お産した産科の先生へ尋ねる。【HTLV-1キャリアでもある私】回想・・22
前回の記事の続きです。鹿児島では、早くから妊婦さんにHTLV-1対策が取られていたのに、何故、関東圏の妊婦さんには対策が取られてなかったのか?
このモヤモヤを解消するべく・・、ずいぶん経ってからであるが、私は、出産した産科医師に問い合わせた。私が出産した当時。HTLV-1についてどのような扱いであったのか、ご認識であったのか伺ってみた。お産したのはもう21年も前だ。うちの子2人とも同じ病院でのお産であり、「患者の声に耳を傾けてくれる」お人柄の先生であったので、実行できたんだと思う。先生は私の事を覚えて下さっていてくれて嬉しかった。お忙しいなか、直ぐにお電話下さった。
先生は、私と息子がHTLV-1キャリアであることに大変驚かれた。現在は、産科を開業してないそうだが、当時に振り返って頂き、お話を訊けた。その先生は、大学病院にも出入りしていた頃でHTLV-1母子感染の話をちらっと聞くくらいであったらしい。しかし、私のお産した頃は、風土病としての認識が強く、冷凍した母乳が望ましいと他の医師から聞いていたという。私は、その先生に怒りは感じない。お話を真剣に聞いて下さり、私がキャリアであり、子に感染させた苦しみは伝わったと思う。「お役に立てなくて・・。」という言葉も頂いた。私はすかさず「知って頂き、私も苦しんでいる一人という事を受け止めて頂き、有難いです。」と、気持ちを伝え「キャリア当事者として、もがきながらも、この病について発信してゆきます。今後もご関心を持っていただけるよう、宜しくお願い致します。」とお願いした。先生は快く、御返事くださった。 またお一人、味方が増えたと、前向きにもなれた。
国が、風土病として放置してきた点は、かなり根が深い事ではないか。
現在の母子感染の対策は、大変熱心に対応されているようになったが
感染させてしまったと苦しむ母の気持は、どこか置き去りのように感じるのは私だけなのか。
かつては輸血感染もあり、現在対策がとられ、「輸血感染はありません・・。」とされてはいるが、輸血感染で苦しんでおられる方も
現にいらっしゃるわけで、「昔の事。」に収められることだとしたら
酷いことだ。
「もう、むかしのこと。」と、なかったことにされることは
あんまりにも、冷たいのでないか?
現状はどうか、わからない。私は、HTLV-1感染で苦しむ方々と
じっくり膝を突き合わせ、話す経験がない。私のなかで
湧き上がる感情は、独りよがりなのかもしれない。
HTLV-1の事を発信されてきた、個人様、患者会の皆さま、理解ある医師や研究者の方々・・。先駆けて下さる方がいて、本当に心より感謝でいっぱいである。
その頃の私はHTLV-1についての疑問や不安を わかってくれる誰かに話したくなっていた。知識を深めようとしても、新情報が欲しいし、一人では理解できない事が多い。
どうしてもわからなく、気になってしまう。知りたい。数か月ごとの受診の度、a先生にはメモに予めまとめてゆき、どんどん質問したり、話したりしている。自分の体調についてはもちろんだが、HTLV-1について、調べて納得できない事も聞いたりしている。時間は気にしているので長居ではない・・はず・・。
自分でも忙しい患者だと思う。 いつの間にか「小さい動きでも、この病の事を発信してゆく。」と、心が体が、動き始めていた。
家に帰ると夫は「病院どうだった?」と聞いてくれる。だんだん夫とHTLV-1の事も話せるようになってきた。夢中になり過ぎると「HTLV-1に憑りつかれているみたいで怖い。」と言われ、我に返ることもある。そんなふうに夫との掛け合いがありながら暮らしている。どうして、そう夢中になるのか、わからない。
「苦しくなる・・。」と、a先生に打ち明けたことがある。上手く言葉にならない私に、a先生は、「子に感染させた罪悪感?」 「責任を感じる?」とお尋ねになったが、 自分のなかで、はっきりした言葉にはなっていなく、しっくりこない。 後に続いて生きてゆく方々が、HTLV-1感染で苦しむ事も考えると、ただただ、辛くなる。
私が、HTLV-1について目を背けることが出来ないってことは、ハッキリとわかる。
もし明日生涯を終えるとして、何も行動していなかったら、大きく悔やむとも感じる。
小さい動きであっても、HTLV-1について社会の認知や、少しでも偏見への解消に、何かしら繋がり、よりよい状況に変えてゆけたら・・という気持ちに満ちてきた。じっとしていられない自分を認めるしかないところに きてしまった。
HTLV-1に関わってしまった人は、本心では気にしている方が多いと感じる。現にキャリアの方でも、不安を抱えているという相談もあるようだし、私がかつてそうだったように 病院探しで困っているというネットでの情報もある。しかし実態がよくわからない。誰にも会ったことがない。生の声で話したことがない。他の方の声がなかなか聞けない。困っている事を語り合える方法はないのだろうか。 機械オンチの私が、このnoteのページを始めているのは、こんな理由からだ。
病についてもっと理解を深めたい。キャリア・発病の方ともに何かしら助け合える事はないだろうか。私が出来る事は、何だろう。誰かと語り合いたい。