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食を通じて考える

第1回、高崎丈とともに双葉町を考えるのは、小祝誉士夫と島野賢哉。“丈さんの熱燗で乾杯したこと”から、このプロジェクトを立ち上げることになりました。今回はKIBITAKIプロジェクト発起人3名の対談です。

プロフィール
  高崎丈 たかさき じょう(写真中央)

元JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき オーナー(新規店舗開店準備中)

日本酒のお燗を広める活動を展開中

株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立

  小祝誉士夫 こいわい よしお(写真向かって左)

株式会社TNC 代表取締役/プロデューサー

海外70ヵ国で展開するライフスタイル・リサーチャーを運営し、
国内外での事業クリエイティブ開発をおこなう

  島野賢哉 しまの けんや(写真向かって右)

株式会社サムライジンガ 代表取締役/プロデューサー

ブラジル、台湾における芸術文化を中心としたプロジェクトに携わる

クリエイティブサウンドスペース 'ZIRIGUIDUM'(ジリギドゥン)創設者


双葉町出身、新しいスタイルの料理人


島野:今回の小祝さんと僕の参加にしても、いろんな人がいろんな方法で集まってくるから、すごい形になるかもって思いますよね。

小祝:たまたま島野さんとお酒をのみにいっただけなんだけど(笑)

高崎:そうなんですよ。いろんな方が集まってくれて。私自身は飲食畑の人間なんで、この思いつきに何からどう手をつけていいかわからないところがあったんですけど…来てくれる方たちがすごい方が多くて。どうなっていくのか想像できないレベルで広がってて、そこが面白いと思ってますね。

小祝:化学反応的なところがね。絶対面白いなと思いますよね。たぶん丈さんが普通の飲食店の店主というか、シェフとは違う形で活動してるからだと思いますよ。

高崎:ほんとは僕のイメージだと正直あと5年ぐらいはかかると思ってたんです。熱燗を評価されて、いろんなコネクションを作って、それが双葉町の何かにつながればいいな、ぐらいの。だからもっと熱燗を広めたくて、小祝さんにお願いして海外に連れていってもらったりしたんですけど。

小祝:僕と丈さんの最初の出会いは、友達に連れられて店に食事に行ったのがきっかけで。そのときちょうど海外に行く予定があって。「来週から海外行くけど、一緒に来る?」って言ったら、丈さんほんとに来たんですよ。ジャカルタにいきなりですよ。それで、お酒の飲めないイスラムの国に日本酒持って行きました(笑)インドネシアが酒の飲めない国とか、たぶんあのときの丈さん知らない。で、もちろんイスラム教徒じゃない中華系の人なんですけど、現地の人に日本酒飲んでもらって「なんだこれ…濡れた靴下の匂いがする」とか言われて(笑)

高崎:日本酒が悪いわけじゃなくて、保存状態が悪かったんですよ。”ひねる”っていうネガティブな言葉があって、そういうお酒だったんです。日本酒ってこっちでは1,500円ぐらいで売ってるものが、あっちのお店で買うと10,000円ぐらいになる。10,000円の酒が靴下の味がしたっていう…

小祝:日本人のこだわりの客に言われるならわかるけどさ、そんなにお酒に馴染みのない国の人に「これダメなんじゃないの」とか言われて。

高崎:あながち間違ってないんですよ。でもそれって、海外に行かないと分からないことですよね。常にいい状態で出してる日本酒だけじゃなく、やっぱり海外に渡ると日本酒ってこれだけネガティブなんだな、とか。

小祝:一応、場所を貸し切って試飲会やったんだよね。

高崎:そうですね、これにはこれが合いますよって。

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小祝:面白いなと思ったんですよ。日本では馴染みのない食材やスパイスを使うような、和食の文化の中で生きていない人たちに対して熱燗をどう広げるかって、ものすごいチャレンジじゃないですか。なんていうか、飲食業界って中学か高校卒業したらフライパンで頭ぶっ叩かれながら何年も修行して…っていうガチガチの世界だったと思うんですよ。そのあと来たのがミシュランだのワールドベストレストランだのっていう権威主義というか。もう本気で星を獲るためのガストロノミーみたいな。私はどっちの世界も知ってるんですけど、丈さんってとても自由な人だなと思ったんですよ。キャリアとか詳しいことはあんまりわからないけど、福島でレストランやって、親父は洋食屋やってて。で、10年前に震災があって、福島を出なくちゃいけなくて、東京に来て…ですよね。

高崎:福島に住む前に東京で10年ぐらい修行してました。震災後はそのときお世話になっていた会社で働かせてもらって、三軒茶屋で独立しました。

小祝:ちょっと変わった名前の店に連れて行かれたら、なんか中の人も独特の雰囲気があるなと。最近は丈さんに限らず、店にとどまらないシェフって増えてきたじゃないですか。

高崎:そうですね。

小祝:それこそ日本酒背負って各地で熱燗を作る、みたいな丈さんの活動も最近なのかもしれないけど、最初からいろいろ動いてましたよね。そういうのってたぶん、料理人の新しいスタイルだなと。

高崎:アルコールがツンとして飲みにくいとか、二日酔いになりやすいとか、熱燗の悪いイメージを払拭できるようなことをやった方がいいなと思ったんです。熱燗をお料理に合わせることが、もっとカジュアルになるような。フレンチとかイタリアン、中華のレストランとペアリングしたり、ちゃんと味を知ってもらいたい。難しいものではなく、香りを嗅いで飲んでみて、じゃあこれとこれが合いますよって伝えることを続けていったら、よりそのライブ感みたいなものが強くなっていった感じです。

島野:飲食の方に限らず、お店を持たれてる方って、“お店”っていうのがゴールにあるじゃないですか。お店にお客さんが来ることを目的とした、お客さんと店主の関わり方が前提にある。でも丈さんは熱燗が飲食をどう広げていくか、さらにはそこを超えて出会った人とどうコネクトしていくかを目的としている。アングルが広いなって思ったんですよね。人を結びつけることを目的にしても、直接店に返ってくるわけではない。丈さんがそういう従来の飲食的発想じゃないものを持ってることに、小祝さんや僕の業界との近さを感じたんです。僕ら広告とかマーケティングって、いろんな業種の人たちと仕事をするので、今日は飲食メーカーの人と仕事して、明日は化粧品関係、次は鉄工メーカー…みたいな、いろんな業種と広く浅く関わるんだけど、そんなに深く知ることはないんです。ただ、横断して渡り歩けるフレキシビリティがある。丈さんに僕は似たものを感じたんですよ。こういう発想の人だと、町づくりに対してワイドな視野で取り組めるんじゃないかなって。

小祝:結局ファンコミュニティじゃないですか。みんなが「丈さん丈さん」って集まってくるような。料理人であることは確かなんだけど、どっちかというと料理とか店の格式で引っ張っていく料理人じゃなくて、コミュニティの代表っていう感じはしますよね。ファンが多い。料理のファンじゃなくて、丈さんのファンが多い。

島野:料理も美味しいですよ(笑)

高崎:ありがとうございます。何度か熱燗のイベントをやったんですよ。そのとき普段知り合いになれないようなテック系の方とか、あとはコアファン、食とかお酒にすごく意識のある方たちが集まってるところで熱燗をつけさせてもらった。こんな方たちがいるんだっていうのを知れたことが僕にはとても大きくて。僕も、飲食人としての視野じゃない視野が世の中にたくさんあって、それの方がもしかして面白いんじゃないかなって思ってます。

島野:そういうことが双葉における町づくりのヒントになるのかもね。新しいコミュニティが実は双葉からっていうものがあると、結構面白い。

高崎:そうですね。例えば双葉町でやった壁画アートとかもすごくヒントがありました。巨大な壁画を描くことで人が集まってきて報道されて…もちろんそれに対していろんな考えがあるのも事実なんですけど、それがあったから人が集まってきたり、僕自身にも気づきがあって。この双葉町にいま何が足りないか考えたんですよ。


続く


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