
【第10章】競合と比較するアマン — 他社事例との違い
アマンは「少客室」「秘匿性」「排他性」という3つの柱を徹底し、世界の富裕層から支持されるラグジュアリーホテルブランドとして君臨しています。しかし、世の中にはリッツカールトン、フォーシーズンズ、マンダリンオリエンタル、シックスセンシズ、COMOなど数多くの高級ホテル・リゾートチェーンが存在し、それぞれが独自の強みを打ち出しています。
本章では、アマンを他社ブランドと比較しながら、アマンが「唯一無二の存在」になり得た理由を明らかにしていきます。
1. 大手高級ホテルチェーンとの比較
1-1 リッツカールトン、フォーシーズンズとの違い
客室規模と拡張性
リッツカールトンやフォーシーズンズ は、世界中の主要都市やリゾート地に数百施設 を展開し、客室数も100〜300室規模 が多い。
アマン は少客室 で希少性を重視し、拠点数を意図的に少なく抑えることで、“一部の人しか知らない特別感” を演出。
サービスアプローチ
リッツやフォーシーズンズは“パーソナルサービス”を強みとしつつも、大規模ホテルゆえにある程度のマニュアル化 が必要。
アマン は ゲスト数が少ない =スタッフ一人ひとりがゲスト全員の特徴を把握しやすい ため、よりきめ細やかな“個人的邸宅”感を提供。
ブランディング戦略
大手チェーンは世界的に認知度が高く、広告やロイヤリティプログラム(会員制ポイントなど) で集客を図る。
アマンは“広告を行わない”“会員プログラムも限定的” とするなど、クローズドなマーケティング を徹底し、“秘匿性”を強みとする。
1-2 マンダリンオリエンタル、セントレジス、ペニンシュラとの比較
アジア発の老舗ラグジュアリーブランド
マンダリンオリエンタル、ペニンシュラ などはアジアの大都市で創業し、高級ビジネスホテルとしてのノウハウを蓄積。
アマン はリゾートチェーンとして出発し、都市型進出(アマン東京など)は比較的新しい動き。
ブランドの拡大方針
マンダリンやペニンシュラ は、拠点展開を綿密に行いつつも、各都市のランドマーク的存在 として大規模客室を備えるのが特徴。
アマン の都市進出は“少客室+上層階のみ”という形が多く、大都市の中心にいながらも静寂を保つ という難題を独自の設計でクリアしている。
2. ブティックリゾートブランドとの比較
2-1 シックスセンシズ(Six Senses)
スパ・サステナビリティ特化
シックスセンシズは環境保護・サステナビリティ をテーマに、世界のエコリゾートを積極展開。
アマンもサステナブルな取り組み を重視するが、基本は**「少客室×排他性」** がコア。
価格帯とターゲット
シックスセンシズはエコ志向のファミリー層 や欧米中間富裕層に広く門戸を開く。
アマンは超富裕層・セレブリティに特化し、より排他的な静寂 を提供。
2-2 COMO ホテルズ&リゾーツ
ファッション性とウェルネス
COMOはファッション界出身の創業者によるモード感のあるデザイン が特徴。
アマンはミニマリズム を重視し、静寂と自然との調和を追求。
リトリートとアクティビティ
COMO Shambhala(コモ・シャンバラ) はウェルネス特化型で、ヨガ・スパ・食事療法を包括的に提供。
アマン は“贅沢な滞在+ローカル体験”を総合的に提供。
2-3 バンヤンツリー(Banyan Tree)
ヴィラ型リゾートの先駆者
バンヤンツリーは「プライベートプール付きヴィラ」をいち早く導入。
アマンとは客室数が異なり、バンヤンツリーは複数のヴィラやレストランを備え、大衆市場にも対応。
ブランドの稀少性
バンヤンツリーは拡大戦略を推進 し、系列ブランドも増加。
アマンは“数を増やさない” ことで希少価値を保つ。
3. アマンの主要差別化要素
3-1 少客室×高価格:ブランドの核
客室50以下が基本
他社が100〜300室 を擁するのに対し、アマンは20〜50室 に限定。
圧倒的な単価設定
1泊10〜30万円以上 という超高価格帯でも、希少性を維持。
3-2 “秘匿性”+“排他性”マーケティング
広告を最小限に抑え、口コミ重視
富裕層コミュニティの形成
アマンジャンキー というリピーター集団が自然発生し、SNSを活用したブランド強化が成功。
3-3 都市型とリゾート型の融合
都市型アマンの独自性
アマン東京 や アマンニューヨーク は、都市の中心にありながら**“別世界の静寂”** を創る設計。
4. 競合比較の総合図表(例)

次回予告
第11章:「新ブランド「ジャヌ (Janu)」とアマンの未来」
アマンが2020年に発表した新ブランド「ジャヌ(Janu)」は、ソーシャルなウェルネス体験を重視し、アマンよりもやや客室数を増やした展開を予定しています。これは「少客室・秘匿性・排他性」をコアとする従来のアマン路線とどう両立していくのか? ウラジミール・ドロニン体制下での新戦略や投資家目線から見たアマンの将来性を考察します。
連載記事一覧(予定)
第1章:アマンとは何か — その唯一無二の世界
第2章:創業者エイドリアン・ゼッカの生涯と思想
第3章:アマン創業史と資本変遷
第4章:アマンのブランド哲学 — 「少客室」「秘匿性」「排他性」の本質
第5章-A:世界のアマンリゾート一覧(アジア太平洋)
第5章-B:世界のアマンリゾート一覧(欧州・中東・アフリカ)
第5章-C:世界のアマンリゾート一覧(北米・カリブ)
第6章:アマンレジデンス — 住空間としてのラグジュアリー
第7章:デザイナーと建築 — アマンを支える空間美学
第8章:アマンのマーケティング戦略と顧客像
第9章:アマンの体験 — ウェルネス、食文化、アクティビティ
第10章:競合と比較するアマン — 他社事例との違い← 現在の記事
第11章:新ブランド「ジャヌ (Janu)」とアマンの未来
第12章:まとめと今後の展望 — 至高のホスピタリティを超えて