令和5年9月の朝礼

 全国の地方公務員のみなさん、おはようございます。今日は9月1日。関東大震災から100年を迎えました。今後30年の間に70%の確率で発生すると言われている首都直下地震では最大死者2万3000人、建物の全壊や焼失61万棟、避難者数720万人、数週間のライフライン断絶、経済被害95兆円とされており、首都機能を打撃されるためその影響は全国に及ぶことになります。
 関東大震災以来、私たちは数多くの災害を経験してきましたが、重要なことは対策を先送りしないことと自らの身は最終的には自ら守るということです。災害による直接的な命の危機だけでなく、災害関連死の防止や大量の被災者の生活再建など震災後の課題もまだまだ山積しています。
 南海トラフ巨大地震や富士山の噴火も視野に入るなかで、今日の関東大震災100年を機会に住民の命を守るために何をしなければならないかを今一度考えてみてください。

 出だしが重い朝礼となってしまいましたが、今日は暦の上では二百十日です。ウィキペディアを見ると「台風の多い日もしくは風の強い日といわれるが、必ずしも事実ではない」と書いてありますが、世の中は9号、11号、12号と3個の台風が同時に発生して沖縄を始め西日本に影響をもたらそうとしています。特に明日には11号は沖縄、12号は小笠原に接近する見込みですので、十分に警戒してください。
 また、内閣感染症統括庁が発足しましたが、コロナも依然として流行しておりますので、自治体においては医療逼迫につながらないように啓発や対策をお願いします。

 さて、8月末は例年のことですが来年度政府当初予算編成に向けての概算要求が締め切られました。一般会計の要求総額は過去最大で114兆円前後となったようです。これに防衛費や少子化対策費などの事項要求が上乗せされますので、最終的にはかなりの額に膨れ上がるのではないかと思われます。
 コロナ対策という有事モードで編成してきた予算を平時化することができず、未だに何でもありで構わないと考えているのであれば政治の機能停止でしょう。政府は政策の優先順位をしっかりと付ける必要があるはずですが、あらゆる場面で有権者の反発を避けたい当選至上主義の政治家ばかりになって意思決定ができないとすると、「赤信号みんなで渡れば怖くない」式に怖いことになりかねません。
 地方交付税の概算要求額は過去最多の18.6兆円とされてはいますが、これも社会保障費増に加えて金融政策変更に伴う金利上昇で相殺されかねず、自治体の財政運営も弾力性を失う可能性もあります。各自治体においては将来を見越して逆算した上での予算編成に向けた対応が求められます。

 さらに、ガソリン代が史上最高値を記録したり、処理水放出に伴う中国のフェイク情報による風評被害を防げなかったり、そごう・西武での百貨店としては61年ぶりのストライキが強行されたなどというニュースからは政府機能が十分に動いていないように感じられますし、さらなる社会の分断や荒唐無稽で極端な言説への熱狂的な支持なども生じてくる可能性があります。
 そうしたときに、住民の生命や財産、生活を守るために公平性や公正性に十分に配慮しながらも、ひとり一人の住民に寄り添えるのは自治体でしかありません。中央政府が機能不全に陥ったこれからが自治体職員の腕の見せ所となってきますので、みなさん、よろしくお願いいたします。

 朝ドラ「らんまん」は最終月に入ってきました。槙野万太郎のモデルとなった牧野富太郎は「世の中に雑草という草はない。どんな草にだって、ちゃんと名前がついている」と言いましたが、これは昭和天皇も同じことを仰られたことを入江侍従長が書き留めています。自治体においても「住民」とひとくくりにしますが、同じように「住民」という人はいない、職員のみなさんが相対しているのは名前のあるそれぞれの「人」であるという思いで接する必要があるということを最後にみなさんにお伝えして、今月の朝礼を終わります。

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