絶望
記憶が鮮明なうちに書き留めておく。
先週末、夫の父が亡くなった。
義母には、私が実家と絶縁したことは話していなかったが、それをきっかけに、カミングアウトすることとなった。
私は、実家とはもう何の関係もないので、自分の親には来てほしくないと話した。お義母さんはそれを頭ごなしに否定することはなかったが、義父の死を報せないわけにはいかないので、伝えるだけ伝えると言っていた。
そして、今日が葬儀だった。
義母のすぐ後ろの親族席に座っていたら、母が焼香に来ているのが見えた。予想はしていたが、実際に目にしたら指先が冷えて、頭がガンガンと締め付けられるようだった。
母が焼香している時だけ、きつく目を閉じて、やり過ごした。
不幸中の幸いで、大規模な葬儀だったため(義父はまだ七十代で若く、仕事も少ししており、交友関係も広かった)、参列者が百人ほどいて、慌ただしく済んだ。火葬場までのマイクロバスに私は急いで乗り込み、母はそこで帰って行った。
私は、一度も母を見ないようにしていた。
ただ、私の娘が近くに行った時、母は
「なぜkitsuneがそんなに怒っているのか、わからない」
と言ったんだそうだ。
それを聞いた時、私ははらわたが煮えくり返りそうになり、そして絶望した。
今も、怒りと悲しみで、頭がいっぱいになっている。
そうか、わからないのか。
私の気持ちを伝えるだけ、無駄だったのか。
いや、無駄だとわかったことが収穫なのか。
四十過ぎて、もうこれ以上彼らに関わってはいけない、傷が深くなるだけだと知れただけ、まだマシだったのか。
義父の死を悼むとともに、自分は親が亡くなっても絶対に悼まない、死に顔も見ない、葬儀にも出ないと固く誓い直した。