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「適量生産」というカタチ

「適量生産」というカタチ

こんにちは。きびだんごの松崎です。

今、インターネットの力を得て、古くて新しい生産のカタチが芽生えています。それは「適量生産」。必要なものを、必要なだけ、必要な時間をかけて作り、届ける。

生産のカタチはこれまでも進化を遂げてきました。「大量生産」そしてその後に続く「少量多品種生産」。今から20年以上むかし、留学中に見学した米国ホンダのオハイオ工場では30秒に1台の速さで車が生産されていました。一方で、ミルウォーキーにあったハーレー・ダビッドソンの工場では一つのラインで様々なオプションやカタチのバイクが作られていました。

無理なく、必要な量を、必要なだけ作る。昔は当たり前だった本来あるべき生産と消費の理想形を、現代に蘇らせる試みが始まっています。

ててて協働組合・永田さんから聞いた
「モノ・モノ」秋岡芳夫さんの話

「作り手」と「伝え手」と「使い手」の三方をつなぐ事を目標に掲げ、展示会やワークショップ、勉強会、交流会などを開催している「ててて協働組合」。その中心メンバーの一人として活動されている、永田宙郷さんに最初にお会いしたのはたしか2013年頃だったと思います。

当時考えていた、クラウドファンディングの仕組みを通じて実現できるかもしれない未来の話をした時に永田さんから教えてもらったのが、40年近く前から行われていた工業デザイナーの秋岡良夫さんの「1100人の会」の話でした。

秋岡芳夫「1100人の会」(1975年)
「ほれて作る、ほれられて作る、ほれて買う」、「人とモノ、人と人との原点的な関係を取り戻す」ために生まれた、工芸好きの同好会。作り手100人、使い手1000人、顔見知りの関係を成り立たせるため、会員1100人を限度とし、2013年に休会するまで、38年もの間、作り手と使い手の密接な交流は続いた。具体的な活動としては、1月の新年会と6月の総会にくわえ、10月に地方の産地や工房を見学する「創会」が毎年行われていた。初代の世話役は長野市の民藝店オーナーだった横井洋一氏がつとめた。

その後、ご縁をいただきモノ・モノについてはKibidangoでもプロジェクトを通じてお手伝いをさせていただきました。

当時、秋岡さんの考えに共感した放送作家の永六輔さんが熱心なサポーターとして支援されていたと聞きました。作り手の一年間の仕事を先にお金を出して「買い」、ただ買うだけでなく、工房の見学会や作り手を東京に呼んでお話を聞いたり。商品が届くまでにはすっかり作り手のファンになり、単にお金を買って商品を買う以上の関係性が作り手と使い手の間に芽生える。

そんな話を聞いて、自分たちが始めたクラウドファンディングにも通じる素晴らしい試みを既にされていた方がいたことに共感を覚えました。

その後、秋岡さんのことをもっと知りたくなり「割りばしから車まで」という本も読みました。1971年に書かれた本でありながら、内容はむしろ今の時代が抱える問題点を示唆していて、非常に興味深い内容になっています。

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十月十日で届く漆器「めぐる」

たまたま先日届いた「ててて協働組合」からのメールに、そんな永田さん達の応援しているプロジェクトが紹介されていました。「注文してからおおよそ十月十日(とつきとおか)かけて手元に届く」漆器。少し長いのですが、とても素敵なプロジェクトだと思ったのでぜひこの場をお借りして引用させてもらえればと思います。

こんにちは。ててて協働組合です。
ててての活動のお知らせと共に、これまでのててての活動に参加した作り手たちの活動をサポートしていく「てててプレス」として、今回は、ものづくりの量と時間をよりしっかりと考え“十月十日(とつきとおか)”をかけて漆器をつくり、器を届ける「めぐる」の活動と彼らの2020年生産分の予約受付をお知らせさせていただきます。
「めぐる」 >> https://meguru-urushi.com
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<<漆器との新しい関係性を探る「めぐる」>>

「めぐる」は、福島で活動する『漆とロック』がじっくりと作り上げた漆器の商品と活動です。飯椀・汁椀・菜盛り椀がきれいに重なる三つ組の漆器で、飯椀・汁椀・菜盛り椀として、日本人の食の基本に寄り添います。収納時にきれいに重なるそのかたちは、禅の修行に用いられる「応量器(おうりょうき)」にヒントを得ています。

また、何より特徴的なのは、そのデザインだけでなく、ものづくりに懸かる時間をこの活動の特徴として組み入れたことです。漆器をしっかりと作り上げるには、素材を寝かす時間や木地・塗り・蒔絵とそれぞれの工程にかける相応の時間が必要です。

また不要な在庫を抱えきれない現状と、職人へ信頼できる仕事を手渡したいという思いから、「十月十日(とつきとおか)をかけて漆器をお届けする」という、受注生産型のものづくりに挑んでいます。

確かな素材と製法による、季節のサイクルに則したものづくりを目指すため、基本的に年1回・3ヶ月間だけの受注期間を設けての数量限定・完全予約生産となります。(2020年のお届け分は、限定300組です。)

現在、2020年生産分の予約受付がスタートしており、3月15日が受付の〆切となっています。ご予約いただいた器は、ご注文いただいてからおおよそ「十月十日(とつきとおか)」をかけてお手元に届きますが、その期間中、毎月のメールや隔月の葉書などでご自身の器が育つ(作られる)様子をお知らせします。我が子を迎え入れるように、器のマタニティタイムが楽しめる仕組みになっています。

いま、クラウドファンディングはじめ、事前にファンやオーダーが育ったうえでものづくりを行う、新しい受注生産のかたちと、伝え手・使い手との繫がり方が生まれてきています。

この機会に、ぜひめぐるの活動と今期のオーダーをご覧ください。
めぐるの活動→ https://note.com/wakk/n/n2cb0870a71c1
公式ウェブサイトよりご注文いただけます→ https://meguru.stores.jp
※3月15日(日)までとなります。ご注意ください

<<ご注文からお使い頃までの年間サイクル>>
・毎年12月15日~3月15日の3ヶ月間のみの受注(年1回)
・春分の日(3月20日)が十月十日(とつきとおか)のスタート
・3月~10月まで会津の各工房で丁寧に製作します
・製作期間中は毎月あなたの器が生まれるまでの様子が届きます
 (メール&動画:毎月配信、ハガキ:2ヶ月に1回お届け)
・11月中にお届け
・12月いっぱいはご家庭で「枯らし」をしていただきます
・お使い頃は、ちょうどお正月からとなります

その他詳細は、こちらのプレスリリースを御覧くださいませ。
https://www.atpress.ne.jp/news/202837

また、“十月十日で届ける器”に至った経緯や思いを漆とロック代表の貝沼さんが綴っています。
あわせてお読みください。
『自然産業の「適量生産」を探して』
https://note.com/wakk/n/n2cb0870a71c1

とても興味をくすぐられ、すぐ上のリンクにある「漆とロック」代表の貝沼さんのブログを見ると、これまた非常に共感できる内容でした。(引用ばかりですみません!)

1年分まとめてドカンと作ること。漆器産業、いや日本全体が景気が良くて、売り手に大きな資本があった時代は、それが可能でした。でも現在は、なかなかそれを出来るところがありません。

その中で、ある程度の量を作るとなると、単価を下げざるを得ません。そうすると、簡単な工程のものばかりになります。きちんとした仕事が減ること、それは正しい技術が受け継がれていく機会の消失に繋がります。

(中略)

ただ、こういったきちんとした仕事のものは、相応の時間もかかるし、資金も必要です。

例えば、「めぐる」が目指す適量生産の規模、年間300セット(900個の椀)をまとめて作るには、600万円以上の投資が必要です。

1年以上先の回収を見越してそのような投資をするというのは、さすがに限界があります。

だから、十月十日のシステムなのです。

上に書いたような、漆器の適量生産を「共同購入」や農業で言うところの「CSA(Community Supported Agriculture:コミュニティの力で支える農業)」のような仕組みで、この課題を皆さんに一緒に解決していただけないかと考えています。

皆で実現する、
正しいモノづくりのありかたを目指して

今Kibidangoを通じて実現したいと思っている世界も、こうした古くからある「共同購入」や「CSA」の仕組みに非常に似ていると思っています。自分一人ではなかなかできないことを、皆の力を少しずつ借りながら、きちんと手間と時間をかけて実現していく。

インターネットの登場により、これまでよりも皆が前よりもつながることができたとすれば、こうした理想の世界を実現することもできるはず。

世の中は便利になり、ネットで注文すれば大抵のものが翌日にも届く世界になりましたが、モノの価値はそれだけではないはず。むしろ、きちんとした形で作られるモノを、届くのを楽しみにしながら待つことで生まれる価値もあるはずだと思っています。

共同購入についてもCSAについても、それぞれ書きたいことが山ほどあるので、ぜひまた別の機会に改めて書きたいと思いますが、その根底にある思想は共有であると考えています。

その大事なキーワードの一つが「適量生産」なのではないかと思っています。そう思っている中で出会う、同じ思いを持って活動を続けている方々。

まだ貝沼さんにはお会いしたことがありませんが、ぜひ機会があればお会いしたいと思いました。そんな日が来るのを楽しみにしながら、今日も辛抱強く、クラウドファンディングで支援した数々のモノが届くのを待ちたいと思います。

【参考】

まつざき

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