見出し画像

宇宙会議

オンラインの会議はちょっと苦手だ。
場所を問わず話ができるのはいいけれど、どうにも自分が現実世界から離れるような気がしてしまう。
周りと切り離された場所で、一人他の星の誰かと交信しているような気持ちになるのだ。

「今日のオンライン会議は2時間か。長めの飛行だな・・・」

気持ちが重くなるのをこらえながら、いつものメンバーにメッセージを送る。

”こちら、URLです”

送信後すぐトークルームに続々とメンバーが入ってきた。小さな画面に顔だけが見えている実体のない彼らを見ると、やはりどこか遠い宇宙からの中継のように思えてきて不思議だ。

(ーーーはあ)

開始から2時間も経つ頃、ある議題で会議は完全に行き詰まってしまった。誰も言葉を発しない、静かな時間がただひたすら流れていく。

シーーーーーン。

「宇宙空間か、ここは」

そっとマイクをミュートにして、呟いた。
と、ふとデスクの端に、いくつかの球体が横並びになったオブジェが目に入る。つい先日購入したDaskSpaceと言う名のそれは、太陽や火星などのさまざまな惑星をモチーフにしたデスクインテリアで、特にランプとして光る太陽がお気に入りだ。

(みんなを星に例えるなら....阿部さんは、水星代表かな。高野くんは月でしょ)

安易だが、ウォータースポーツが得意な阿部、物静かな高野、と順に当てはめていく。最後に地球が残った。

「ーーーさん、聴いてる?」

「...!」

突然呼びかけられた声に、反射的に体が跳ねる。画面に目を戻すと、水星代表の阿部が訝しげにこちらを見ていた。

「はい、もちろん!」

慌ててミュートを解除してそう返した声は、心なしか先ほどより明るい。

(さて、地球代表、頑張りますか)


最新のストーリーは、メルマガでお読みいただけます。
メルマガ登録はこちら

いいなと思ったら応援しよう!