麻雀していた友達

 ジャラジャラジャラジャラ。麻雀牌を混ぜる音が部屋中響いている。煙草の吸殻が灰皿の中でいっぱいになっていて、煙が充満している。
 ケンジとツナヨシとカズと私で、麻雀をしていた。
 ツナヨシが缶コーヒーの缶に吸った煙草を押しつぶすように入れた。
 くわえたばこで、「ポン」とケンジが叫んだ。その後、隣に座っていたツナヨシがリーチ一発とつぶやいた。
 「やられたー。」ケンジがリーチ棒を横で投げるように混ぜた。
 部屋に掛けられている時計を見ると、深夜3時だった。
 カズが何かを思い出したように、「ちょっと、明日仕事が早いので、今日は帰らせてもらう。」と華奢な体を起こして、ムクッと立ち上がった。
 「そっか。」と言って、今日の麻雀は、ここまでと言うことになり、私が車で送って行くと言った。
 駐車場まで、歩いていると、生暖かな風と共に大雨が降り始めてきた。
 カズを後部座席に乗せて、家まで送る。
 真暗な道路を走りながら、バックミラーで自分の顔を見る。目の下のクマがここ2、3日寝ていない事が物語っていた。
 「カズ、眠いなぁ。」と後部座席に話しかける。大雨と雷の音で声がかき消された。
 「明日、仕事ならきついな。この雨で大変だろう。雨なら休みじゃないのか?」カズは、土木工事の下請けのような仕事をしていた。
 独り言のように話しをしながらカズの家の前へとつく。
 「おい。ついたぞ。」外は、土砂降りで、車の中に雨が入ってきそうだった。
 「寝てるのか。」と後ろを振り返ると、誰もいない。後部座席が雨でじゅっくりと濡れていた。
 まったく。もう降りて、家の中に入ったのだろうと思い、その日は、家へと帰った。
 
 次の日、どうも昨日の事が気になり、カズの家へと尋ねに行く。
 家の前には、大きな菊の花輪が出してあり、門前提灯が飾られてある。
 「まさか。」と思って、急いで、家の中に入ると、カズの遺影があり、母親が泣いている。
 昨日、カズと夜中まで麻雀をした話しを、母親にすると、麻雀をする前日に自殺したと言った。
 「麻雀が好きで、どうしても、友達と最後に麻雀をやりに行きたかったのでしょうね。」と母親がすすり泣いた。
 昨日のカズの姿が幽霊で何か俺たちに相談したかったのだろうかと後で考えても答えなど出るはずもなかった。
 「自殺するなんて、バカヤローな奴だ。」と泣きながら、遺影に向かって、叫んだ。

#2000字のホラー

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