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【第11章】新ブランド『ジャヌ (Janu)』とアマンの未来


これまで“少客室・秘匿性・排他性”を徹底的に追求してきたアマンが、2020年に新たなホテルブランドを発表しました。その名は「ジャヌ (Janu)」。サンスクリット語で「魂」や「生命力」を意味するとされるジャヌは、「アマンよりもややソーシャルな空間」「ウェルネスをさらに進化させた体験」を追求する新コンセプトとして打ち出されています。本章では、ジャヌ誕生の経緯や特徴を解説しながら、アマンの将来がどのように変化していくのかを展望します。


1. ジャヌ (Janu) 誕生の背景

1-1 ウラジミール・ドロニン体制下での多角化

  • オーナーの交代とビジョン拡張

    • 2014年にアマンを買収したウラジミール・ドロニンは、不動産デベロッパーとして世界各都市で大規模プロジェクトを手がける実績を持ち、アマンにも“さらなる成長と多角化”を求めました。

  • レジデンス事業に加えて新ブランド構想

    • アマンレジデンス という形で富裕層の住空間へ進出したあと、次に狙うのは「既存アマンと棲み分けを図りつつ、幅広い層を取り込む」新ブランド。そこで誕生したのがジャヌです。

1-2 “ソーシャルウェルネス”へのシフト

  • アマンとの違い:より“人とのつながり”を重視

    • 従来のアマンが“究極の静寂とプライバシー”を提供するのに対し、ジャヌは“ゲスト同士が交流できる空間” を積極的に取り入れた設計を想定。

  • ウェルネスの拡張

    • ジャヌでは、スパやトリートメントのほかに“グループレッスン” や“コミュニティ型リトリート” を強化。個人レベルの癒しだけでなく、他者との関わりを通じた精神的豊かさ を提案する新アプローチです。



2. ジャヌブランドのコンセプトと特徴

2-1 客室数の増加と価格帯

  • 客室数:アマンより多め

    • 従来のアマンが20〜50室 程度なのに対し、ジャヌは 80〜100室規模 を目安に計画。より多くのゲストを受け入れ、社交的な雰囲気 を作り出す狙いがあります。

  • 価格帯:アマンよりやや抑えめ

    • アマンほどの超高価格路線ではなく、少し広めの市場を見据えた料金設定に。ただし、一般的な高級ホテルよりは依然高額 で、“アマンのDNAを感じられるラグジュアリー” というポジションをキープ。

2-2 ソーシャルスペースとアクティビティ

  • 大きなラウンジ・共有空間

    • ジャヌでは、「ゲスト同士が自然に交流する」ことを狙い、広々としたラウンジ・ワークスペース・カフェエリア を設置。ヨガやフィットネスの合同クラスが頻繁に行われるなど、“一体感” を演出するプログラムが組まれます。

  • イベントやワークショップの強化

    • グループで楽しむクッキングクラス、エクササイズチャレンジ、ローカル文化体験など、ソーシャル要素を盛り込んだアクティビティを展開。

2-3 インテリア・建築デザイン

  • アマンらしいミニマリズムの継承

    • 過剰な装飾を避け、ローカル素材を活かす設計。

  • オープンなレイアウト

    • 広々としたロビーや長時間滞在しやすいカフェ空間など、“人が集まる設計” を強化。


3. ジャヌの第一号計画と今後の開業予定

3-1 ジャヌ東京(Janu Tokyo)

  • オープン予定:2023年以降

    • 森ビルの「麻布台ヒルズ」 に登場予定。

  • 都市型ジャヌの特徴

    • ウェルネスコミュニティ を核に据えた設計が行われ、数フロアにわたるスパやフィットネスエリア、ソーシャルラウンジを併設。


3-2 中東・アジアを中心とした拡大

  • ドバイ、バンコク、サウジアラビアなど

    • アマンの既存リゾートとの相乗効果 を狙い、幅広い富裕層・中間富裕層が利用できる環境を整える見込み。


4. アマンとジャヌが共存する意義

4-1 顧客層の拡張

  • アマン:超富裕層&静寂志向

  • ジャヌ:新興富裕層&社交志向

  • 新たな顧客導線

    • 「まずはジャヌを利用してブランドを知り、その後アマンのリゾートにも興味を持つ」というルートが想定。

4-2 ブランド一貫性と差別化

  • 共通する“ホスピタリティの質”

  • 対照的なコンセプト

    • アマンは“隠れ家”、ジャヌは“ソーシャル”。


5. アマンの未来:グローバルブランドとしての進化

5-1 投資家目線で見たアマン・ジャヌの将来性

  • 富裕層市場の拡大

    • アジア・中東を中心に富裕層人口が増加。

5-2 アマン流“少数展開”の維持とジャヌの拡張路線

  • 慎重な新規開業

  • ジャヌはテンポを上げる?

5-3 デジタル活用と新たな顧客コミュニケーション

  • オンライン・コミュニティ&リトリート

  • ウェルネス系アプリとの連携


まとめ:ジャヌが描くアマンの新章

  1. ソーシャルでありながらラグジュアリー

  2. アマンブランドの補完関係

  3. 投資家の期待とリスク


次回予告

第12章:「まとめと今後の展望 — 至高のホスピタリティを超えて」
いよいよ最終章。ここまで掘り下げてきたアマンの哲学やデザイン、美食、マーケティング、そして新ブランドのジャヌに至るまでを総括し、これからのホスピタリティ産業や富裕層マーケットの行方とあわせて、アマンの“未来”を描き出します。

連載記事一覧(予定)

  1. 第1章:アマンとは何か — その唯一無二の世界

  2. 第2章:創業者エイドリアン・ゼッカの生涯と思想

  3. 第3章:アマン創業史と資本変遷

  4. 第4章:アマンのブランド哲学 — 「少客室」「秘匿性」「排他性」の本質

  5. 第5章-A:世界のアマンリゾート一覧(アジア太平洋)

  6. 第5章-B:世界のアマンリゾート一覧(欧州・中東・アフリカ)

  7. 第5章-C:世界のアマンリゾート一覧(北米・カリブ)

  8. 第6章:アマンレジデンス — 住空間としてのラグジュアリー

  9. 第7章:デザイナーと建築 — アマンを支える空間美学

  10. 第8章:アマンのマーケティング戦略と顧客像

  11. 第9章:アマンの体験 — ウェルネス、食文化、アクティビティ

  12. 第10章:競合と比較するアマン — 他社事例との違い

  13. 第11章:新ブランド「ジャヌ (Janu)」とアマンの未来← 現在の記事

  14. 第12章:まとめと今後の展望 — 至高のホスピタリティを超えて

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