太陽光に関する米中摩擦とその影響(2022年5月)
こんにちは、浅野です。
2022年5月1日の #VoicyNewsBrief の配信回にて、太陽光発電の話をしました。
Solar Industry ‘Frozen’ as Biden Administration Investigates China
バイデン政権が中国を調査し、ソーラー産業が「凍結」される、という記事です。
私は昨年までこの業界にいたので、
放送で話した内容をあらためて文字でも整理してみました。
6分くらいで読めると思います。
Voicyの放送回
NYT元記事
メイントピック (何があったか)
アメリカ商務省(Commerce Department)が、
太陽光発電のメイン部材サプライヤーである中国企業の、関税逃れを調査することを決定。
影響
まだ調査段階だが、該当取引を停止する企業が増えている。
企業は別のサプライヤーを勿論探すものの、アメリカ国内での太陽光発電プロジェクトの延期または停止、数百億ドル・数万人規模の雇用が危険にさらされると言われている。
背景
中国の太陽光部品サプライヤーはメイン部材である多結晶シリコンを始めとした、自国で安価に調達できる素材と、自国政府や銀行からの補助が大きく、強固なサプライチェーンを構築しており、
他国サプライヤーに対し大きな価格優位性がある。
アメリカは産業保護等の理由で、オバマ政権時代 (2011-12頃) から中国本土からアメリカへの輸出に高関税を課しているが、
その回避のため、中国サプライヤーは東南アジア4か国 (カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム) を経由した迂回輸出をしているのでは、と疑われているので、今回調査が行われる事となった。
ちなみにこの4カ国は、米国で使用されている一般的なタイプの太陽電池の82%を供給しているとの事。圧倒的じゃないか・・・!(アムロ)
※私の前職、日系メーカーも中国工場がOEM (生産委託) で作っていました。
アメリカの太陽光発電導入が減ると、バイデン政権の肝煎りでもある気候変動対策やその目標にも大きな影響を与える可能性があるそうです。
ちょっと深掘り3点
中国産のソーラーパネル
太陽光パネルの世界シェアは中国が7割を占めていると言われており、世界トップはほぼ中国メーカーで独占です。Longi, Jinko, Trinaとか。
なぜこれほど強いか、という理由の一つにソーラーパネルのコモディティ化があります。
モノ自体で差別化が難しいため、中国のようにガンガン安値攻勢ができると強い訳です。
2000年代初頭は世界トップだった日本メーカーでしたが、
近年はPanasonic等は生産撤退を発表しているなど、熾烈な競争が行われています。
一方で、2021年は中国の電力不足でパネル生産の稼働率が下がり、価格の急騰があったりしました。このように、中国の生産が世界市場に大きな影響を与えています。
タイでの太陽光発電
タイでは自動車関連を中心とした日系メーカーが沢山工場を構えていて、工場の屋根に太陽光発電の導入をした、というニュースを聞くことも多いです。
ざっくり言うと太陽光発電には2つの環境要因が重要で、
1つが日射量、もう一つが温度です。
日射量が多いと発電量は増えますが、一方で温度が適温以上(20-25度以上とか)で、比例して効率が下がっていってしまいます。
タイをはじめとした東南アジアは日本と比べ日射量は多く、一方で気温は高いのですが、これらのプラマイを加味しても日本よりも高効率で発電をしやすく、投資回収の効率は一般的に良い、と言われています。
タイ政府が推進している、ダムの水面に建設する、ものすごく大きい太陽光発電所もあります。
再エネや電気自動車の環境負荷
再生エネルギーや電気自動車は環境に良い、という話で導入が進んでいます。
基本的にその通りだとは思うのですが、
例えば太陽光パネルは原料であるシリコン採掘や生産の際にウイグル族の強制労働が行われているなどとも言われていたり、
20-25年の製品寿命を終える前に入れ替えたり廃棄したりする事も非常に多く、生産からリサイクルまで、製品ライフサイクルで考えてどの方法を選ぶのが一番環境負荷が少ないのか、個人や事業者も引き続き考えていくべき課題なのだと考えています。
日本国内ですが、こういった太陽光システムリサイクル専門のサイトもあります。
皆さんはいかがお考えでしょうか?
ではまた。