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配送遅延から生まれるドラマ【後編】


5.重なる遅延、高まる不満と批判

遅延が継続する中でウクライナ侵攻直後には好意的だったコメント欄は荒れていきます。活動報告についたコメントの数といいねの数をグラフにすると、いいねの数(赤い線)が、運転資金を手当するために別のプロジェクトを立ち上げるという報告後に顕著に減っているのがわかります。

そして2024年6月。メーカーはJollylook Autoの生産のために必要な部品はほぼ揃ってはいるものの、重要な部材である金属レールと電子部品の調達の見込みがつかないことを説明、この調達の目処がつくと思われる来年1月までプロジェクトの生産を見合わせることを発表します。

それまで待てない支援者向けに、材料が揃っている別商品への無償交換も案内されましたが、支援者にすればここまで待って他の商品に変更するのにも抵抗があります。

コメント欄はほとんどが批判に。「詐欺師」「金返せ」等など。

6.批判の中の応援メッセージ

ただ、そこにこんなコメントがありました。

いまさら何を言えばいいというのでしょうか?
あなた自身はまだ無事で、多くの同胞のように殺されても負傷もしていません。今やカメラのことではなく、あなたと共に立つことが重要です。あなたを詐欺師だと言う様々なコメントは辛いでしょう。そんな人々は戦争中の国がどういうものかを知らないのでしょう。

私は元々オランダ出身で、第二次世界大戦直後に生まれました。国中の破壊が何年も続いたのを覚えています。そのような状況下で、人々は生活を立て直し、再び製造を始めなければなりませんでした。しかし、多くの企業は海外からの巨額の資金援助を受けたため、比較的スムーズに進み、工場は再び生産を開始できました。フィリップスのような企業は、戦時中もほぼ通常通り稼働していました。

しかし、あなたたちは自分たちで資金を調達しなければならず、それは確かに異国の地で簡単ではありません。そして、日々の売上に依存している状況です。私たちは皆、世界中で生活費が上昇していることを知っています。だから、あなたのカメラのような贅沢品を買うことは後回しになるでしょう。

すべての不満や否定的なことを言う人達に、お伝えしたいことがあります。
もしJollylookのカメラメーカーが本当に詐欺をしようとしていたら、今頃は何も反応がなくなっていることでしょう。

前にも言いましたが、これはもうカメラを支援したということではなく、あなたたちと共に歩む旅に参加したということだと思っています。カメラが私の手元に届いたら、それは特別な場所に置かれるでしょう。人類が強く耐え忍ぶことができることの象徴として、誇らしげに。

皆さんの幸運を祈っています!
オーストラリアのジェイコブより

これには、思わず胸に込み上げてくるものがありました。


7.メーカーの信念とコミットメント

先日、久しぶりにJollylookチームとビデオ会議を行うことができました。彼らがスロバキアに移住してからはメールでのやり取りは行っていたのですが対面で話すのは初めて。

Jollylookの代表・エフゲニー
Jollylook Autoの最終サンプルを誇らしげに見せるエフゲニー

「これがJollylook Autoの最新サンプルだよ。早く生産できることを心から願っているんだ」というメーカーの言葉から、文面からはなかなか伝わりづらい『この商品をなんとか早く支援者の方々に届けたい』という、強い思いを感じることができました。

Kickstarterでのクラウドファンディングでの当初の出荷予定から遅れること4年弱。日本でのクラウドファンディングでの出荷予定からも2年以上が経ってしまっています。当時支援された方々のストレスは想像を絶するものがあります。

コロナ禍やウクライナ侵攻による戦禍と、半ば不可抗力だったとしても、当初約束していた出荷予定から遅れているのは紛れもない事実。そんな時、どこにその怒りをぶつければ良いというのでしょう。

ただ、一つだけ言えることがあります。

プロジェクト開催時に商品に魅力を感じ「手に入れたい」という思いが高じて支援を行った。その事実は残り続けます。そして、支援をキャンセルしない限りは、このメーカーはその支援者との約束を果たし続けようとし続けるはずです。

過去に私がKickstarterで支援したプロジェクトの多くは、途中で頓挫しました。また、完成度の低い、中途半端なクオリティの商品を送られたこともあります。

それに比べ、Jollylook社の姿勢には逃げも隠れもしないという信念とコミットメントを感じます。彼らがあきらめない限り、我々も寄り添いながら彼らの旅路を応援したいと思います。


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