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空の粒を集めて君へ #2【青春小説】

#1 前回のあらすじ
 高校生になったハルト(佐久間 春人)とタイチ(夏川 太地)は、
生まれた時からの幼馴染で親友。クラスも同じになったことで喜ぶ2人だが、同じクラスに海外からきた女の子がいると知り、驚きながらもクラス表からそれらしき名前を探そうとするが見つからない。入学式が終わり、同じく幼馴染のミオリ(東堂 美織)とタイチの母えみこさん(夏川 恵美子)が二人を呼び、写真を撮る事に。そこには見知らぬ女の子が1人。名前は「ユキ」。
「個性的な4人が歩むそれぞれの人生」のお話。


 ーーーーーーー。
「ーーーーちゃん。。ーーーにーちゃん!」
「おにーちゃん!」
・・・朝は苦手だ。布団から出たくない。
いっそこのまま布団と同化してフワフワしていたい。
「今日から高校行くんでしょ!遅刻するよ!」
妹が下の階から叫んでいる。
母が亡くなってからというもの、妹はしっかり者になった。
あれから12年…。
なんだかんだあったが、我が家は変わらず平和だ。
「ご飯置いてるから!後、父さん起こしてから家出てね!!」
「はいよ〜。…ん〜、、まぶし。」
窓を開けると朝日と潮の匂いが部屋に入り込んでくる。
朝は苦手だ。でも、この感じは好きだ。
天気の良い日は吸い込む空気が軽い。そんな気がするから。
ふと2階の窓から下を見ると、見覚えのある顔がそこにいた。

「…ユキちゃん?」

あちらも気づいたのか、慌てて物陰に隠れた。
俺は急いで下に降り、外に出て声をかけた。
「お、おはよう。どうしたの?てか、何してるの?」
「…。」
俯きながら、ユキは黙った。
「…ちょっと待ってて!5分で支度するから!」
何があったか聞きたいけど、高校初日から遅刻するのはまずい。
また慌てて家の中に戻り 、身支度に取り掛かった。
「あ、おはよう母さん。」
母さんの写真に手を合わせるのは朝の日課。

ーーガチャ。

俺がバタバタ家を走りまくったせいか、父さんが起きてきた。
「おはよ〜。ハル、今日から高校か?」
「おはよう父さん!そう、ちょっと急いでるから!
 ご飯俺の分も食べちゃって!」
そういう俺を見て、父さんはクスッと笑っていた。
「ん?どっかおかしい?」
「…いや。何でもないよ。」
そう言うと、俺の両肩を大きな手で掴んで言ってくれた。

「入学おめでとう、ハル。」

「…うん、ありがと!行ってきます!」
そう言って飛び出していく俺を、父さんは優しい笑顔で見送った。

「お待たせ!行こっか!」
俺の呼びかけにユキは小さく頷き、二人で歩き始めた。

 俺達が今日から通う、「潮谷高等学校」は町の高台にある。
何でも昔、高波が起きてグランドが海になってしまったことがあるらしい。
それから高校を今の高台に移した。と、父さんから聞いた。
高校からは海と山、後は町が少し見えるくらい。
いつどこでも潮風を感じ、山の季節を感じることができる。
自然に囲まれた町。良く言えばだけど。

俺からしたら何もない田舎。
人も少ない、遊ぶところもない。
唯一遊べるとしたら、町の中心にある商店街ぐらい。
子供達の遊び場はそのあたりしかない。
まぁそれも都会っ子からしたらいい所なのかもしれない。

二人並んで歩いていると、突然ユキが話しかけてきた。
「…名前。」
「え?名前?…あ、俺の?」
「うん。」
相変わらず無表情だけど、興味は持ってくれているみたいだ。
「俺はハルト。この間はユキの名前聞いたっきりだったもんな」
この時、ユキは少し表情が変わった。ように見えただけかもしれない…。
「…。」
沈黙の時間。何とも気まずい。
「えっと…、ユキは何で俺の家の前にいたの?」
何とか話をしようと声をかけてみた。
この話題は、間を置いてから聞こうと思ってたけど。
自分でもびっくりするほど話題が浮かばなかった。

「…道迷ったから。」

「え…。あ、そうだったんだ。
 でもよく俺の家だってわかったね。朝からびっくりしたよ。笑」
「…。」
俺の問いかけに、ユキはまた無表情に戻っていた。
気まずい空気の中、いつの間にか高校近くまで来ていた。

「ハルトー!」

後ろから自転車で追いついてきたミオリが声をかけてきた。
「ユキちゃんも一緒?おはようユキちゃん!」
相変わらずの明るさでユキに話しかけるが、ユキは小さく頷くだけだった。
「ミオリ、高校生になっても相変わらずだな。」
「まあね〜。昨日から楽しみで眠れなかったよ。笑」
そう言うとミオリは、自転車から軽快に飛び降りて横に並んで歩き出した。
明るい性格とゆるふわな風貌、それに制服きたJKときたら
都会でも今すぐモテそうな感じだ。
「それにしても朝からびっくりした!ユキちゃんと一緒に登校してるなんて!ハルトも意外とやるねぇ〜。笑」
茶化すミオリに慌ててユキを見ると、やっぱり無表情だった。
「ちげーよ、たまたま家の前で会ったから一緒になっただけで。」
何で言い訳してるのか、俺自身もよく分からないけど。
「はいはい、ユキちゃん。ハルトに変な事されたらすぐに言ってね!」
ミオリはそう言うと自転車でまた走り去っていった。
ホッとした俺は慌ててユキを見ると、何故かユキは立ち止まっていた。

「どうしたの?」

状況が理解出来ずにいた俺に、ユキは言った。

「…変わらないね。」

「…え?変わらない?…俺のこと?」
どういうことか全然分からない俺を余所目に、
ユキは一人俺を置いて歩き出した。
「初対面…だよな?」
訳が分からず考え込んでいた俺の背中に何かがのし掛かった。
まるでクマでものし掛かってきたかのようで一瞬フラついたが、
新しい制服を汚すまいと、何とか耐えてみせた。
「おう、ハルト!何してんだよ!遅刻すんぞ!」
タイチだった。まぁ何となくわかってたけど。

引っ張られながらも、
この釈然としないこの気持ちを一体どうしたらいいのか。


俺はユキのことが何も分からないまま、高校生活初日を迎えた…。


空の粒を集めて君へ #2
#3につづく…

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「誰の為の。」毎週水曜日 更新予定
「ADHD〜勇気を持つことの意味〜」毎週木曜日 更新予定
「あしたのわたしは」毎週金曜日 更新予定

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