「俺の季節」が意味不明なまま終わっていく
夏は僕の季節だ。誰が何と言おうと。
毎年、軽度の熱中症になりかけるくらいには外を走り回り、水を浴び、米と肉とビールとを食らい、灼熱を全身に浴びて生を必要以上に感じるのが夏という季節だった。
しかし今年はほとんど外に遊びに行けなかったのはおろか、自転車もほとんど乗れず、大体の時間を家の中で過ごした。例年とは異次元と言ってもいいほどに訳がわからない状況のまま、暑さが終わる彼岸を迎えている。
なぜそんなことになったのか。それは僕の体が断続的に動かなくなったためだった。
思えば、7月下旬から始まった娘の夏休みの最初の方からいろいろおかしかった。夏休みの序盤の7月末、まず娘が倒れた。滅多に風邪をひかない娘だが、習い事(ダンス)のレッスンで多忙を極め、グロッキーとなった。娘を夜間診療に担ぎ込んだとき、クルマ買ってよかったなと思った。
そして8月に入ったら今度はその娘をメインで介抱していた妻が終わった。熱は出なかったものの、謎の咳と頭痛ととめどない鼻水が妻を襲った。その時僕も無傷ではなかったものの、少し咳が出るくらいで済んでいた。しかし、よもやその咳がフリになろうとは。
第一撃
休みの日の朝、早起きしてコホンコホンと軽く咳をしていたらぎっくり首になった。当初はピキッとした軽い痛みだったが、徐々に痛みが増していき、ついには痛みの発作のようなものが発生し、発作が出ている時は息ができないくらいの痛みに襲われた。
しかもなんか嫌だったのが、ふと「あっ」と思う瞬間があって、そのワンテンポ後にグワァーっと痛みが襲ってくるみたいなパターンもあったことだった。その予感はマジでいらない。
当日はそんなふうに痛みと闘っているとあっという間に夜になり、僕は僕の季節の貴重な一日を全くの無為に過ごしたことに絶望した。しかし、人間どん底に落ちると何か考えるもので、ふと「あ、整体に行けばいいのではないだろうか」と思い至った。翌朝電話をして、いつも通っている整骨院にひいこらでかけて行った。
先生に諸々説明していると「なんで早くきてくれなかったんですか」と言われた。僕もまったくもってそうだと思うが、前日は本当に全然思い浮かばなかったのだ。手技と電気で施術してもらうと嘘のように首が回るようになり、ちょっとの違和感を残して痛みはほとんどなくなった。
ふーやれやれと思ったのも束の間、その翌週に追撃があるとは。
第二撃
その日は朝から何かがおかしかった。
気温は35度近くあったにも関わらず、汗を全くかかなかった。なんか世界と意識が幕一枚で隔てられたような、ふわふわとした感触があった。何か妙にやる気が出ない。
なんか変だなーと思って過ごしているうちに、力が全く入らなくなった。それどころか、凄まじい頭痛が始まり、明らかに顔が熱くなってきた。熱を測ったら38.4℃。急いで病院にかかろうとするも、その日は休日。ついでに翌日も休日。辛うじて電話がかかった病院に相談すると、いわゆる重症化リスクが低いなら薬を飲んで家で寝てなとのアドバイス。まあそれもそうかと思い、家にあったタイレノールを飲んで床に就く。
しかし、頭痛がひどくて眠れない。と思いきや、時間が突然3時間くらい進んでいたりする。頭痛と発熱がひどくて気絶した後、頭痛の痛みでまた目が覚めたのだと気づいたのは、それが何回か発生した夜明けのことだった。熱を測ると、39.7℃。タイレノール全く効いてない!汗がガンガン出てるのに体温はグングン上がっていく。これはアレかなと思い始める。
さらに1,2回失神した後、満を持して(?)抗原検査キットを召喚する。説明書には15分待てと書いてあったが、5分しないうちに2本線が現れた。はい、アレです。この時点で、新型コロナウィルスにかかった可能性が高いと判明いたしました。
そこからめちゃくちゃ電話しまくって(休日だから)、ようやく繋がった病院に抗原検査が陽性だったことを説明すると「あーあーはいはい」みたいな対応だった。病院に行くと、病院の外に立てられたテントにしばらく放置されたのち、この人がコロナっつってんだからそうなんだろという感じで一瞬で診察が終わった。そしてコロナであることがぬるっと確定した。新型コロナウィルスが5類感染症になって久しい中、もう改めてのPCR検査とかはしないのだ。そしてカロナールと漢方(葛根湯)を渡されて帰された。このタイミングで葛根湯を飲んで果たして効果があるのか…?と思ったが、プロの判断は大事にしたいし、また、薬剤不足の余波もひしひしと感じた。
結局、カロナールと葛根湯はバッチリ効いて、とんでもない量の汗と引き換えに、翌々日の朝にはすっかり熱は下がった。しかしその後1週間くらいはめまいと倦怠感に襲われ、加えて嗅覚が全く効かない事態に陥ったのは参った。(匂いが復活した時は本当に嬉しかったが、まだ100%戻ってる感じはしない)
補足しておくと、ワクチンはフルで打っていた。ただ、僕はワクチンを打つたびに気前よくぶっ倒れていたので、コロナさんやそのそっくりさんと熱くデュエルしたがりなカラダなのかもしれない。
そして、夏が終わっていく
こうして、僕の8月があっという間に終わり、その余波でぼーっとしていたら9月も終わりかけている。よく考えたら今年はずっと体調が悪い。何かあっても、何もなくても倒れている。ブルベ(長距離サイクリングイベント)も全て体調不良で出走できなかった。
この状況にイライラしたので免疫というものを少し学んでみたりしている。一冊本を読んだ結果、寝込まないようにするには、上皮細胞と腸内に広がる常在細菌というものを鍛える(?)必要があることがわかった。ただ、必要性はわかったが何をしたらいいのかはわからないので、とりあえずヨーグルトを毎日食べることにした。僕なりに仮説を立てて行動に移したのだ。効いてほしい。
少し救いがあるのは、まだまだ気温が高い残暑の日々が続いていること。今年の僕にも夏を見送るチャンスがある。せいぜい朝晩に寝冷えしないようにしつつ、アサヒスーパードライのジョッキ缶でも呑みながら夏に別れを告げたい。
より長く走るための原資か、娘のおやつ代として使わせていただきます。