『白砂』を読んで
鏑木蓮先生の白砂を読んだ。
裏表紙の内容紹介の文で気になり、古本屋で購入。
20歳の苦学生の女の子が殺害される事件。
被害者は真面目でつましい暮らしぶり。なのに中年男性と援助交際との関わりが浮上したり、両親は既に亡く唯一の親族の祖母は遺骨の受け取りを断固拒否するなど、不可解なことばかり。
事件解決のため被害者の過去などを探るうち、全ての事柄に「骨」が結びついてくることがわかる。
ざっくりこのようなあらすじ。
「白砂」しろすな?はくしゃ?何だろう?と思っていたが、冒頭ですぐに遺骨のことだとわかった。
読んでいて被害者の苦労などを感じ取るうちに、あまりにも不憫で切なく思えた。
なぜ殺されなければならなかったのか、、と。唯一の救いがあったのに、それが元で悲惨な事に巻き込まれてしまった。
切なく悲しい読み終わりかと思いきや、最後はあたたかく優しい終わりだった。
この話は事件解決に挑む刑事と、もう一人のキーマンである女性が交互の語り手となって物語が運ばれるが、この刑事の人柄や事件への寄り添い方が人情に溢れていて大変良かった。
悲しい題材の事件だが、最後朗らか気持ちになれたのもこの刑事の人柄のおかげでもある。
この刑事、周辺の聞き込みやアリバイなど、証拠を集め端的に解決へ、というやり方ではなく、被害者の過去や生き方、心情に寄り添って物事を考え、解決の道へ導いていくやり方。
だいぶ遠回りなやり方で、確証を掴みながら着実に答えへと向かうタイプが好みな人は、読んでいて中だるみを感じたりもっとガツンと行けー!と思ったりするかもしれない。
私はかなり好きだった。テンポが良いとは言えないのかもしれないが、被害者が生前関わった様々な人に触れ、故郷を自らの肌で感じ、キーである骨について深く考えているところに、その刑事の真髄を感じた。そのせいもあり、不可解だった親類のわだかわりの謎が解けた時、過去と未来が結びついた時、その間にいる人の心情を丸ごと知り、感じることが出来ているような気がした。
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