かく「作業分解」するという工夫を行っている。
そうすると、「ものを取る」とか「運ぶ」といった、取り組みやすい作業が見えてくるため、メンバーさん(利用者さん)に合った作業を担ってもらう、ということができる。
行なっている工夫はそれだけではない。
メンバーさんに使いやすい道具を作る、分かりやすい作業工程を組み立てる、理解してもらえるまでその人に合った方法で仕事を伝えるなど、工夫を挙げればきりがない。
もちろん、メンバーさんに仕事として理解してもらうためには時間がかかるが、日々変化がみられることに、嬉しさを感じる。
メンバーさんたちは、作業があると集中して取り組むが、作業がなくなると落ち着かなくなってしまう方もいる。仕事中と休憩のメリハリを大事に関わることを心掛けている。
ただ、私のモットーとして、作業も大事だけど、それ以上に生活介護であり、落ち着いて健やかに過ごしてもらえるよう、支援を丁寧に行うことを大切にしている。
【その人なりのコミュニケーションで関わる】
3.大学での学びが仕事で生きていると感じるのはどんなときですか
社会福祉実習で知的障害の人の入所施設にお邪魔して、当事者の人たちと関わったことは大きかった。
重度の知的障害があり、言語的なコミュニケーションが難しい人たちと、「その人なりのコミュニケーション」で、繋がれたと感じられたときが嬉しかった。
例えば実習先では、利用者さんが落ち着かない時、身体に触れてマッサージをしたり、絵に描いてもらったり、「スヌーズレン」を活用したりしていた。
実習での経験を通して、言語がない人たちに、言葉以外の「その人なりのコミュニケーション」で向き合うことの大切さや姿勢は、今の仕事にいきていると思う。
もう一つ、大学の講義で「家族福祉論」は、必修科目ではなかったが、とても勉強になった。
講義では、実際のエピソードを多く紹介してもらえた。
誰しもみんな、いろんな問題を抱えていて、それが家族内で複雑に絡み合っていることがよくわかった。
本人だけでなく、家族全体の問題に気づこうとする視点は、今の仕事でも大切にしている。
少しでも家族の心理的な負担を減らせるような家族支援を心掛けている。
また、学生時代は重症心身障害者のグループホームでアルバイトをしていた。
卒業論文はバイト先の職員さんたちにインタビューなどで協力してもらいながら、『重症心身障害者がライフコースを自己決定するためには』といったテーマで執筆した。
実際に現場に出ると、当時卒論で書いたような理想は、なかなか通用しないことを知った。
学生の時考えていたことと実際の現場とのギャップから学ぶことは、やはり大きい。
【地域の人のためになることに取り組む】
4.いま興味を持っていることやテーマはなんですか
いまの仕事を選んだ時、ローカル(地域に馴染んでいる)や、利益よりも地域の人との関わり、といったことに重きを置いたが、そこはこれからも変わらない。
実は、今年の春から栃木県鹿沼市に引っ越すことにしている。
現在の東京から一転、自然豊かな土地で生活することになる。
初めは、仕事ではないが、農業や食に関わること、何より地域の人との関わり、地元の人のためになることができればと思っている。
どんなかたちになるかは分からないが、ゆくゆくはそれが仕事になっていけばいいと考えている。
【人間性を高めていく】
5.今後の目標を教えてください
引っ越しをするため、いまの仕事は退職することになる。
対人援助は大変なことも多く、たくさん悩んだが、ちょうど昨日、利用者さんのご家族から「あべさん(旧姓)の支援良かったよ」とたくさん声をかけてもらえたことは、やはりうれしかった。
これからも、人に関わることを続けていきたい。
また、福祉だけじゃなく、いろいろな経験を積んで、人間性を高めたい。
福祉以外の、ITなどの社会人スキルも勉強していきたいと考えている。
そして、自分を信じて、物事を自分で判断できるように、楽しみながら成長していきたい。