世界情勢!!
世界的な危機が進行するたびに情報をまとめ、お伝えさせていただいているが、現在の状況はどうなっているのか出来る限りまとめてみた。
①食糧危機、疫病、災害、紛争
1:中国各地でバッタ大量発生!
現在、東アフリカ、中東、インド、パキスタン、ネパールなどに猛威を振るっているサバクトビバッタ被害だが、ついに、中国国内でもバッタ被害が報告された。
今回、中国で報告されたバッタ被害は、東アフリカから飛来してきたサバクトビバッタではなく、クルマバッタモドキの仲間(イナゴ)である。
このクルマバッタモドキの仲間に関して、中国研究所によりゲノム解析(遺伝子)して研究しているそうだ。すると、昆虫の中でも相当優れている種だという。
優れている部分は、飛行能力、食物代謝が優れており、長距離を飛行でき、沢山食べることが出来る(体重分食べることが出来る)。
中国当局は、コロナウイルスの感染拡大、大豪雨、昆虫による農業被害後、海外からの食糧輸入を増やすよう対応。
しかし、インドやタイ、フィリピン、ベトナム、欧州諸国など各国政府は、緊急事態時の自国の食糧確保のため、小麦や米などの輸出を規制しており、食糧輸入に見通しが立ちづらい状況に陥っている。
中国南部の広東省や福建省など11の省は、6月8~11日まで、豪雨による洪水と土砂災害に見舞われた。
中国当局の発表では、262万人以上が被災し、22万人超もの人たちがが避難した。
14万5900ヘクタールの農作物が被害を受け、直接的な経済損失は40億4000万元(約609億円)に達した。
2:中国桂林市
中国南部の広西壮(チワン)族自治区 桂林市にイナゴの大群が襲来しており、中国政府が「食料用地」を確保する動きがある。
桂林市は中国の南に位置し、大豪雨被害や、長江の大洪水の被害も起きている場所である。
今回の洪水での農地の被害額が600数十億円規模にも上る。
コロナウイルス、バッタ、大洪水、大豪雨による農地被害に加え、米中貿易戦争でアメリカからの食糧輸入がストップしており、中国国内の食糧備蓄量が急激に減少している。
政府発表の公式被害面積は数百畝(うね)(一畝667㎡)
政府は稲への植え替えに一畝当たり3000元(約4万5000円)の補助金を支給すると発表。
中国当局は、果物や野菜から米(稲)を作るよう促しているが、実際、稲を作るより果物などを作った方が利益になる為、米から高級野菜や果物に変えてきた経緯がある。国の都合で果物に比べ利益が低い米に植え替えするかは、不透明だ。
3:吉林省、黒龍江省
中国北部の北朝鮮と面している吉林省、黒龍江省でもイナゴが大量発生しており、ここでも食糧危機の恐れが出ている。
中国北部はとても寒く、今年の4月に降雪があった。
中国版TwitterのWeiboに吉林市の人民政府の投稿でも、農地のバッタ被害を発表しており、緊急通知で農家にバッタの大量発生に対する注意を促している。
黒龍江省林草局は、6月1日に各関係部門に送った通知において、同省ハルビン市周辺の5つの区、県(市)で深刻な蝗害(こうがい)が発生し、面積2万4631畝(約244万2744㎡)の農作物が被害を受けたと明らかにした。同省のジャムス市と樺川県でも蝗害が見つかった。
吉林市農業農村部は、13.4ヘクタールに及ぶ場所でバッタの群れを観測したと発表。1㎡あたり50匹。
東北三省である黒龍江省、吉林省と遼寧省の食糧生産量は中国全体の20.8%にも及び、昨年、3つの省の総生産量は約1億3811トンであった。
4:日本への影響
中国北部は朝鮮半島に面し、日本の九州、中国地方とも近く朝鮮半島までバッタ被害が広がると、偏西風に乗り日本に到来する恐れがある(下の図の赤いライン)。
長崎県の対馬から韓国の釜山の距離は約50㎞。バッタの飛行距離は、100㎞から150㎞ほど飛行するといわれ、さらに偏西風に乗ることで、飛行距離は増す。朝鮮半島から日本へは十分飛来可能な範囲になる。
バッタは、アフリカから南米へ2000㎞もの距離を、風に乗ることで飛行したともいわれる。
5:インド・ネパール・パキスタン
インドでは北西部から侵入したバッタの大群が農作物を食い荒らしながら、6月末までに首都ニューデリー近郊に迫っている。
また、標高が高く、気温が低いため、これまでバッタの襲来が少なかったネパールでも、すでに1100ヘクタールの農地が被害を受けている。
サバクトビバッタが集中するインド・ラジャスタン州とグジャラート州は、乾季作(11月~4月)で小麦や菜種、クミンシードなどの作物を中心に被害を受けたが、今年4月には、収穫が進んでおり致命的な被害には至らなかった。
むしろ乾季作は天候に恵まれ、インドの小麦生産量は過去最高の1億700万トンを記録したと推定。
しかし、問題は雨季作(6~10月)だ。
FAOは、現在のインド-パキスタン地域へのバッタの侵入は7月中旬まで続くと予測。
域内では既に繁殖が始まっており、7月に孵化したバッタの幼虫が8月中旬には成虫となって群れが形成されると警告。
インド気象局(IMD)は、今年の南西モンスーンによる降雨量(年間の約70%以上を占める)は平年並み(長期平均降雨量を2%上回る)と予測。
適度な雨量が得られれば、作物が良く育つ一方、バッタの繁殖環境も良くなる。
つまり、雨季を迎えたインドは、今後、再び次世代のサバクトビバッタが大量繁殖し、雨季作の収穫を迎えるまでに甚大な作物被害が出る恐れがある。
インドの農業は、労働者の約4割が従事する重要な産業であり、バッタの食害は食料問題だけでなく、経済問題にも影響が及ぶ。
インド農業省のバッタ警告機構(LWO)は、バッタ対策チームは4~6月にかけて12.8万ヘクタール(東京都の面積の約6割)の土地に対し、トラクターや消防車、ドローンを使い農薬を散布する防除措置を講じている。さらに、農家には爆竹や、太鼓を叩くなど大きな音でバッタを散らすよう要請。
また農業省は5月27日に、イギリスに60台の噴霧器を注文し、空中散布用のヘリコプター配備計画を進め、バッタ対策の強化を明らかにしている。
モディ首相は5月31日、ラジオでバッタ被害を受けた農民に必要な支援を与えると述べた。農民の間でバッタ被害の不安が強まっていることを受けての発言だろう。
第18代インド首相 ナレンドラ・ダモダルダス・モディ(Narendra Damodardas Modi)
コロナ禍で経済が最悪期にあるなか、インド政府はバッタ禍への備えも求められている。インド西部の繁殖地で効果的な防除うまくいかなければ、食糧不足や食品価格の高騰、農業支援策による政府財政の悪化などを通じ、経済はさらに厳しい状況に追い込まれる。
隣国のパキスタンでは、作物被害が1年間で最大2.4兆パキスタン・ルピー(主要穀物の75%に相当)もの経済的損失が発生するとも予測されている。
6:南米被害
南米パラグアイで発生したミナミアメリカバッタの大群がアルゼンチンに到達しブラジル国境に接近している。
農業省はこれを受け、ブラジル南部の農業生産地域へ、バッタ大群の襲来に備えた植物検疫緊急事態宣言となる農業症例を6月25日に公布、即日施行した。
連邦政府は緊急事態宣言の対象期間内に、対策に当たる農務省による臨時雇用を認め、害虫を駆除のために未承認の農薬、その他関連品の一時的な輸入や生産許可の付与、流通や販売を許可することが可能となっている。
1㎢当たり4,000万匹のバッタの大群は6月24日現在、ブラジルとウルグアイ領内から130㎞地点に到達。
今後の進路は風向きや雨の影響次第と専門家はみている。
ブラジル当局は農薬散布のため、400機以上の航空機投入も検討。
今後、農業大国ブラジルでもバッタによる農作物や牧草への被害が拡大すれば、食糧・飼料・食肉供給に悪影響を与える可能性がある。
一方、農薬その他関連資材の需要が拡大すれば関連日本企業のビジネスに影響を与える可能性もありそうだ。
アルゼンチン政府の農畜産品衛生管理機構(SENASA)は6月23日、パラグアイで発生したミナミアメリカバッタの大群が5月21日にアルゼンチン領内に侵入と発表。
6月23日まで数が4,000万匹に拡大し、蝗害により同国北部に農作物の被害が出ている。
アルゼンチンでは2017年、2019年にも蝗害が発生している。
ミナミアメリカバッタは通常ブラジルやパラグアイの熱帯地域で生息。
SENASAは、最初にパラグアイ当局「国家植物・種子品質衛生サービス(SENAVE)から警告通知が届いたのが5月11日。
5月21日にアルゼンチン領内へ侵入し、北部都市フォルモーサまで到達。その後、一度パラグアイに戻ったものの、5月28日から再びアルゼンチン領内へ侵入し、すでに1,000㎞以上移動している。
6月23日時点では北部都市フォルモーサを通過し、パラナ川を横断。コリエンテス州に侵入し、エントレ・リオス州の近くまで来ている。
エントレ・リオス州の先には、同国の耕地の80%、牧草地・放牧地の60%を占めるパンパが広がるブエノスアイレス州がある。
アルゼンチンはすでに省庁横断での対策チームを結成。州政府とも協働し、監視と殺虫剤散布を開始。
バッタは日中だけでなく夜間も飛行を行う場合があり、場所を見失うこともある。
コリエンテス州は大きな被害は出ていないが、殺虫剤散布対策後も、バッタの数は以前高い水準を保っている。
今回、パラグアイで大量発生し、アルゼンチンでトウモロコシ、サトウキビ、キャッサバの栽培に甚大な被害をもたらしたバッタは、南米亜熱帯地域で一般的なバッタが、北西アルゼンチン、南東ボリビア、西パラグアイの砂漠・半砂漠地域で発生。
今後も世界的なバッタなどの昆虫による食糧被害は、大豪雨などとも相まって、さらに大群を形成していくと長期化する恐れがある。
7:食糧価格上昇
バッタによる農作物被害について、国連の食糧農業機関(FAO)は、このままでは地球の土地の約20%、世界人口の約10分の1がダメージを受けると警告。
東アフリカやアジアなどではすでに食糧価格が上昇。
南米でのバッタの被害がさらに拡大すれば、影響はより深刻なものとなる。
ブラジルやアルゼンチンは世界屈指の穀物輸出国で、2018年の全世界のトウモロコシ輸出額で、ブラジルは12.6%、アルゼンチンは12.3%を占め、約25%となる。
つまり、バッタ被害が拡大すれば、世界の食糧価格にも影響を及ぼす可能性が高い。
8:政治不安
北東アフリカではコロナウイルスとサバクトビバッタ、2019年末からの大雨による洪水のトリプルパンチにより生活苦に陥っており、政府への不満が表面化している。
エチオピアでは6月29日、政府を批判する同国有名歌手ハチャル・ハンデッサ氏(オロモ人)が首都アディスアベバで殺害された。
首都アディスアベバ
これに対して抗議デモが拡大。
デモに対し政府は、抗議デモの参加者80人以上を殺害しSNSを遮断した。
エチオピアは近年、順調に経済成長し、世界的にも注目されてきた。
しかし、民族間の対立は根深く、人口割合の多いオロモ人の政府不信が広がっている。
オロモ人(族)
FAOの調査報告では、エチオピアでは、サバクトビバッタの襲来で20万ヘクタール以上の農地被害が出ており、平均で食糧価格が50%上昇。
サバクトビバッタによる食糧危機からの社会不安は、民族対立をさらに深めている。
歴史上、食糧やエネルギーの不足による社会不安は、革命やクーデーターのきっかけになってきたことが多い。
エチオピアの政治危機は隣国や世界中に広がっていく可能性が高い。
②コロナウイルス
1:世界の状況
日本時間7月27日午前3時の時点で、世界全体での感染者数が1611万7992人で、死亡者数は、64万5699人に上る。
感染者の多い国は、アメリカで431万人、次いで順に、ブラジルが242万人、インドが139万人、ロシアが81.2万人、南アフリカが44.5万人となっている。
死亡者の多い国は、アメリカで14.9万人、次いで順にブラジルが8.7万1469人、イギリスが4万5752人、メキシコが4万3680人、イタリアが3万5107人となっている。
WHOは、コロナウイルスの1日の新規感染者が7月24日、世界全体で28万4196人となり、最多を更新した。
死者は9753人増加。国別の1日あたりの死者数は、多い順にペルーが3876人、ブラジルが1284人、米国が1074人となっている。
第8代 世界保健機関 事務局長 テドロス・アダノム・ゲブレイェソス( Tedros Adhanom Ghebreyesus)
これまでの米トランプ政権のコロナウイルスへの対策は、有効とはいえない。
45代目アメリカ合衆国大統領 ドナルド・ジョン・トランプ(Donald John Trump)
コロナウイルスは、世界中のあらゆる文化、宗教感、習慣などに変化を及ぼしている。人々の3密、ソーシャルディスタンス、マスク着用などにより、日常や仕事や学校など社会の在り方を根底から変えている。
アメリカではマスクの普及が進んでいないそうだ、これまでの歴史や文化認識により、顔を隠すマスクは犯罪者というマイナスイメージがあるのだそうだ。実際、マスクをつけた事で、犯罪も増加しているのだという。ちなみにトランプ大統領自体マスクを拒否している。
副大統領のペンス氏はマスクをつけ始めており、政府内が一枚岩ではないのではないか。
48代目アメリカ合衆国副大統領 マイケル・リチャード・ペンス(Michael Richard Pence)
現在、アメリカは感染者数、死亡者数を更新し続け、失業者や自殺者も増加している。そのなかで経済活動は再開させている。
経済はもちろん重要ではあるが、11月の大統領選を見据え経済への実績を示そうとしているのではないか、国家は国民の命と経済を天秤にかけているとしか思えない。
そんなトランプ政権が推し進める、アメリカファースト、根強い白人至上主義などへの差別主義が、「Black Lives Matter」活動へと繋がってしまい、デモ隊によるシアトルの街を占拠するという混乱のキッカケとなった。
シアトル暴動鎮圧の状況
社会不安はブラジルなどポピュリズム派のリーダーの国で、アメリカと同様に国民の命より経済優先の状況がみられる。
第38代大統領 ジャイール・メシアス・ボルソナーロ(Jair Messias Bolsonaro)
ブラジル保健省の発表のなかで、保健衛生に関する情報運用センター(NOIS)が、死亡または退院して治療が終了した感染者3万人のデータを解析した結果、人種や学歴による死亡率の違いが如実に表れたと述べた。
これらの調査からは、人種や学歴の差、所得や衛生施設、医療システムへのアクセスの良否が生死を分け得る事、黒人で学歴が低い上、密閉、密集、密接の3密が起き易いファヴェーラ(スラム街)在住だと死亡率が高い事などが判明した。
コロナウイルスの経済への打撃が、人々の抱える不満を、社会に膿のようにどんどん吐き出し始めていて、さらなる社会混乱が加速するのではないだろうか。
2:日本の状況
現在の日本国内の感染者数は、7月26日時点で、2万9,684人、死亡者数は、996人に上る。(クルーズ船含む数値、感染者数2万2703人、死亡者数996人)
5月25日に緊急事態宣言が解除され、それから徐々に感染者数が増え、6月24日の94人を皮切りに、感染者数が全国で第2波のように感染拡大を始めている。
第1波との違いは、①PCR検査数、②感染者の病院や受け入れ態勢、③社会的なコロナウイルスへの日常的な衛生管理、④無症状者の多さ、⑤コロナウイルス感染者への偏った対応による病院経営の悪化、⑥看護師などの離職増加、⑦倒産数増加、⑧密を防ぐためソーシャルディスタンスを守るため、海外受刑者の退所などがある。
PCR検査数は、厚労省発表で、2月18日~7月8日までの国内における実施件数は、767,314件。
アメリカでは現在、ニューヨーク州は、1日に約6万6000件実施しているPCR・抗体セットとなった検査体制だ。クリニックだけで毎日100〜150人を検査実施している。
ワシントン州では、累計検査数 686,005実施。
これをみるだけでも、いかに日本の検査数が少ないかが分かる。これは、陽性者が多くいる事の可能性を同時に示唆する。
政府がPCR検査数を増加しないのは、感染者が増加する事で、再度、緊急事態宣言を発令し、さらなる経済の打撃や、医療崩壊を危惧しているのかもしれない。
しかし、感染者が街中にいるような可能性があるなかで、検査数を増加しない事が長期的に危機を防ぐことになるだろうか。
高齢者、基礎疾患を抱えた方、独居の方などが診断を受けないまま死亡すれば、ウイルスを葬儀場まで持ち込みさらに感染を拡大させる。しかもコロナウイルスの死亡者数にはカウントされない。つまり実態がつかめない状態に陥る。
日本を含む各国の専門家239人が、コロナウイルスを空気感染の一種だとし、これを認めていないWHO(世界保健機関)にガイドラインの改定を求めたとしている。
WHOはコロナウイルスは、せきやなどの飛沫感染か、ウイルスが付着したものの表面を触り、鼻や口から取り込まれる接触感染が主要な感染経路としている。
一方、書簡を出した専門家は、飛沫が微細になると長く(20分程度)空気中を漂い、遠くまで運ばれると指摘。中国のレストランで離れたテーブル同士の客が感染した事例などは空気感染が疑われるとして「予防的な措置が取られるべきだ」と主張。
接触感染と思われていたウイルスが、飛沫感染であれば現在の感染爆発もさらに加速することを示唆しているともとれる。
7月22日東京の感染者300人以上のなか、GO TOキャンペーンを政府は断行。
さらに、16日の参議院予算委員会では、東京大学先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏から「ゲノム配列の報告を見ると、東京型・埼玉型になってきている」との新たな見解が示された。
「東京の中に今エピセンター(震源地)が形成されつつある。エピセンター化してしまったら、劇場も電車も危険になってしまう。これを国の総力をあげて止めないと、ミラノ、ニューヨークの二の舞になる」と懸念を示した。
東京大学先端科学技術研究センター名誉教授:児玉龍彦 氏
③自然災害
現在、世界中で異常気象が各地で起きている。
日本や中国の豪雨、ロシアやオーストラリアの森林火災など世界中に巻き起こっている。
ロシアの自然危機
この図で①のロシアで見られる高温化は、ロシアの極東のサハ共和国に位置する人口1311人の都市、ベルホヤンスクで記録的高温38度に見まわれている。
真冬ではマイナス65度になる。そこで森林火災が相次いでいる。
さらに、世界で最も北に位置する10万人都市ロシア・クラスノヤルスク地方の都市、ノリリスクでは、ニッケル生産の世界最大手であるノリリスク・ニッケルが運営する世界有数のニッケル鉱山がある。
以前火力発電所から2万トンの大量のディーゼルが流失事故が発生している。
そこの廃棄物処理施設で火災が発生している。
ノリリスクは永久凍土の上に立っている街であり、この火災そのものが永久凍土の融解に影響を与えている。
さらに、火災から発生した煙による温かい煙が東部に流れ込みの永久凍土の融解に影響を与えている。
ソビエト連邦時代の1986年4月に、最大レベル7(福島第一原発事故も指定)の原発事故が起きたウクライナキエフ州の北部に位置する無人都市(事故以前、人口13,414人)チェルノブイリの立ち入り禁止区域でも森林火災が多発している。
ノリリスク、ベルホヤンスクなどのシベリアでの森林火災が永久凍土の融解に多大な影響をもたらしている。
永久凍土とは0度以下に保たれている土地を指す。
その土の中に何万年、何十万年前の生き物の死骸やウイルス、菌類が眠っており、凍っている事で、地上に放出されていない状態である。
その永久凍土が融解してきているのである。
ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、以下のように述べている。
ロシアの石油およびガス会社が、地球を暖め、永久凍土を溶かす炭化水素を送り続けるようにするためには、永久凍土が溶けるのを止めるために迅速に環境に配慮する必要があります。
第4代ロシア連邦大統領 ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン(Vladimir Vladimirovich Putin)
さらに永久凍土は、1965-75年と比較して、2015-25年までに耐荷重能力が50-75%低下する可能性があるとされ、広範囲での地盤沈下の恐れがある。
グラフのように基礎耐久性が20%低下している。
この永久凍土の融解で、石油、ガス、レアメタルなどの資源がとれるようになり、経済成長をさらに促していくメリットもある。さらに北極海航路が通れるようになり物流も盛んになるという事もある。
しかし、現在の石油や天然ガスの炭化水素の施設に、多大な影響を及ぼすという事をプーチン大統領は信じ始め、ロシアが力を入れてきた北極海開発を控えていかないといけないと考えているそうだ。
それは、多発している山火事、気温上昇による永久凍土融解による地盤沈下で建物倒壊の恐れ(ノリリスクニッケルの貯蔵庫でのディーゼル流失は燃料貯蔵庫の地盤沈下によるもの)があり、一説には、今後10年以内にシベリアの建物が7割倒壊するといわれており、被害は甚大なものになってしまう。
アジアでの大豪雨
中国の長江 中・下流域では、6月中旬以降、高気圧の縁辺を回る暖かく湿った気流が持続的に流入し、梅雨前線の活動が活発になったことにより、6月の降水量が過去24年間で1999年に次いで2番目に多くなった。
中国では、6月の大雨による死者・行方不明者の合計が100人を超えたと伝えられている(7月3日時点、中国政府の情報による)。
長江 中・下流域では、2020年6月の積算降水量が300㎜を超えた地点が多く見られ、湖北、宜昌では508㎜を観測し、1982年以降、6月としては1983年の292㎜を上回り最も多くなっている(平年比約350%)。
この中国の長期間続く大豪雨は、世界最大のダムである水力発電ダム「三峡ダム」の崩壊危機の恐れがあると危惧されている。
水力発電ダム「三峡ダム」
三峡ダム 変形状況(2009-2018)
三峡ダムは1993年、当時の李鵬(リー・ポン)首相により、水利専門家たちの「砂礫が堆積し、洪水を助長する」という反対意見を無視し、建設された世界最大の落水式ダムだ。プロジェクトの責任者である李鵬は死去している。
70万キロワットの発電機32基を備え、総発電量は2250万キロワット。
長江の中流域の中でも特に水流が激しい「三峡」と呼ばれる峡谷地区に2009年に竣工。
建設中から李鵬派官僚による「汚職の温床」と化し、手抜き工事も起こった。
第7代全国人民代表大会常務委員長 李 鵬(リー・ポン1928年10月20日 - 2019年7月22日)
2008年に試験貯水が開始されると、がけ崩れ、地滑り、地盤の変形が生じ、ダムの堤体に約1万カ所の亀裂が見つかった。
貯水池にためた膨大な水が蒸発して、濃霧、長雨、豪雨が頻発。
そして水利専門家たちの指摘どおり、上流から押し寄せる大量の砂礫が貯水池にたまり、ダムの水門を詰まらせ、アオコが発生し、ヘドロや雑草、ごみと交じって5万平方メートルに広がった。
もはや中国政府も技術者も根本的な解決策を見いだせず、お手上げ状態だ。そこへ、今年の豪雨と洪水だ。
6月22日、長江上流の重慶市では豪雨により、がけ崩れ、鉄砲水、道路の冠水、家屋浸水、高速道路の崩壊などが発生。
市水利局は1940年以来初めて最高レベルの洪水警報を発令し、4万人の市民が避難した。
29日には三峡ダムの貯水池の水位が最高警戒水位を2メートル超え、147メートルに上昇。
そのため、三峡ダムを含む4つのダムで一斉に放水を開始した。
気象当局によると、今夏は大雨や豪雨が予測され、洪水被害はさらに増大すると見込まれている。
中国水利省の葉建春(イエ・チエンチュン)次官は6月11日、記者会見で、
「水害防止対策により今は建国以来の最大の洪水を防御できているが、想定以上の洪水が発生すれば、防御能力を超えた『ブラックスワン』の可能性もあり得る」と口にした。
ブラックスワンとは、「あり得ないことが起こり、非常に強い衝撃を与える」という意味で、予測できない金融危機や自然災害を表すときによく使われる。そのブラックスワンというワードが三峡ダムにも使われた。
環境保護を無視し、フィージビリティースタディー(事業の実現可能性を事前に調査すること)も行われず、汚職による手抜き工事で構造上問題があった。
決壊すれば、約30億立方メートルの濁流が下流域を襲い、4億人の被災者が出ると試算されている。
安徽省、江西省、浙江省などの穀倉地帯は水浸しになり、上海市は都市機能が壊滅し、市民の飲み水すら枯渇する。上海には外資系企業が2万2000社あり、経済的なダメージ次第では世界中が損害を被る。
上海の「水没」で、経済が回復するまで10~20年はかかるかもしれない。
上海の先には、東シナ海をはさみ、日本の九州、沖縄がある。
そこへ上海から流出した大量の汚水、残骸などが流れ出て水質汚染の影響も考えられ、津波、漁業やリゾートへの影響は甚大なものになる可能性が高い。
三峡ダムの放水
上記で述べてきたように、現在、日本で猛威を振るっている大雨は、中国では、6月から長期間継続しており、その梅雨前線が日本に流れ込んできているような形になっている。天気図からもはっきり表れている。
海水温上昇の著しいインド洋
海水温の上昇が顕著なのがインド洋である。
インド洋は、北にユーラシア大陸があり、極域、亜極域の海から遮断され温まりやすい。海表面温度はこの50年間で0.6~0.7度も上昇。
海面水温が28℃を超える海域の上空では、現在大豪雨で問題となっている積雲活動が活発になる。
インド洋の海面温度はインドネシア周辺海域の積雲活動が活発なために、東高西低が常態であるが、これが時に西側の海水温上昇により逆転することがある。
この現象は1994年の日本の猛暑を解析し発見されたもので、ダイポールモード(双極子)現象と呼ばれ、東西の大気海洋構造が逆転した現象もあるので、最近は1994年の現象を正のダイポールモード現象と呼ぶ。
ダイポールモード現象は太平洋のエルニーニョ現象やラニーニャ現象と同様に世界各地に異常気象をもたらす。
中国、日本での大豪雨災害、はインド洋の影響を大きく受けているといえるのではないか。
日本だけでなく、アジアの状況も観察しながら天気の予測を行っていく必要がある。
大豪雨や、サイクロンにより乾燥地帯に十分な雨が降り、雑草が生い茂り、その土壌にバッタが大量に卵を産み、雑草を餌にしながら、ものすごい速度で、繁殖している。
現在の異常気象と、昆虫による災害は切り離して考えてはいけない問題なのである。
④紛争 戦争
1:国家間対立 中国VSインド
現在の世界の混乱は、国家間の緊張をさらに高めてる。
その影響が大きいのが、中国とインドや、イエメンとサウジアラビアの対立である。
隣国である中国とインドは、領土や勢力圏の争いがあるが、6月15日に両軍がインド北部ラダック地方の国境にあるガルワン渓谷で衝突し、インド兵20人が死亡し中国兵にも死傷者を出した。
中国への嫌悪感を示すインド人
両国の衝突で死者が出たのは1975年以来、45年ぶり。両国とも対話の姿勢見られるも、領土問題で譲歩する兆しはなく、緊張が高まる可能性が高い。
インドのモディ首相は、「兵士の犠牲は無駄にしない」と2分間の黙とう行った。「インドは平和を求めている。ただ刺激されれば適切な対応を取る」とも強調した。
第18代インド首相 ナレンドラ・ダモダルダス・モディ(Narendra Damodardas Modi)
インド外務省は声明で「中国と緊張緩和のために会談してきたが、中国側が合意を破った」と発表。
インド軍は「領土と主権を断固として守る」と主張している。
中国外務省の王毅(ワン・イー)外相とインドのジャイシャンカル外相は、電話協議を行い、情勢を沈静化。地域の平和と安定を守ることで一致。
国務委員・11代目中華人民共和国外交部長 王毅(ワン・イー おうき)
第2次モディ内閣 外務大臣 スブラマニヤム・ジャイシャンカル( Subrahmanyam Jaishankar)
人民解放軍の解放軍報は付紙面で衝突を発表していない。
中国は、トランプ政権からの貿易摩擦などの圧力が増すなか、インドとの国家間の対立で問題を増やす事を避けたいとみられる。
しかし、両国は領土問題で譲歩する姿勢はみられない。インドも経済成長がコロナウイルスやサバクトビバッタの影響で鈍るなか、外交で中国に対して弱腰の姿勢を見せられない現状がある。
トランプ大統領は5月27日、「両国の国境紛争を仲介する用意がある」と表明。
インドとの関係を深め、対中包囲網を広げる狙いがあるとみられる。しかし、両国とも米国の仲介に否定的である。
今後、両国間の動向は、習近平国家主席の人民解放軍への統率に掛かっている。習近平は、まだ、人民解放軍を完全に掌握していないと見られており、習近平の意図しない形で、さらにインド政府との衝突が激化する恐れをはらんでいる。
それは、人民解放軍が推し進める、日本の尖閣諸島問題(尖閣諸島へのキャベツ戦略での進行は100日を超え連日実行されている)や、フィリピンやベトナムとの南沙諸島実効支配問題からも見て取れる。
中国のグローバル・タイムズ紙は、「中国はインドのバッタ対策を支援する力がある」「支援はインド側が頼まなければならない」と掲載。
支援の要請は中国政府の基本方針で、外交戦略である。コロナウイルス禍でのマスク外交も同様。
サバクトビバッタによる対応をめぐり、中国とインドの関係もさらに溝を広げている。
2:国家間対立 泥沼化するイエメン内戦(サウジアラビア&米国VSイラン)
先日、またもやサウジアラビアにミサイルが撃ち込まれた。
サウジ政府は、国の南部のイエメン国境に面する、ナジュラーン州ナジュラーン市とジーザーン州 ジーザーン市2都市を標的としたイエメン反政府勢力 フーシ派から撃たれた3発のミサイルを迎撃したと発表。
ジーザーン市には軍事施設もあり、フーシ派がイエメン首都のサヌア近辺から打ち込んだとされている。
サウジ国営テレビの報道
サウジ主導の連合軍は、23日未明、イエメンのイスラム教シーア派武装組織「フーシ派」がサウジの2都市に向け発射した弾道ミサイル3発を迎撃したと発表。
連合軍報道官の声明
サウジのナジュラーンとジーザーンに向け発射されたミサイルは、市民を標的にしていたと説明。連合軍は22日、爆発物を載せてサウジに向かっていたドローン8基を迎撃したと発表。これらのドローンもイランが支援するフーシ派が飛ばしたものと説明した。
また、朝日新聞は、ナジュラーン市やジーザーン市に加えて、サウジアラビアの首都リアドにも弾道ミサイルが撃ち込まれ、そのミサイルも迎撃したと報じている。
上記の通り、イエメン内戦は激化している。
内戦が激化する中、サウジアラビアやイラン、イエメンでもコロナウイルスの感染者数が毎日3000人~4000人出ている。
港湾都市ジザーンの重要性
今回、狙われた都市ナジュラーンとジーザーンは、イエメン国境に面し、両都市は約400㎞の距離に位置し、イエメンの首都サヌアから約1000㎞の距離に位置している。
ジザーンは紅海沿岸に面し、サウジアラビアのもう一つの港湾都市であるジェッダに次いで、コンテナ船などが往来する港湾都市の要所である。
紅海の対岸には、スーダンの大きな港湾都市であるポートスーダンがある。
紅海に面する、港湾都市は、スエズ運河に入る前の荷物の積み替えや、世界中に輸出するなどの物流の拠点となる場所になっている。
この港湾都市に注目しているのは、中国共産党である。
中国は、ジザーンの港湾整備や工業団地の整備開発に対して、チャイナマネーを大量に投資している。
サウジアラビアから見た中国は、石油を大量に購入してもらえる、良い顧客である。
紅海を超えるとヨーロッパ、手前がアジアとなっており、まさにヨーロッパとアジアの中継地点である。
その港湾都市で物を作り、輸出すると、世界中に物を輸出しやすいというメリットがあり、そのため中国はサウジアラビアに投資している。
イエメンの現状
イエメン国内も、内戦の被害状況に覆いかぶさるようにコロナウイルスの感染拡大が深刻だ。
イエメンの南に位置する都市アデンでは、病院が狙われている。
国境なき医師団のHPに被害状況が報告されていて、イエメンのコロナウイルスによる死亡者数が毎日10人程になっており、入院患者の4-5割が死亡しているそうだ。
国境なき医師団のDrによると、水、食糧の不足に加えて、医療物資や酸素吸入器が圧倒的に不足しており、医療従事者も不足している状況であり、そこにコロナウイルスやコレラ感染患者、イエメン内戦の負傷者が毎日多く運ばれてくるが、何も対応できないまま、多くの人が死んでいくのを目の当たりにして、無力感に溢れているそうだ。
そのような状況の中、病院が空爆で狙われている現状である。
イエメン北部のハッジャ県のアブス病院が空爆被害を受け、スタッフや入院患者が合計19人が死亡した。
そこへ、上記で述べた、サウジアラビアへの報復ミサイルを撃ち込んだという流れだ。
サウジアラビア政府は、それに対する報復措置で、さらに空爆を行う可能性が高く、そのような負のループの応酬が続いている。
原油価格暴落を受け揺れているサウジアラビア経済。
1バレル80ドルで組まれた国家予算は、現在の原油価格は明らかに危機的状況であり、石油に依存しない経済の多角化と財政建て直しが急務となっている。
2030年を目標に組み立てられたサウジアラビアの国家社会経済計画「サウジアラビアビジョン2030」、この計画の再編成とさらにスピード感を増した目標の達成が迫られている。
そしてサウジ財政を逼迫しているのが増大する軍事費。
対イエメン内戦介入、対イラン強硬姿勢、対カタール断交、サウジアラビアのムハンマド皇太子によるこの3つの強硬姿勢とアメリカとの関係がサウジアラビアをさらに焦らせる。
日本にとって最大の石油輸入国サウジアラビアの動向と原油価格の大暴落は対岸の火事ではない。日本にとってもとても重大な問題なのである。
今回、まとめてみた世界情勢だが、前に投稿した「予測する危機①」の状況をはるかに凌ぐ勢いで世界は混迷を極めている。
日本を含め、世界情勢を今後も注視していきたい。
今後も、役に立つような情報を提供できるよう頑張って参ります。よろしくお願いいたします💛