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よいチームはどうやってできる?

【あなたのチームは、どんなチーム文化を持っていますか?】

0. はじめに

2019年11月にJapan Team Oncology Program、JTOP(https://www.teamoncology.com/aboutus/jtop)に参加し、同年のThe 3rd Team Science Oncology Workshopで幸運にも選抜メンバーに入れていただける機会に恵まれました。以降ワークショップの運営に関わり、米国MD Anderson Cancer CenterのユニークであたたかいMentorやMenteeとコラボレーションを継続し様々な学びの機会を享受してきました。

当初私は、選考されたらタダで米国ナンバーワンのがんセンターに1か月招待される、そんなラッキーなことはない、くらいの軽い気持ちで参加していました。しかしJTOPでの活動が1年を超え、2020年度のワークショップを進めている中、ここで得られている学びが類をみない大変ユニークなものであると気づきました。少しでも多くの方に、その入り口に触れていただきたいと感じたので、noteを書くことにしました。

1-0. チームサイエンス総論

1-1. 「チームワークって大事だよね」を超える
チームワークが大事であることは言うまでもありません。重要なのは思考をそこで停止させず、Team Scienceを理解するというアカデミック領域へ昇華させ、習得・実践していくことにあります。

1-2. チームはなんだっていい
病棟チーム、COVIDチームや開業医の診療所チーム、その日の当直チームなどの小診療単位、ラボメンバー、医局、多施設で共通のMission/Visionを展開するチーム、プロジェクトチーム、新規ビジネスモデルを展開するベンチャーチーム etc.
ありとあらゆる規模、ターンオーバータイム、目的のチームがあります。Team Scienceの概念はすべてのチームにあてはまります。あなたが意識高い系のキャリアの方でも、意識高くない系のキャリアの方でも、複数のチームに所属することになります。どこであっても、居心地のよいチームをつくって結果を出すことができれば、それ以上のことはないですよね?


1-3. 企業CEOチームやMBA学生チームが、幼稚園児チームに負ける!?
Marshmallow Challengeというものがあります。初対面の複数名が、パスタ、ひも、テープを使ってあのふわふわでおいしいマシュマロをどれくらい高い位置にくっつけた構造物を制限時間内に作れるか、競うものです。

イメージはこんな感じです。写真は2019年11月に開催されたThe 3rd Team Science Oncology Workshopのものです。

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(https://www.teamoncology.com/seminar/workshop/3rd_workshop/top)

協会もあるくらいメジャーなチャレンジで、これまで企業の人材育成ワークショップでも多彩に展開されてきました。興味深いことに、幼稚園児チームは容易に企業CEOチームやMBA学生チームに勝ってしまいます。なぜでしょう。グラフをご覧ください。

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(https://hbr.org/2014/12/innovation-leadership-lessons-from-the-marshmallow-challenge)
そこにはチーム文化など様々な興味深い背景の違いがありました。幼稚園児チームから私たちは何を学ぶことができるのでしょうか。
関心のある方は以下のTED talkをご覧ください。
(https://www.ted.com/talks/tom_wujec_build_a_tower_build_a_team)

1-4. 裏庭には二羽庭には二羽ニワトリがいる(ウラニワニワニワニワニワニワニワトリガイル)!?
続いて、Margaret Hefferman氏(起業家、CEO、作家)のTED Talkです。

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(https://www.ted.com/talks/margaret_heffernan_forget_the_pecking_order_at_work)
ある学者が、ニワトリの卵の生産性を向上するための研究をしました。普通の群れを普通に育てた一方で、卵の生産が著しくよいニワトリ=Super Chickenを群れの中から選出し、Super Chickenチームをつくりました。
普通のニワトリチームは順調に卵を産み続けました。
Super Chicken Teamは?、、攻撃性が高く、数羽を残してお互いを殺してしまったのです。
過去50年、我々は企業チームや研究チームなどありとあらゆるチームで優秀なひとを選出し生産性を高めようとするSuper Chicken Modelを試みてきました。結果として、お互いに攻撃性が高かったり、他者を落としめることでしか成功できない、チームとしては機能不全に陥るケースが散見されてきました。
MITの研究で、様々な構成のチームに課題を課し、生産性の高いチームの特性が探索されました。興味深いことに、課題の到達率が最も高いチームは、超優秀なスーパースターが数人いるチームではなく、お互いを尊重し多様性を認め、女性も多く、全員に機会を与える、スーパースターのいないチームでした。

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Marshmallow ChallengeとSuper Chicken Modelは、私たちに多くのことを語りかけてきます。

2-0. チームサイエンス各論

2-1. Team Dynamics=チームの流動性を理解する
Tuckman Modelというチームの流動性を示すものがあります。

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(http://www.mspguide.org/tool/tuckman-forming-norming-storming-performing)
Forming:チームの創成期。目的も明確でなく、お互いを探っている時期。
Storming:問題を提起し合意に向けて対立する時期。
Norming:徐々に合意が得られ、役割も明確になってくる時期。
Performing:明確な目標と合意のもと、チームが高いパフォーマンスを示す時期。
Adjourning:タスクを修了し、満足が得られ、お互いをたたえる時期。

現在の所属チームがどのフェーズにいるかを把握し、時期に応じた対応をしていくことが重要です。チームは生き物のように流動的に動いていきます。Performing期が長続きしなかったり、問題提起がなされStorming期に戻ったり、メンバーが入れ替わってForming期に戻ったり、などがあります。時期に合っていない対応をすると、チームは空回りしてしまいます。空回りの例を示します。
例1)チームメンバーが入れ替わったのに(Forming期)、お互いの紹介や合意形成をおろそかにしてハイアウトプットを目指し続ける(Performing期)。
例2)ハイアウトプットを期待している時期(Performing期)に問題提起がなされたのに(Storming期)、先を急いで取り合わない

2-2. 自分を知る、相手を知る
自分と相手を知ることが、チームのForming期に必要です。
・Core Value
 個々のチーム員はどういた価値観を持っているか?
・Myers-Briggs Type Indicator (MBTI)
 個々のチーム員はどういったインプット/アウトプットスタイルをもっているのか?インプット/アウトプットスタイルの違いは個性であって、パフォーマンスの優劣ではありません。(https://www.mbti.or.jp/what/)

ご覧のように、ジブリキャラクターの中でも多様なMBTIがあることがわかります。どのMBTIでも輝けることがわかります。

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(http://m4fqr9ys6jbetjb.hatenablog.com/entry/2018/02/18/202533)

・個々のMission / Vision
個々のチーム員がどういったキャリアを展開しようとしているかも、自分と相手を理解することに重要です。

2-3. Team Strategy
・Team Mission / Vision
 チームはVisionとMissionをシェアすることが重要とされています。
・Playing to Impact
“Playing to Win”という本に基づいています。ある企業CEOのとった成長戦略とその成功が紹介されています(https://www.amazon.co.jp/Playing-Win-Strategy-Really-Works/dp/142218739X)。医療者のチームにもあてはめることができます。

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Shared Mission and Visionに基づいて、どのようなフィールドでチームはインパクトをしたいのかを定めます。ビジネスでいうと勝負する市場を決めることだそうですが、医療界のチームでもあてはまります。市場やImpact規模が大きい必要はなく、チームの戦略の位置づけを知ることが重要です。
・Goal Management
SMART goalsの設定など、様々なやり方があります。

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(https://www.thebalancesmb.com/smart-goal-examples-2951827)

いずれも、チーム内ではPerforming期に向けてForming期→Storming期→Norming期を経る必要があるます。

2-4. Psychological Safety and Social Sensitivity=精神的安全性と
社会的感受性
2-5. Diversity, Inclusion, and Unconscious Bias=多様性の尊重と見えない
偏見をなくす

チーム内にはメジャーな集団とマイノリティーの集団が混在します。女性、移民、チーム内の公用語が第一言語ではない、経験年数が浅い、内向的な性格、少数派の意見を提示している、医師以外の医療職、などは多様性の中ではやや尊重されにくい立場です。そのような立場にSocial Sensitivityの高い態度をとり、精神的安全性を担保するチーム文化をつくることが、チーム内の化学反応には重要でハイパフォーマンスにつながります。

医療界でなぜPsychological Safetyが重要なのか?
Amy Edmondson氏(Harvard Business SchoolのPsychological Safetyの権威)が解説しています。

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(https://www.youtube.com/watch?v=LF1253YhEc8 )


2-6. チームサイエンス向上のメリット
Team Scienceのレベルを向上させることは、多くの人にとってメリットがあるようです。
・チームパフォーマンスの向上:
チーム員の精神的安全や多様性の尊重が守られることで、ブレインストーミングや質疑応答も活発になる、イノベーションが生まれる余地が発生しやすくなる、などといった点があります。若手チーム員の学習プロセスの向上にもつながります。
・チームの安全性の向上:
ミスにつながりそうな事象を早期に指摘しやすくなります。自信がないことを指摘するのは勇気や労力が必要なものです。
・チーム員の満足度の向上や離職率の低下:
所属感の向上が大きいと考えられます。楽しく日々活動できることは、誰にとってもありがたいことです。

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全てのエッセンスをここで紹介することは困難ですが、私見で重要と思う点を紹介しました。


3-0. JTOPでの活動を振り返って


Japan Team Oncology Programはがん領域を共通言語にしながらも、内容は医療をこえたユニバーサルなものでした。企業などではTeam Scienceは徐々に浸透しつつあるものの、日本の医療界ではほとんど浸透していないアカデミックフィールドではないでしょうか。

その中で、JTOPは医療界でTeam Scienceを習得するためのOff the Job Trainingを提供する唯一のプログラムであり、MD Anderson Cancer Centerや環太平洋エリアとコラボレーションする大変ユニークな活動として今後も関わっていきたいと思っています。

まだ学びの入り口がようやく見えてきたところで偉そうなことは全く言えませんが、シェアさせていただきましてありがとうございます。

【あなたのチームは、どんなチーム文化を持っていますか?】

※JTOPの皆様、間違いがあればご指摘ください。


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