創作童話「ムーシャムーシャとハッピーなおにぎり」
朝6時半、パクパク村のムーシャムーシャは、いつものように目をパッチリと開けました。お部屋にはとても明るいお日さまの光がさしていました。「おなかがすいたな、きょうは何を食べようかな?」と、ムーシャムーシャは楽しそうに考えました。
ムーシャムーシャはさっそく、お気に入りのズボンとシャツに着替えて、今日も冒険の準備をしました。でも、ポケットの中にはお金がないことに気づきました。部屋中を探しましたが、昨日の冒険でどこかに置き忘れてしまったみたいです。
「大丈夫、冒険に出よう!」ムーシャムーシャは笑顔で言いました。お金がなくても、おいしいものを見つける冒険ができるんだよ、とムーシャムーシャは思いました。そして、手にはお気に入りのカメラを持って、村のにぎやかな市場へ出かけることにしました。
ムーシャムーシャには、食べ物をおいしく食べて、みんなをハッピーにする特別なちからがあります。市場でどんなおいしいものに出会えるかな?ムーシャムーシャの楽しい冒険が、今日も始まります。
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パクパク村の朝の市場は人でいっぱいでした。人をかき分けかき分けいっしょうけんめい歩いていたムーシャムーシャは「コメコメおにぎり屋」の前で立ち止まり、大きく息を吸ってから、お店の人に話しかけました。
「こんにちは、おにぎり屋さん!」
おにぎり屋さんのお姉さんは、前は大きな町でインターネットの広告をつくるお仕事をしていました。おにぎり屋さんはSEOやSEM、クリックスルーレートの分析といった難しいことをして、会社がもっともうけられるようにする仕事をしていました。でも、今はパクパク村で、自分でおにぎりを作って売って、みんなに喜んでもらうことにしています。
「おはよう、ムーシャムーシャ。今日もおにぎり食べにきたの?」おにぎり屋さんは優しく聞きました。
ムーシャムーシャはちょっと恥ずかしそうに話し始めました。「えっとね、今日はお家にお金を忘れちゃって…。でも、このおにぎりを食べるところを動画に撮って、たくさんの人に楽しんでもらいたいんだ!」
おにぎり屋さんは少し考えてから、ムーシャムーシャの目を見て質問しました。「それでね、ムーシャムーシャ。おにぎりをあげたら、うちのお店にどんないいことがあるの? 君の写真や動画が、どうやってうちのお店をもっとすごいところに見せてくれるの?」
ムーシャムーシャは、スマートフォンをサッと取り出して、いろいろな数字を見せながら説明しました。「ほら、このグラフを見て! 僕の動画のエンゲージメント率は、なんと業界平均を3倍も上回ってるんだ。視聴者は平均で2分以上もビデオを見続けてて、リテンション率はすごく高いんだよ。そしてね、コメントには「次に何を食べるの?」ってコメントがいっぱいで、フォロワー数も毎月20%ずつ伸びているんだ。動画は共有されまくってるから、おにぎり屋さんのおにぎりがもっと有名になること間違いなし!」
市場にいた人たちが、少しずつムーシャムーシャとおにぎり屋さんが話しているところに集まってきました。そして、ムーシャムーシャとおにぎり屋さんとの話し合いをじっくりと見ていました。
ムーシャムーシャの元気な話し方と笑顔を見て、おにぎり屋さんの気持ちも明るくなりました。この元気な男の子がたくさんの人たちとつながっていることがわかり、ムーシャムーシャのアイデアにほんとうに興味をもちました。おにぎり屋さんはうなずいて、「それなら、試してみる価値があるわね」と言い、おにぎりを一つムーシャムーシャにあげました。
ムーシャムーシャがおにぎりを受け取るのを、周りにいた人たちが見ていました。ムーシャムーシャの話とおにぎり屋さんとのやりとりを、みんなわくわくしながら見守っていました。ムーシャムーシャはカメラをセットして、おにぎりを食べ始めました。ライブ配信されていたその動画はすぐにインターネットでたくさんの人に見られて、みんなが好きだと言ってくれました。
その動画のおかげで、コメコメおにぎり屋はすぐに人気のお店になりました。動画を見た人たちが、本当にそのおにぎりを食べたくなって、お店に来てくれたんです。次の日、お店の前には今までにないほどの長い列ができました。村の中だけじゃなく、ほかの所からもたくさんの人がおいしいおにぎりを食べに来たのです!
おにぎり屋さんはムーシャムーシャに大きな感謝をしていました。ムーシャムーシャのアイデアで、お店はもっとたくさんの人に知られるようになりました。そして、おにぎりだけでなく、おにぎり屋さんのお姉さんのやさしさも、もっとたくさんの人に伝わるようになりました。
それから…。
おにぎり屋さんとムーシャムーシャは、一緒に楽しい動画を作っていくことにしました。春には桜の木の下でお弁当として食べるおにぎり、夏には海辺で食べる塩味がつよめに効いたおにぎり、秋には新米で作ったおいしいおにぎり、冬には体があたたまるおでんといっしょに食べるおにぎり。ムーシャムーシャが、これらのおにぎりを動画で紹介してくれるのです。
村のみんなは、ムーシャムーシャの動画がだいすきで、季節が変わるたびに新しい動画を楽しみにしていました。そして、おにぎり屋さんの店には、顔馴染みのお客さんが増えてきました。お店はにぎやかになりましたが、おにぎり屋さんは村の中でちょうどいい大きさのお店であり続けることを大切にしていました。あまり大きくなりすぎるのではなく、村の人たち一人ひとりとのつながりを大事にして、村の人々に愛されるお店でいたいと思っていました。
おにぎり屋さんは、ムーシャムーシャと作るおにぎりが、村のみんなのおなかを満たすだけでなく、心も温かくする宝物になったと感じていました。
夕方、お店のドアを閉めるとき、おにぎり屋さんは心からの幸せを感じながら言いました。「ムーシャムーシャ、君と一緒にお店を盛り上げられて、本当にうれしいよ。これからも、私たちの村のみんなに愛されるおにぎりを作り続けようね。」夕日が美しく店を照らす中、おにぎり屋さんはにっこり笑って、そう言ったのでした。
おしまい
より長く走るための原資か、娘のおやつ代として使わせていただきます。