ほんの少しの贅沢時間
部屋を暗くして、常夜灯だけにして、一人だけの空間でお酒を飲んだり、好きな動画を見る。
そんな時間がないとどうしようもなく苦しくなってしまう。
今に始まった話ではなくて、幼いころから、そういう気質があったような気がする。
家の中に自分の本音を吐ける場所がなくて、学校では優等生を演じなければいけない。いつから自分のことよりも周りの顔色ばかり窺って生きるようになったのだろう。
自分の部屋をもらってからは、自分の部屋でだけは自分が主人公になろうとした。ウォークマンに取り入れた音楽の好きな歌詞をノートに書いたり、自分の好きなアイドルのポスターを貼ったり。
そんな大層なことではないけれど、そこには紛れもなくわたしの『スキ』が詰め込まれていた。
スマートフォンを買ってもらってからは、インターネットに自分の気持ちを吐露したり。
アルバイトをするようになってからは、端末代や学校への交通費を差し引いて手元に残ったお金で一人で電車に乗って遠い街に行ってみたり。行った先には自分の街にはない、新しい景色があって、それがわたしの『スキ』を増やしたり、一人では考えることのできなかった将来を考えさせてくれたのだと思う。
学生の頃、ある程度の現実を知ったうえで思い描いた将来とは程遠いし、こんな風に言葉にする時に、言葉を知らなくて歯がゆさを感じたりもするけれど。遅すぎることはないから、今からでもゆっくり自分の人生を豊かにしていければいいのかな、なんて思う。