パーパスモデルユーザーインタビューシリーズ#01 UDCK 八崎篤さん・東京大学 笹尾知世さん
こんにちは👋 きびです。この度、書籍刊行に合わせて、パーパスモデルが実践者にどう使われているのか、リアルな声をお届けする企画を開始しました!その名も「パーパスモデルユーザーインタビュー」シリーズ🎉!!
「パーパスモデルユーザーインタビュー」はパーパスモデルを実際にプロジェクトや事業で使用してくれている様々な立場の方にお話を伺い、誰に対して、どんな目的でどう使ったのか、実際にどんな効果があったのかなどをユーザー目線で話していただくシリーズです。
記念すべき第1回は、「複数の関係者と進めるプロジェクトのキックオフ」の事例をご紹介いたします。
柏の葉で柏の葉で公・民・学様々な関係者とリビングラボプロジェクトを行っている、UDCK(柏の葉アーバンデザインセンター)の八崎さんと東京大学の笹尾さんにインタビューにお答えいただきました。
インタビューに答えてくれた方
八崎 篤氏
柏の葉アーバンデザインセンター UDCK ディレクター
笹尾知世氏
東京大学 ハビタット・イノベーション研究社会連携講座 特任助教
パーパスモデルを誰に対して活用しましたか?👀
柏の葉のリビングラボ「みんなのまちづくりスタジオ」の新規プロジェクトキックオフ時に、現状のステークホルダーを集めてプロジェクトに対する意識合わせに活用しました。
※「みんなのまちづくりスタジオ(以下、みんスタ)」は柏の葉スマートシティをまちのユーザーである「生活者」が中心となり、行政・企業・学術機関とともに推進していく共創プログラムです。
パーパスモデルをなんのために使いましたか?
八崎:共創の場を一緒につくっていく企業や行政、大学などがその場にどういう目的、役割で関わっているのが明確でない場合に、プロジェクトの途中でゴールがぶれたり、共通の目的が曖昧になってしまったりすることに悩んでいました。加えて他者に何を求めているのか、逆に自分達が何を求められているのかが曖昧なままだと、プロジェクトの設計の質やスピードに悪影響を及ぼすと考えていました。その課題を解決するため、プロジェクト開始後の出来るだけ早い段階で認識を合わせるためにパーパスモデルを使いました。
笹尾:みんスタは、プロジェクトの企画を様々な組織の人が集まって進めていくのですが、プロジェクトが進むにつれて、それぞれの組織の思惑が急に顕在化したり、変わったりして、全体で目指す方向性を変えざるを得ないことも過去にあったりしました。そのため、初めの段階で、各ステークホルダーが一緒に共通の目的を作り、明文化しておくことはとても重要な作業と考えています。今回は、プロジェクトのスタートの段階で、お互いがお互いにどんな役割を期待をしているかを、オープンに知り合うためのアイスブレイク的な活用を行いました。
どのように活用しましたか?
1.自己紹介
まず、プロジェクトのテーマを持ってきた企業の方々、みんスタ事務局メンバー(UDCK, UDCKTM(タウンマネジメント), 日立東大ラボ)、行政の関係部署の方々で集まり、各ステークホルダーがそれぞれ「どういう組織で」「どういう仕事を」「どういう思いで」やっているかを自己紹介してもらいました。
2.フィールドワーク
今回はプロジェクトのキックオフのため、実際のリビングラボのフィールドである柏の葉の街を、今回のテーマに関係する場所を中心に、一緒に歩きました。
3.インプットトーク(パーパスモデルについてとワーク説明)
その後、吉備さんに共創の場の事例をパーパスモデルを用いながらレクチャーしてもらい、ワークショップを行いました。
4.個人ワーク(プロジェクトのパーパスモデルを1人1つ作成する)
今回は「パーパスモデルワークシート」を活用し、プロジェクトオーナーが掲げる暫定の共通目的をもとに、一人一人が独自の視点でパーパスモデルを作成しました。各ステークホルダーにはまず「自分たちがどういう役割で、どういう目的のために関わるか」を中心に考えてもらい、その後他者の関わり方を希望・要望を含めて考えてワークシートに記入しました。
5.全体で共有(自分の部分を発表、他者からの期待や要望を聞く)
最後の共有の時間では、ワークシートを元に各ステークホルダーごとに自分たちの関わり方を発表しました。他の人が、それに対して「もっとこんなこともしてほしい」「あなたたちはこんなこともできるのではないか」と期待や要望を伝えていく方法を取りました。
一人一人が自分の思う役割や相手の役割を考えて記述するので、最後に共有すると、自分が他のステークホルダーにとってどんな期待をされているかを教えてもらえたり、相手に自分が期待することを伝える効果がありました。
パーパスモデルはあなたの活動にどのように役立ちましたか?
八崎:キックオフ時の意識共有に役立ちました。モデルを使うことによって思考があちこちに散らばることが少なく、第一段階としては非常に効果がありました。また、今回はあまり期待していなかった「その場にいないステークホルダーのこと」もしっかりと記入した人も多く、今後のプロジェクトの広がりを想像できることで参加者さんの期待感を感じることができました。
笹尾:それぞれの組織は、プロジェクトに対して独自の狙いや目的があるのは当然で、それらを活かせるプログラムにできたら理想的ですが、初めの段階で、お互いを深く理解し合うのは本当に難しい。
今回、自己紹介をもとに一人ひとり思い思いのパーパスモデルを描いてみて付き合わせてみたことで、周りの人たちが自分の組織に期待していることを知れたり、相手にどんな役割を期待しているかをオープンに雰囲気よく伝え合うことができました。各組織がこれからの一歩を描きやすくなった気がします。
パーパスモデルを使ってみるといいタイミングやどんな人におすすめか教えてください。
八崎:
・ステークホルダーが多いであろう新しいまちづくり団体の発足時、5年ごとの経過をなどをパーパスモデルでモニターする。
・コミュニティスクール
・自治会
・実行委員会形式で開催するまちのイベント
笹尾:プロジェクト立ち上げ期に、複数のステークホルダーが共通目的を探っている段階で使うと良いのではないかと思います。また、道に迷ったときに改めてみんなで描いてみるなど。
パーパスモデルについて、今回の使い方以外に、他にどんな使い方ができそうですか?
八崎:今回はステークホルダーが皆ポジティブだったので、逆に一歩引いている人たちが多い場で使ってみたい。その場合は何か他の手法と組み合わせてみたい。レゴシリアスプレイの問いに「目的」「役割」をうまく入れて、手と脳を使って楽しくモデルをつくり、その内容をテキストにしてパーパスモデルに流し込むと、レゴの3Dモデルとパーパスモデルのビジュアルで成果物を出せるのでとても良さそうです。
笹尾:アイデアソンやデザインスプリントなどで、ステークホルダーの洗い出しをする際に活用すると、単にステークホルダーを横並びで書き出すだけでなく、どんな時系列で誰が誰を深く巻き込んでいくかという戦略を考えやすくなると思いました。
実際につくったパーパスモデル
このプロジェクトが公開になったらこちらに追記予定です!
お楽しみに🙋♀️
共創プロジェクトに取り組む方に向けて一言!
八崎:「どんな成果が出るかわからない」ということを不安に思うのでなく、期待しワクワクできる方と一緒に共創プロジェクトを進めていけたらと思います。みんなで新しい手法をどんどん試して、たくさん失敗して前に進んでいきましょう。
笹尾:集まった人たちの個性ある力を活かすには、お互いに「できること」と「したいこと」を理解し合うことが重要なのではないかと思います。今回パーパスモデルを体験してみてお互いを理解し合い、その先の動き方まで想起させる効果を実感しました。ぜひみなさんもチームメンバーが集まった初日にパーパスモデルを使ってみてほしいです!
あとがき
八崎さん、笹尾さん、ありがとうございました!
今回はわたしも一緒にワークを運営させていただいたので、その日の様子を知っているのですが、その場で自治体の方が企業の方への期待を伝える際、「発信力のある企業さんと一緒に自治体の活動を発信していきたいのですが・・・」とお話しされたところ、「もちろんです。ぜひやりましょう!」と言われ、「いいんですか!!」という光景が見られたのがとても印象的でした。
自分たちの目的と、相手の役割への期待を伝える機会って意外とないなと思うと同時に、言ってみたら意外とすんなり受け入れられたりもして、一緒にやるからこそできることが見えてくるのだなと思いました。まさにパーパスモデルがコミュニケーションツールとして力を発揮した瞬間で、私もとても嬉しかったです。
関係者が多いプロジェクトのキックオフや目線合わせの際に、同様のお悩みを抱えている方のお役に立てれば幸いです。