これからの活動
「“楽しそうだな”と思われるような形を、先に動いて作らなければいけませんね」
小祝:すでに具体的な動きはいくつかありますが、丈さん、なにがKIBITAKIプロジェクトとして最初の事業になっていきそうですか。
高崎:まずは双葉町から発信するクラフトジンについて、醸造のことを研究されている山口歩夢さんに監修をお願いして、それらの販売を考えています。また、すでに現地で活動していただいている、オーバーオールズのみなさんとの壁画アートプロジェクトも進行中です。さらに町役場やUR都市機構及び、一般社団法人ふたばプロジェクトによってリノベーション予定の洋館(町の文化遺産)を町の再出発拠点として活用予定です。
島野:僕らのもっているノウハウを教えることをKIBITAKI自身で企画できたらいいですね。オンラインカレッジを開講するとか。
高崎:スタートアップができる場の提供もできたらいいなと思っています。双葉町よりも5年ほど早く避難解除された南相馬市では、すでにスタートアップしている若い方がいて、もう10社ほど起業しています。南相馬だってもともと震災前からそういった方たちがいたわけではなかったんです。双葉町もいずれ周りに負けないぐらい、スタートアップする方や若い方たちに、起業する価値があると思ってもらえるような町にしたい。若者の力ってすごいじゃないですか。そういう子たちを巻きこむことができれば、また新しい世界観が生まれるような気がします。
小祝:それには「楽しそうだな」と思われるような形を、先に動いて作らなければいけませんね。
高崎:はい。これからの双葉町は面白くなるということが、みんなにわかるような。
小祝:活気のある町って、行くとわかりますよね。この町は面白そうとか、勢いのある人がいるとか、来たらすぐになにかを始められそうな、期待したくなるような空気を感じる。このプロジェクトは僕らがリードしていくことになります。フォロワーが来たときの水先案内人になる必要があります。続く人たちがスタートアップできるような、そこに来たくなるような道筋を作ることが重要なのではないでしょうか。僕らだけではまだ一つの矢印ですが。
島野:KIBITAKIプロジェクトの面白さは、さまざまな人、たとえばこの対談を記録している撮影や音声などの制作に関わってくれている方たちにも、どう感じているかを聞き、プロジェクトに取り入れていることだと自分では思っています。ただ「感じる」ことでいい、「考え」ではなくてもいい。今は具体性を帯びていなくても、プロジェクトに関わってくれる、あらゆる人たちの言葉や感覚を取り入れることで、新しいなにかが形づくられていきます。それが具現化したときには面白いものになるという確信があるんです。わからなくても、どう思うか、どう感じたかを聞いて、その人の考えに結びつくようたどっていくと、自ずと考えが出てくるので、そこで僕らのエッセンスとうまく合わせながらプロジェクトにしていく。たぶん丈さんも小祝さんも、そういった「巻きこむ」ようなことが得意な方たちだと思うのですが、それこそこのプロジェクトの面白さではないかと感じています。だからとにかくいろんな人間を、面白いなと思った人たちを巻きこんでいきたい。自分のなかでも、とてもチャレンジングです。
高崎:あとは地元の方ともうまく連携したいですね。いまのままでは、ただ僕らが盛りあがって動いてしまっている感じなので。
島野:そうですね。当事者である地元の方たちからの意見をお聞きしないと。どんな人をどのように巻きこむかということを考えなければいけません。人と人をつむいでいく作業が重要です。僕らの特性を活かしながら、いろんな人たちの考えを引き出し、つむぎ、さらには編み上げることだと思います。それがプロジェクトを具体的に方向づけ、形となっていくのではないでしょうか。
小祝:KIBITAKIプロジェクトには、もっといろんな方に加わっていただきたいですね。
島野:今度は僕らだけではなく、ゲストをお呼びして対談したいと考えています。双葉町に対してこういう取り組み方をしてみたいと考えておられる方や、食に関わるような方にお越しいただいて、その方が思う町の再出発のことを、対談を重ねることで取り入れながら、形づくっていきたいと思います。さらに実際に双葉町へ行って、そこでゲストと語らってもいいかもしれないですね。
次回は東京の浅草にてヴィーガンコンビニ&ファミレス「VEGAN STORE(ヴィーガンストア)」を展開されている鈴木翔子さんをお迎えする予定です。食に対する徹底した美学をもつゲストとの対談をお届けいたします。
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