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どうしても「メイペンライ」に聞こえる

私たち、タイ語学習者(初級〜)を悩ませている「あるある」に、「時々どうしてもメイペンライに聞こえてくる問題」がある。
いや、ドラマの俳優も、なんなら先生も、いま「メイペンライ」と言った。「マイペンライ」じゃなかった。でも、「メイペンライ」と言うんですか?と聞いても「マイペンライと言っている」と答えられる。そう、頑なに。

このすれ違いは、タイ文字を自習してはじめて、私の中で「こういうことじゃないか」と原因を考えることができた。
以下、本題です。

日本語は「あい」と「えい」を区別する。「きあい」と「きえい」は別物だ。
同じように、「いあ」と「いえ」も区別する。「いあい」と「いえい」も別物だ。

(日本語は「えい」と書いて「えー」と発音しているので(市営プール→しえーぷーる)、ひょっとしたら「あい」と「えー」を区別しているのかもしれないが、このことは脇に置いておく。)

「メイペンライ」「チエンマイ」に聞こえる謎

さて、タイ語だが、「えい」にあたる発音はない。たぶん、ない。
なんなら「ごったい」で「ei」と入れてみるとよく分かるが、カフ「ェイ」ンみたいな西欧の外来語くらいしかヒットしない。
「いえ」も同様だ。

タイ文字で「あい」にあたる母音符号は3種類ある。ไ とใと ัยだ。このうち、 ัยは純タイ語になかった語彙に使う。他方、ไによく似た姿のใは、昔々には別の発音だったようだが(注)、今はไ や ัยと同じ「ai」を表す符号になっている。
しかし「えい」を表す母音符号はない。まったくない。このことに気づいたときはびっくりした。

ใの昔の発音は何だったのだろう。これまでみた本やビデオクリップでは、それぞれ異なる説明をしていた。1. 「ae」だった、2. 「aʉ」だった、3. ไより短い「ai」だった。いったいどれが本当なんだろう。

他方、「いあ」にあたる母音符号は、「เีย」がある。しかし、ยを「付加された子音y」としてみると、この符号は「いえ」や「いや」にも読める。
つまり、タイ文字からみた場合、文字で切り分けられないところに区別をつけることは難しいので、ไ ・ใ・ ัยは、「あい ⇔ えい」の幅広いバリエーションを持つ言葉となる。話者の個性だけでなく、丁寧さ・いいかげんさ、前後の言葉によっても変わってくる。
「いあ ⇔ いえ」も区別がつかないので幅広い発音となる。「書く」(キアン)が、「キエン」と聞こえる時もある。

これが「マイペンライ」が「メイペンライ」や「メペラィ」に、「チアンマイ」(เชียงใหม่, chiaŋmày)と綴られているはずの地名が「チエンマイ」に聞こえる謎なんだと思う。

タイ文字をいつ学習するか。どのくらい発音を固めてからがよいのか。これは難しい問題で、タイ語学習者はテキストや学校の手順の禁を破って(笑)なんならひそかに何度も、文字に挑戦している。それはこれまで出会ってきた人たち全員がそうで、人びとの学習の歴史に刻まれたトライアンドエラーを私は聞いてみたい。(平たくいうと、タイ文字学習がえげつないという話をお酒を飲みながらされるのが大好きだ。)

えげつなさは日本語も似ているのかもしれない。私たちは「ありがとう」を「ありがとー」とは書かないけどそう発音している。「高3」と「降参」は「おー」と「おう」と、微妙に差をつけているように思うけど、「高3」と「公算」は差をつけていないように思う。このあたり、外国の人からみたらネイティブが気づいていない闇なのかも。

私は、「文字を学びたいムズムズした気持ち」を、大切にしたい。
ローマ字を脱してひらがなに入る日本語学習者も、こんな気持ちだろうか。

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