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「アイヌもやもや」を読んで気づいたこと——考えもしなかった差別について
私は北海道で育ちました。生まれも育ちも北海道。
小学校ではアイヌ文化について学び、地元のアイヌ資料館にも行ったことがあります。
それでも、どこかで「アイヌは過去のもの」と思っていた自分がいました。
そんな私が『アイヌもやもや』という本に出会い、今まで意識すらしていなかった「差別」について考えさせられることになりました。
沖縄で感じた違和感
実は、私は半年ほど沖縄に住んでいたことがあります。沖縄は第二次世界大戦で日本国内で唯一、地上戦が行われた場所。
戦没者の慰霊碑を訪れたとき、そこにアイヌの方の名前を見つけました。
北海道の人間が、どうして沖縄で戦死しているのか?
なぜ、気候も文化も違う土地で命を落とすことになったのか?
疑問が次々に浮かびました。アイヌの人々は、ただ「日本人」として戦争に駆り出されたのだろうか? それとも、何か別の理由があったのだろうか?
この時、私は「アイヌ=過去の存在」と思っていた自分に気づかされました。
『ゴールデンカムイ』を読んで、知ったつもりになっていた
私は『ゴールデンカムイ』が大好きで、原作もアニメもすべて見ました。
作中には北海道の地名もたくさん登場し、地元民としては「わぁ、知ってる場所が出てる!」とワクワクすることも多かったです。
そして、「アイヌ文化について知った」と思っていました。
でも、それはあくまで「物語」の中のアイヌであって、現実のアイヌ民族の歴史や、彼らが受けてきた差別について深く理解していたわけではなかった。
『アイヌもやもや』を読んで、それを痛感しました。
マジョリティとマイノリティ、意識したことのなかった「特権」
この本には、差別についての具体的な話がたくさん出てきます。
「差別はいけない」
そう習ってきたし、そう思っている。でも、実際にどんな差別があるのか、どういう構造で生まれるのか、具体的に学ぶ機会はほとんどなかったように思います。
本の中で紹介されていた「白人特権」や「男性特権」のリストを見たとき、まさしくその通りだと思いました。そして、それと同じように「和人(日本のマジョリティ)の特権」リストを見て、ぐさっと刺さったんです。
「えっ、こんなことも特権なの?」
それまで当たり前だと思っていたことが、実は「特権」だったと気づかされました。マジョリティ側の人間は、自分が持っている特権を意識しにくい。そのため、マイノリティが「これは不公平だ」と訴えると、「いや、お前たちも得してるだろ?」と反発する人がいる。
でも、それは「自分の特権に気づいていない」から起こることなのかもしれません。
「日本人すごい」って本当にすごい?
テレビをつけると、よく見かける「日本すごい番組」。
「日本の技術は世界一!」
「日本の食文化は最高!」
でも、これって本当に「すごい」のだろうか?
そもそも、日本に興味がある外国人をわざわざ呼んで、「日本って素晴らしい!」と言わせる番組を作ることに、どこか違和感を感じていました。
そして、そういう番組に出る外国人のほとんどが、白人か黒人。アジア系はほとんど登場しない。
一方でニュースでは「嫌中・嫌韓」的な報道が流れる。
私はニュージーランドにワーキングホリデーで行ったとき、韓国の友人に「韓国では日本の国旗を燃やすくらい日本が嫌われてるの?」と聞いたことがあります。すると、「そんなの見たことないよ。逆に、日本では韓国の旗を燃やしてるんでしょう?」と言われました。
あの時、「テレビってただのプロパガンダなんだな」と実感しました。
中国人だから、韓国人だから——それだけで嫌うのはおかしい
ニュージーランドに行くまで、私は「中国人や韓国人は日本を嫌っている」と漠然と思っていました。でも、実際に出会った中国人や韓国人は、とても優しくて、思いやりのある人ばかりでした。
今、私のパートナーは中国人です。彼は私の家族を大切にし、私が抗がん剤治療をしていたときは、毎回休みを取って送り迎えをしてくれました。入院中も、お見舞いに来ていた私の父を、観光に連れて行ったり、ご飯の準備をしてくれたり。
そんな心優しい彼が、「中国人だから」というだけで偏見を持たれることがあります。私はそれがとても悲しいです。
一部の人の行動で「〇〇人はこうだ」と決めつけるのは、やっぱりおかしいと思います。
一度、海外に住んでみてほしい
もし機会があるなら、ぜひ「旅行」ではなく「生活」として海外に出てみてほしい。
✔ 日本の便利さと、不便さの両方が見えてくる
✔ 「時間通り」に縛られる窮屈さを感じることもある
✔ 自分がマイノリティとして差別される経験をするかもしれない
私はニュージーランドでアメリカ人から差別的な言葉をかけられたことがあります。でも、それ以外では特に嫌な経験はなく、むしろ「移民の国」だからこそ、多様な文化が受け入れられていると感じました。
日本では「差別なんてない」と言う人も多いけれど、それは「自分がマジョリティだから気づいていない」だけなのかもしれません。
井の中の蛙にならないために
日本のルールや価値観がすべてではない。海外に行ってみると、それがよくわかります。
✔ ルールよりも「相手を思いやる気持ち」が大切な場面もある
✔ 「差別はない」と思っているのは、マジョリティの視点かもしれない
✔ 「〇〇人だから」と決めつけるのではなく、個人として向き合うことが大切
『アイヌもやもや』を読んで、私は自分の中にあった「無意識の偏見」に気づかされました。そして、これからも「知らなかったこと」を知り、考え続けていきたいと思います。
もし、今モヤモヤしている人がいたら——
ぜひ一度、この本を手に取ってみてください。
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