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東風

 古来より、東から吹き流れる風のことを東風と言った。そのままである。捻りもない。だが関西にて生を受けた僕は上京する際、この東風を捲ってやろうと、本気で考えていたのだ。

 特に何に優れるでもなく、優秀な頭を持つ訳でも、品格がある訳でもない。この時代に大阪も東京もあったものではない。しかしながら、やはり東の言葉には鼻につくような違和感を感じてしまう僕だった。まだまだ未熟だった。

 数年前に意気揚々と吹いた西風は、今や完全に東風に呑まれてしまったのかもしれない。僕はそんな事を考える。西、東、どちらが良いというものでもないのだ。旧某国のように、壁があるでもあるまいし。

 今日、旧友と年末に飲む約束をした。関西にて努力を続ける友人と。帰省の際、僕は東風となって、関東の良いところを存分にアピールして来よう。そして新大阪から東京行の新幹線に乗った時、僕は再び吹き荒れる西風となる。

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