見出し画像

アンジェルマン症候群の子供に風船を割る装置をつくった話

ちょっとしたご縁があり、ある障碍をもつ子供の自立課題に使える装置を作りました。せっかくなので、作り方も含めてご紹介します。

内容は単純なもので、以下の動画のように「ボタンを押すと風船を割る装置」です。

以下につくった背景と、作り方を紹介します。


◆なぜつくったか? ~背景と目的

僕は個人で装置の開発に取り組んでいます。
先日、障碍のある子供向けの支援現場で働く友人から、以下の相談を受けました。

  • アンジェルマン症候群のある子供が、「ボタンを押す」という行動に意識を向けるのが難しいという悩みを抱えている

  • 一方、その子は「風船を割る」という行為には意識を集中できる

  • 「ボタンを押すと風船が割れる」という装置があれば、自然に「ボタンを押す」という行動を身につけることができるかもしれないので、つくれないか?

さほど難しい装置ではなかったので、数日で実装できました。
以下に作り方を紹介します。

※上記は今回対応した子供の特性であり、アンジェルマン症候群の人の全てに共通するわけではないので、その点はご注意ください

※ただ、障碍を持つ人で、同様の特性がある人はいるかもしれないので、参考情報として病名を記載しました

◆装置の作り方

①ソレノイドの先端改造

・つまようじの先端をはさみで切って、セロテープを巻く

・上記のつまようじをM3のスペーサー(高さ10㎜)に入れる

・ソレノイドの先端のM3おネジに、上記のM3スペーサーをつける

 

②ソレノイドとUSB・スイッチを接続する配線

・配線の全体像は以下の通り

・ソレノイドの配線に、延長用の配線をはんだ付けする。金属がむき出しにならないよう、熱収縮チューブで配線を保護する

・ボタンの裏側のネジを外して解体する

分解したスイッチ

・中の配線は以下のようになっている

・USBからの配線を通すために、スイッチの外枠にニッパーなどで切り欠きをつくる

・スイッチの内側の配線は以下の通り

スイッチでつながる部分に、ソレノイドの配線の1つと、USBの(+)線(赤色)をはんだ付け
ソレノイドの配線のもう1つと、USBの(-)線(黒色)は直接はんだ付けする

・元々スイッチに入っていた配線や部品で、無駄なものは切り取る

・閉じると以下のような外観。配線は動かないようにバンドなどで固定する

③段ボール筐体の作成とソレノイドの取付

・マシンの筐体に段ボールを使う。段ボールの形を固定するためにL字金具を2つ取り付ける

・L字板金の穴がある部分に合わせて段ボールに穴をあける。穴にネジを入れ、以下のようにナットで固定する

・ソレノイドは下図のように固定

・段ボールにカッターで切れ込みを入れて固定すると、針の位置を調整しやすい。針が出過ぎると風船を固定したときに当たってしまうし、手前過ぎると割れない

・風船を取り付けると右の写真のようになる
> ソレノイドをONすると、つまようじが刺さって風船を割る


※ソレノイドをONし続けると高温になるので、その点ご注意ください

◆材料・工具

<材料>

・つまようじ
・セロテープ
・ソレノイド(5~6V)
>今回は以下の、TAU-0530T 6Vを利用
https://ja.aliexpress.com/item/32731717962.html?spm=a2g0o.order_list.order_list_main.5.2f44585ajZNjQB&gatewayAdapt=glo2jpn

・USBケーブル(5V配線が出ているもの)
>今回は以下を利用

・M3x10㎜スペーサー(ソレノイドの取付用)
> 以下など

・ワッシャー
>以下など

・熱収縮チューブ
>以下など

・押すスイッチ
>今回は以下を利用。スイッチなら何でも良い

・段ボール(装置の筐体にする)
・ L字金具
>東急ハンズやアマゾンなどで買える
>例えば以下など

・延長用の配線
> 以下など使える

<工具>

・はんだごて、はんだ
・ハサミ
・カッター
・ドライバー、六角レンチ

◆マシンの使い方

・USBを電源につなぐ(ポータブルのUSB充電器でもOK)

・つまようじを出す穴の左右にガムテープを貼る

・風船を貼りつけて固定


・ボタンを押し、風船に針(つまようじ)を突き刺して割る

◆実験の結果

プライバシーの関係で写真などは載せられないのですが、アンジェルマン症候群のある子供に使ってもらい、「ボタンを押して風船を割る」ことには成功しました。

ただ、1回でボタンを押す動作が身につくわけではないので、支援現場で継続的に使って頂くことになりました。

進捗があればまた報告するかもしれません。
読んで頂きありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?