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#33「Fake」4年 荒木祐作

ここまでの3年間、高校時代に思い描いていた私の大学サッカーでのビジョンとはかけ離れている。勢いやノリでやってきたサッカーが全く通用しない。ピンチだ。ここまでのピンチは初めてだ。

中学校の頃、とにかくサッカーを観戦するのが好きだった。プレーするよりも好きだったかもしれないぐらい。毎朝、テレビの番組表を新聞で見てサッカーの放送があれば録画して全試合観ていた。

2016年、中学2年生の時。天皇杯で関西学院大学体育会サッカー部がアルビレックス新潟と対戦していた。当時、この試合を見る前までの私は大学サッカーに一切の魅力を感じていなかった。しかし、この試合から思いは一変する。

鮮明には覚えていないが、あきらかに熱量が違った。躍動感が凄かった。壮絶な打ち合いの中で、知らぬ間に関学サッカー部を応援していた。とにかくカッコよかった。
そこから年を重ねるごとに関学サッカー部への意識は強くなり大きな期待を胸に入部を決意した。

高校時代には関学サッカー部と2回、練習試合をし、複数人の知り合いの先輩から話を聞いてイメージはできていた。
「4回生の時には自分が憧れた天皇杯に出たい。関学サッカー部が自分を成長させてくれるだろう。関学サッカー部に入れば上手くいくだろう。」
正直、すべてが甘かった。


3年間でIリーグ(2軍以下の大会)の出場時間は35分。6-1で勝っていた後半10分からの投入。この一試合のみ。
3年間で一番下のカテゴリーからの昇格経験なし。

天皇杯を見た中学2年の私、高校受験の勉強に励む私、文武両道を志した高校生の私、大きな期待を胸に入部を決意した私。
過去のどの私でもこの3年間の現状を見た時、間違いなくがっかりするだろう。なんのために頑張っているのかと思うかもしれない。
これまでやってきたサッカーが否定された気分だった。
ここまで、学級でもサッカーでもある程度は存在感を示してきた。
しかし、憧れの組織に入ったものの本当に私は存在しているのかわからなかった。私が1回生の時、私のことを知らない4回生は多くいただろう。完全に村人Aだ。こんな経験は初めてだ。

挫折経験を挙げだしたらきりがない。
あきらかに信頼されていない。毎週のようにメンバー外。ボランチの荒木がきつくて主導権を握られる。
1回生の時、シーズンスタートでの練習。他の部員は10周走を終えて次のメニューに向かっている中、私はまだ1周半残っていた。
2回生の時、試合でノルマが達成できず100m走10本。8本目で足が攣り、私だけ最後まで走り切れなかった。

さすがに劣等感に見舞われた。
大学サッカーで上手くいったなという経験、結果を出せたなという経験は一つも出てこない。

しかし、昨年の1年間やブログを書いている現在、
エネルギーに満ち溢れている。
「挫折からくる熱量」と「人からの影響」がそうさせる。

この組織に身を置いたことに自信を持てない時期もあった。
でも今なら3年前に戻っても同じ選択ができる。
この大学サッカーでの挫折経験が最高の財産だからだ。打たれ強くなった。
「今年こそは自分の期待に応えたい。」

今思えば、これまで挫折するたびに熱量が高まっていった。
小学校。奈良県トレセン、奈良市選抜と計4回セレクションに落ちた。悔しくてより熱量が高まりチームとしてだが奈良県制覇できた。
中学校。関西大会出場は叶わなかったが、エネルギーを勉強に変換して厳しいと思われていた受験に合格できた。

これまでの人生では味わうことのできなかった経験が大学でできた。
上手くいかないことが当たり前の状況のおかげで自分のことを嫌でも奮い立たせられるようになった。感情をうまく表現できるようになった。
周りに声をかけられるようになった。

こうなれたのもこの挫折経験の中で、横にいた「人」の影響が大きかったと感じる。
自分が試合に出れていないのに内側に闘志を秘めながら組織にコミットする昨季のDチームカテゴリーキャプテン。
前期全く試合に出れなかった中、練習で雄叫びを上げ続けて後期にチャンスを掴んだ同期。
二度目の膝の大怪我にも関わらず、ブレず楽観的な二枚舌の同期。

こう行動すればいいのか。こんな考えがあったのか。
私も真似してみようと、
昨季はベンチ、ベンチ外でもピッチの選手に鼓舞をし続けた。
何気ないいつもの練習の1つのゴール、1つのヘディングで雄叫びをあげるようにした。
カテゴリーキャプテン、プロジェクトリーダーという役職に迷わず手を挙げた。

すると、少しずつ風向きが変わってきた。村人Aじゃなくなってきた。楽しくなってきた。

先日、一番下のカテゴリーから初めての昇格を果たした。
入部前に思い描いていたビジョンとは全く異なっているのに、嬉しかった。
3年前の自分が、一番下のカテゴリーから1つ昇格し喜んでいる自分を見たらがっかりするかもしれない。でもめっちゃ嬉しかった。

多くの同期、後輩、試合報告で試合のメンバーを見ている先輩から言葉をもらった。
「おめでとう。」
「原動力になった。」
「自分も頑張ります。」

これだ。この感覚だ。まだまだこれだけで収まる気はない。
あと8カ月。私が苦しいとき、人から大きな影響を受けたように、同期、後輩、より多くの人に良い影響を与えたい。自分の働きで人に活力を与えたい。誰かのきっかけになりたい。チームとして目標を達成したい。

「荒木の試合を見てよかった。」
「荒木のおかげで。」
そう言われるようにピッチ内外で躍動したい。
「あんな4回生いたな」と記憶に残る4回生でいたい。

辛いことの方が多かったけど大きな成長と変化を遂げた。
俺ならできる。自分に大きな期待をしている。

形は違うが入部前の自分に期待していた時とよく似ている。
でも、「自らの手でつかみ取ろうとする気持ち」
「どんな結果になったとしても後悔しないという覚悟」が違う。

本当に違うのか、大きな成長、変化を遂げたのか。
残りのシーズンで証明したい。
入部前に思い描いていたビジョン通りにはいかなかった。
3年越しのリベンジマッチだ。
最大の準備をして、何としてでも自分の期待を上回る。

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