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果たせなかったレスリングチャンピオンの夢の先

5年ぶりにレスリングトーナメントを観に行った。
表彰台に立つチャンピオンを見て、あれが娘の夢だった、と思う。
コロナで、高校最後の年の試合はキャンセルされ、「今年こそは」という思いの行き場がなかった。

娘は大学生になり、レスリングから遠ざかっていたけれど、数年ぶりに大学近くの高校女子レスリング部に顔を出しはじめ、今回、コーチとして選手を見守った。私は、「コーチをしている娘を見に行く」という目的で会場に向かったのだけれど、ホイッスルの音が聞こえると、わくわくした気持ちが甦り足早になった。母校も参加する大きなトーナメントの懐かしい会場でレスリング仲間に会い、母親の私も古巣に帰ったようだった。コーチたちの怒声も懐かしい。朝から晩までの闘いに心が躍った。

真剣にマットの試合を見つめる娘の横顔の写真を撮る。
あのマットで試合をする娘の写真を撮るはずだった。

5年前の不完全燃焼はずっと残る。
それは、あの年卒業した皆が抱えている。

チャンピオンになる夢は叶わなかった。けれど、娘がこれからも関わっていきたいと思える、いつまでも好きだと思える何かに出会えたことは幸せなことだ。


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