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公正不偏な視点

イザベラ・バードの日本旅行について、京都大学名誉教授の金坂清則氏が、彼女の東北日本への旅行を可能にしたのは、駐日英国公使のH.S.パークス氏の全面的な支援があったからで、日本政府の要人もそれを支持していたからだという指摘をしている。
イザベラ・バード:鋭い観察力で日本の実相を記録した希代の旅行家 | nippon.com

そして、彼女の目的は日本へのキリスト教の伝道であった、と。
19世紀的キリスト教社会の道徳を体現していたイザベラ・バードが、日本人の不品行はキリスト教により是正されると確信していたことは間違いないと思うけど、東北日本への旅行が布教を目的としたものであったとは私には思えない。

東北地方の農村に生まれ育った私は、彼の地の人々がいかに粗野であり、変化を頑なに嫌う人たちであるかを知っている。明治11年当時には、それに交通の不便さ、情報の不足が加わって、正に未開の土地というのが相応しい地域だったのだろう。

政府関係者が東北地方を近代化し、租税と兵士を取れる場所にしたいという欲求にかられたであろうことは想像に難くない。
しかし、そのために査察を行おうとしても、旧藩士出身の官僚が醜いところを隠し、良いところばかりを見せようとすることもまた確実だろう。

イザベラ・バードのように好奇心の塊であり、なおかつ強固な意志と公平不偏な視点を持つ女性は、密偵として得がたい資質を持った人物だ。
故に、英国公使もまた、国策を実現するための情報収集手段として、彼女を辺境への旅行に送り出したのだと思う。

そして、彼女もそれに良く応えた。「日本奥地紀行」は、個人的な旅行記であるとともに、旅行を助けた英国政府への、(また、便乗した日本政府への)報告書としての性格を持つものではないか。
以前私がnoteで書いたように、イザベラ・バード=大英帝国のスパイ説に一票。(2022.4.7)
大英帝国のスパイ説|Atori Tsubasa|note

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