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第1回:筋肉痛の基礎知識
筋トレやスポーツをしていると、翌日や数日後に「じんわり痛い…」という感覚が訪れることがあります。この痛みこそ、いわゆる筋肉痛です。特に運動後24~72時間を経てピークになるものを「遅発性筋肉痛(DOMS: Delayed Onset Muscle Soreness)」と呼びますが、実は筋肉痛にはさまざまな種類があり、起こるメカニズムも単純ではありません。
第1回では、この筋肉痛の基礎知識を解説します。
1. 筋肉痛にはどんな種類があるの?
1-1. 即発性筋肉痛
運動中や運動直後に感じる痛みを指します。短時間の激しい運動によって代謝産物(乳酸など)が一時的に増加し、筋肉が「だるい」「焼けつく」ように痛むのが特徴です。
代謝産物(特に乳酸)は運動後、比較的早期に処理されるため、翌日以降に長く痛みが残るわけではありません。
1-2. 遅発性筋肉痛(DOMS)
運動直後ではなく、数時間~数日経ってからピークを迎えるタイプの筋肉痛です。
翌日や翌々日に階段の上り下りがつらくなったり、腕が動かしづらくなったりする状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
エキセントリック収縮(筋肉を伸ばしながら力を発揮する動作)で起こる筋線維の微細損傷が主原因とされています。
その修復過程で起こる炎症反応により痛みが出ると考えられます。
痛みが遅れて出現するのは、免疫反応や炎症性物質の蓄積・処理に時間がかかるためとされています。
2. 遅発性筋肉痛(DOMS)はどうして遅れてやってくるの?
DOMS発生のメカニズムは完全には解明されていませんが、最も有力な説は以下のステップです。
筋肉の微細損傷
特にエキセントリック収縮の際、筋線維内部のZライン乱れやサルコメア(筋の最小単位)が破断するなど、“マイクロトラウマ(微小な傷)” が起こる。
炎症反応と痛み
損傷を受けた筋肉に免疫細胞が集まり、炎症性サイトカイン を放出して修復を進める。
この炎症反応が痛みや腫れ、熱感の原因となる。
時間差が生まれる理由
免疫細胞の集結や炎症物質の蓄積~処理には時間を要するため、運動直後ではなく数時間~数日後 に痛みがピークになる。
3. DOMSは“成長の証”なのか?
「筋肉痛がこないとトレーニングした気がしない」という声をよく耳にします。確かに、強い負荷をかけるほど筋肉痛が起こりやすくなる傾向はありますが、以下の点を押さえておきましょう。
痛みがない=トレーニングが無意味 とは限りません。
トレーニングを重ねると身体(筋肉や神経系)が慣れてきて、同じ負荷でも痛みが出にくくなる 「Repeated-Bout Effect」 が働きます。
したがって、筋肉痛の有無だけでトレーニング効果を判断するのは早計 といえます。
4. 筋肉痛はどのくらい続くの?
4-1. 一般的な経過
24~72時間 後に痛みがピークを迎え、3~5日 ほどで徐々に消失することが多いです。
普段使わない筋肉を急に酷使したり、初めて高い強度のトレーニングを行ったりした場合は、1週間程度 痛むこともあります。
4-2. 2週間以上続く場合
関節痛や刺すような痛みが続く場合や、腫れや内出血を伴う場合は、DOMSではなく別のケガや炎症性疾患を疑う必要があります。
痛みがあまりに強い場合は、医療機関の受診 を検討しましょう。
5. まとめ
筋肉痛には 即発性筋肉痛 と 遅発性筋肉痛(DOMS) の2種類がある。
即発性筋肉痛:運動直後の乳酸など代謝産物による痛み。
遅発性筋肉痛:筋線維損傷と炎症反応による痛みで、数日かけてピークになる。
DOMSは筋肉の損傷と修復プロセスが関わっているが、痛みの度合いと筋肥大・筋力向上の程度は必ずしも比例しない。
Repeated-Bout Effect のように、筋肉痛を感じにくくなること自体も身体の適応のサインである。
2週間を超えて痛みが続く、または関節部位の鋭い痛みや強い腫れがある場合 は、早めに専門家に相談を。
次回予告
第2回:エキセントリック収縮とトレーニング効果
なぜ「伸ばしながら負荷をかける」と筋肉が強くなるのか?
実践的なエクササイズの例と注意点を紹介!
Repeated-Bout Effect を活かしたプログラムの組み方
次回もお楽しみに!