アカ_ヨシロウ

vol.3『アカ ヨシロウと勉強』

はじめに

 夫は今、勉強に励んでいる。
 退職後、自分の興味ある分野について学ぶために、平日毎日学校へ通っている。
 正直な話、夫が学校に通うまで、夫は真面目にコツコツ勉強に励む人ではないと思っていた。夫の可愛らしい特徴なのだが、苦手な分野の勉強に励むときは、必ずと言っていいほどえずきながら勉強している。夫はよく「その分野が苦手だなんて認めたくないし、思いたくない」と言っているが、交際をはじめてから約8年間、オエオエ言いながら勉強する姿をしょっちゅう見てきた。真剣に机に向かわなければならない勉強であればあるほどオエオエするので、「真面目でコツコツ」という姿勢そのものが、夫にとって苦手分野なのだと思いこんでいた。
 だが今、夫は真面目にコツコツ勉強に励んでいる。毎日学校へ通い、帰宅後も復習や自主学習に励む。自主学習中に制作物がうまく稼働すると「見て!動いたよ!!!」とニコニコしながら報告してくれる。真面目でコツコツが苦手なら、こんなにも勉強に熱中しないだろう。夫がワクワクした顔で勉強する姿を見ていると「夫は今、学びたいことを存分に楽しめているのだな」と感じる。
 今回の月刊アカ ヨシロウvol.3は『アカ ヨシロウと勉強』。夫が大好きなものについて語ってもらった前2号とは少し雰囲気を変え、真面目な話題で夫と語り合ってみた。
 
 夫と勉強の特集。

コラム『ヨメから見た「アカヨシロウと勉強」』

アカ ヨシロウ
1988年千葉県生まれ。フリーライター。前職は食品卸売会社にて輸入肉の仕入れとシステム担当を歴任。趣味は登山と映画鑑賞。好きな言葉は「日々是勉強」「為せば成る」「ケ・セラ・セラ」。

 夫は要領がいい。

 会社員時代、夫とともに食品表示検定を受けたことがある。わたしは終業後に開催される勉強会に欠かさず参加し、3ヶ月ほど勉強してから臨んだのだが、夫が勉強をはじめたのは試験1週間前くらいからだ。2人とも合格したのだが、夫とわたしの点差はたったの1点だった(この結果になってしまったのは、わたしの要領が異様に悪いだけかもしれないが)。

 夫の要領の良さは、彼を特徴づけている。

 中学受験を経験した夫。受験することになった中高一貫校は、夫の通う学習塾の上位クラスにいる子供たちが目指すような学校だったという。夫はその学習塾で、中の下くらいのクラスにいた。教師や講師の目から見たとき、夫は真面目なタイプには映らないだろう。

 だが、夫は受験に合格する。夫は受験する学校の8年近い過去問をかき集めると、とにかくそれを受験まで解きまくったという。「8年分くらい過去問を解くと、試験問題の傾向が分かるんだ」と夫は言った。受験に合格した夫に対し、上位クラスにいた子供の中には「なんでお前が受かるんだ」と発した子供もいたという。

 もちろん、要領のよさが100%成功に結びつくわけではない。

 試験という試験すべてに、夫が合格しているわけではない。試験に合格することと学ぶことは別物だ。要領のよさだけではどうにもできないことだってある。

 例えば夫は中学受験に成功したが、彼は落第生として6年間を過ごした。その学校で夫は学年ビリの成績を叩き出していたのだ。その学校は、学年ビリになると転校や退学をしなければならない状況に陥るほどの厳しい学校なのだが、彼は退学処分にならないギリギリの成績をキープし続けて、ずっと学年ビリで居続けたという(逆にすごい)。

 持ち前の要領の良さをうまく活用すれば、学年ビリをキープすることもなかったように思えるのだが。夫は多分、自分の要領の良さを発揮する対象に、心底興味がないとその能力を発揮しないのだと思う。

 だがある意味、退学にならないギリギリをせめ続けた、ということもひとつ、夫の要領の良さを示す出来事なのかもしれない。

 夫の要領の良さを見ていて思った。勉強に関してなら、自分が達成したい目標(試験に合格したい、資格をとりたいなど)に適した勉強方法さえ導き出せれば、その目標を最短で達成することは可能なのだ。自分のやりたいことをやりながら、いかに効率よく目標を達成させられるか、という姿勢が夫の中に常にある。

 受験や試験を受ける機会の多い学生や、資格取得に励む社会人には、夫の要領のよさは魅力的なのではないだろうか。

(↑)夫の勉強基盤が理解できる記事。


家庭教師アカヨシロウ、お勉強のポイント

 家庭教師のアルバイト経験のあるアカヨシロウ。彼の指導方法は「僕は教えない、(勉強を)やらせるだけ」というごくシンプルなものだ(!)。そんな夫にお勉強のポイントを聞いてみた。

ー試験に最短で合格する方法を教えて!

 まず過去問を解いて、相手を知ることだね。そこから逆算をして、最短で合格するための科目と勉強量を算段するんだ。やってるのに成績が伸びないって生徒はこのパターンが多いと思う。試験を合格することを目標にするんだったら、闇雲に暗記をするんじゃなくて出題傾向に合わせて勉強したほうが効率的だ。

 とはいえ、どんな試験でもコツコツ毎日勉強した人が勝つ。これは大前提だし、特に受験はそうだね。僕も偉そうに言っているけど、毎日コツコツ勉強ができないから成長が遅い。カホさんと受けた食品表示検定は、合格したけど内容は完全に忘れたしね。笑 カホさんみたいにコツコツできる人は、本当に尊敬するなぁ。

ー集中力をあげる方法は?

 これねー。あんまり大きな声では言えないんだけど、個人的にはカフェイン錠剤が1番効率的だと思ってるんだよな~。以前「超受験ドラッグ」として記事にも書いたんだけど、カフェイン錠剤(1錠中にカフェイン100mg)4錠をコーヒーで飲み下すと、マジで集中力が上がるんだよね。今はだいぶ問題視されてきたから自己責任でお願いしたいけど、高校生の頃はキメながら勉強していたなぁ。笑

ー勉強へのモチベーションをあげるには?

 脳を騙すことかなぁ。笑 「大丈夫、どんどんやろう!」ってね。いやぁ僕も当時お世話になった恩師がいるけど、受験勉強って長期戦だからモチベーション管理するメンターとなる人が必要なんだよね。僕は家庭教師がその役割だと思ってる。家庭教師は授業をすることではなくて、生徒のやる気を出させるのが仕事なんだ

 医学部を受験するような生徒には家庭教師が授業することも必要だと思うけど、僕が専門に見ていたオチコボレ生徒には家庭教師による授業はむしろいらないんだ。高校生ぐらいまでの生徒の勉強不振は基礎力不足がほとんどだから、数学でも英語でも基礎ドリルのを毎日やれば面白いように成績は伸びるよ。「分からないことがあったら、そのままにせず学校の先生に聞きなさい。」と言って、僕はドリルと勉強のペースメーカーしかしなかったなぁ。それでも半年でドンケツの生徒が平均以上の成績になって喜ばれたよ。まぁ彼が一生懸命勉強した成果なんだけどね。

ー勉強が嫌になりそうなときはどうしたらいい?

 それは僕も知りたいー笑。

 うーん、僕は勉強が好きな人の近くに行くかな。そんな彼らと一緒にいると「へー、そんなに楽しいんだったら、僕もわかるようになりたいな」って思えてくるんだよね。
思い返すと、僕が家庭教師をしていたときの生徒は、「勉強が嫌」ではなくて「勉強の仕方が分からない」生徒ばっかだったんだなぁ。そう考えると運が良かったのかもしれない。勉強の仕方さえ教えれば、成績は伸びるからね。


アカヨシロウの、勉強に欠かせない必須アイテム

 アカヨシロウが勉強する際、欠かせないアイテムを見せてもらった。ヨメとしては少々カフェイン多めなのが気になるところなのだが・・・。

コーヒー

 今ではだいぶ減ったけど、1日1リットルは飲んでいたよね。多いときは2リットルくらいいってたけど、そうすると小便がコーヒー臭くなって、うんこが細くなるのね。なんなんだろうね、あれ。

パイポ

 昔、ためしてガッテンで「l-メントールが集中力に効果あり」と言ってて、それから常用してる。確かに集中力が上がるし、口が寂しいときに便利。勉強の必須アイテムだ!

エスタロンモカ

 エスエス製薬が出しているカフェイン錠剤。1錠約16円と安いのがポイントだね。同社が出している「エスタロンモカ錠12」ってのが1錠のカフェイン含有量は100gで同じなんだけど、1錠約25円する。含有物に若干の違いはあるけど、カフェイン含有量だけでいったらコッチがオススメだよー。

エスタロンモカ錠剤 24錠
エスタロンモカ12 20錠

ビル・エヴァンスのCD

出典元:Complete Village Vanguard Recording | Amazon.co.jp

 ジャズ好きな人に言ったら怒られそうだけど、ビル・エヴァンスの「カフェで流れている感じの、聞いても聞かなくてもいいジャズ」が勉強にちょうどいいから好きなんだよね。笑 このアルバムは3枚組だから永遠とループして勉強してた。

サイゼリヤ

 安く長居できてコーヒーおかわりができるから重宝しているね。僕が高校の頃はマックがコーヒーおかわり自由だったんだけど、今はそのサービス終了しちゃったからなぁ。100円で半日居座れたから便利だったんだけどね。笑


アカヨシロウが今学んでいることを聞いてみよう!

-よしさんが今学んでる勉強について教えてくれる?よしさんが楽しく学んでるのはすごく伝わるんだけど・・・よしさんが学んでる分野を今までかじったことがないから、いまいち内容がわかってなくて…。

 今僕は、IoTの組み込みエンジニアの勉強をしているんだ。IoTとは「Internet of Things」の略で、身の回りのモノ(部屋のドアや、ベッド、テレビやエアコンまで、何でもかんでもだ。)をインターネットに繋げることをいうよ。これを勉強して、いずれは仕事につなげていくつもりだよ。

 勉強の具体的な内容はArduinoRaspberryPiって機械を使って、まずは簡単な電子機器をインターネットに繋げようとしているよ。こいつらを動かすために言語はCC++を少し、今はPythonを勉強している。順調に勉強しているけど、全部は理解できていないなぁ。難しい。。今はこんなことをして遊んでるレベル(↓)!

-ふと思ったんだけど、今学んでる分野については、コラムで書いたような要領重視!な勉強法で勉強してないよね。

 今の勉強は試験のために勉強しているわけではないからね。試験をパスするためだったら、どれだけ最小限の勉強ですむかって考えるし、ともすれば身についていなくてもいいと思ってる。理解は試験をパスした後でいいかなってね。笑

 一方、仕事に使うための勉強は、実務に使えなければ意味がないからね。そういった意味ではテキストベースの試験勉強より難しいと思ってる。システムの分野はテキストを理解していても、いざ実務をすると手こずることが多い。だから仕組みをしっかりと理解して、自分で問題解決する能力が必要になる。本当は早く実務をやって仕事の感覚をつかみたいんだけど、まだ仕組みすら分かっていない初心者だから、もう少し勉強しないといけないかなぁとね。

-でもそれだけやりがいがあるってことだよね。

 そうだねー。勉強も楽しいし、やりがいあるかもなあ。前職で営業からシステム部門になったけど、IT分野は結構好きなんだなぁって思ったね。

 当時良い上司に恵まれていたこともあったけど、異動当初に「システム部門は二度と同じ仕事をしなくてすうように業務をシステム化しているんだ。」と言われた時、それまで営業で地道な仕事ばっかしていた僕にとって目からウロコが落ちた出来事だったなぁ。

 今回のことでバレたと思うけど、僕は何でもかんでもなるべく楽をしたいと考えているんだ。だからなるべく僕の手を煩わせたくない。だからなるべくシステムに乗せようって。エンジニアの仕事の魅力はそういったところがあるかなぁ。

-ちなみに勉強後のビジョンはある?純粋に学んでみたいから学んでみたって感じ?

 ビジョンとしては、生業の1つといえるだけの技術にしたいと考えているよ。今後あらゆる業界で人手不足が深刻化するなか、これまで「人手をかけてやっていたこと」がどんどん難しくなって、どんどんシステム化が進む。僕らが住んでいる青梅市も、エリアによっては高齢化が進んでるよね。農業でも介護でもインフラ事業でも、何かお手伝いができないかなぁとね。

 とはいっても前職は情報システム系をやっていた程度のキャリアしかないから、数年は下積みでゴリゴリ働くかなぁ。勉強中の今のうちに模索をするよ~。

 かほさんが絵描きをやりながらフリーライターをやっているように、僕もフリーライターをやりながらエンジニアをやって、なんとか生き抜くようにしようー。


編集後記

 夫の勉強する姿を見るのは面白い。
 夫を観察していると、苦手な科目と得意な科目はひと目でわかる。だが夫はすごい。苦手な科目にも面白みを見出そうとする姿勢がある。だからどんなにオエオエ言いながら勉強していても、結局は学んだことをすべてモノにしてしまう。
 学ぶことに対して貪欲なのだと思う。
 「思考停止ボタンを押したら、人は老いる」と話す夫は、一生学び続けるだろう。体が老いても、精神が老いることはないのかもしれない。そんな底知れぬ学びへの思いを、夫からは強く感じるのだ。
 夫はこれから何を貪欲に学び、どんな人生を歩むのだろうか。

 次回は4月末に刊行予定。

photo / sentences / edit: Kaho Katayama


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