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銭湯の”鏡広告”を見るためだけに此花に一泊した話

スズキナオ著『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』という本をご存じだろうか?
これはWEBライターのスズキナオ氏自身がこれまで書いてきた記事を一冊にまとめたものである。グルメ本の著者に取材しながらお勧めの飲食店をハシゴしたり、半額肉だけ買ってきて焼肉パーティーしてみたり、終電を逃したつもりで朝まで町を散策したり.......日常をちょっと工夫して非日常にする、出会った人の生活史に触れてみる、そうやって日々を楽しく生きる。そんな彼の生き方が読んでいるうちにすっと心に馴染んできて、心地よい。そういう本だ。

そのなかでも私は、”銭湯の鏡に広告を出した話”に魅せられた。

鏡広告というのを見たことがある人はどれくらいいるのだろうか?
詳細は彼の記事を読んでいただけたら分かると思うので省くが、要は銭湯の洗い場にある鏡の横や下に出してある広告のことである。銭湯という特殊な空間にある広告、ぜひ見てみたい!そう思った私は、実際に記事になった広告の現物を見るために此花区にある千鳥温泉に赴くことにした。

私の生活の拠点は大阪である。よって銭湯に行くだけなら別段宿をとる必要はない。しかし、私は”ホテル”という空間がもたらす非日常感がとても好きなので此花で一泊することに。そこでホテル検索サイトを見てみると、ひとつ気になる宿があった。

The Blend Inn

共用キッチン、ラウンジ、カフェを併設したゲストハウス。洗練されたアーティスティックな内装の雰囲気に心を惹かれ、ここで予約を取った。

当日。

自宅からJRに乗って西九条駅で降り、そこから徒歩10分ほどのところにThe Blend Innはあった。おおよそホテルっぽくも、ゲストハウスっぽくもない外観。(一回通り過ぎてしまった。)中に入ってチェックインを済ませ、受付のお姉さんが共用のキッチンやバスルームの使い方を丁寧に説明してくれる中で「どうして此花に?」という質問を私に投げかける。

「実はスズキナオさんという人の本を読んで千鳥温泉に行ってみたくて・・・・。」

するとなんとお姉さん、千鳥温泉でもたまに受付をやっているらしく、本のことも知っていた!一気に盛り上がる私とお姉さん。千鳥温泉のパンフレットを渡してくれたうえに夕食にお勧めのご飯屋さんまで紹介してくれる。

これはなかなか好調なスタートだ。部屋に荷物を置いて一息ついた後、早速千鳥温泉に行ってみることにした。

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(私が泊まった部屋、これとドアの手前に大きな姿見があるだけのシンプルなつくり。緑色のカーテンが美しい。)

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(部屋の前の廊下。東向きの窓のカーテンはすべて色違いで、朝日が差し込むと、床に綺麗な光のグラデーションが作り出される。)

The Blend Innから徒歩数分。住宅街に溶け込むように千鳥温泉はあった。

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暖簾がかわいく、もうこれだけでウキウキする。

中に入ってフロントのお姉さんに料金を支払う。お姉さん、「この辺の人?」私「スズキナオさんの本を読んで・・・。」既に常套句。

軽く書籍の話をし、銭湯再興プロジェクトのステッカーまでもらっていよいよ女湯の暖簾をくぐる。だだっ広い更衣室で、近所に住んでいるだろうおばあちゃんたちが風呂上り世間話を繰り広げている。そうか、銭湯って社交場なんだ。

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(千鳥温泉のパンフレット。めちゃくちゃ手が込んでる。英語付きで銭湯の入り方まで載ってた。)

すっぽんぽんになり、いよいよ浴室へ!すると.......あった!あった!念願の鏡広告!(さすがに風呂場で写真は撮れないので実物は”銭湯に鏡広告を出した話”をご覧ください。)

喫茶店の宣伝からヌードモデル募集の案内、果ては男子学生”彼女募集中”広告まで!テレビや電車なんかで見かける広告よりも、ずっと地域的で個性的なのが面白い。鏡のひとつひとつにありとあらゆる類の広告が付随している。

体を洗って湯に浸かった後も壁面の広告を眺め見る。千鳥温泉は普通の銭湯イメージよろしく壁面にモザイクタイルで富士山も描かれているのだが、山本体は男湯側にあるようでそこはちょっと残念。しかし、広告を見るだけで楽しいのでおーるおっけー。

しっかり温まって千鳥温泉をあとに。お次はご飯!


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