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第1回:睡眠の基礎と意識改革― 黄金の90分を制して、ビジネスパフォーマンスを最大化する ―

1. はじめに:睡眠を「余った時間」で済ませていませんか?

現代のビジネスパーソンは、多忙なスケジュールと高い責任を抱え、「寝ている暇なんてない」と感じている人が少なくありません。深夜まで業務をこなし、休日は家族や趣味の時間に充てる—そうやってどうにか1日の時間をやりくりしているうちに、結局「睡眠時間」を削る羽目になる……という経験が多いのではないでしょうか。

しかし最新の研究や専門家の見解では、「睡眠を削ることこそが、パフォーマンスを最も大きく損なう原因になり得る」と明確に示されています。慢性的な寝不足による認知機能低下やメンタル不調、肥満や生活習慣病リスクの上昇など、体にも心にも大きな悪影響が及ぶことがわかってきたのです。

ここでまず意識改革としてお伝えしたいのが、「睡眠は余った時間に取ればよい“可処分時間”ではなく、最優先で確保すべき“住宅ローン”である」という発想です。

2. 「睡眠は住宅ローン」という考え方

2-1. 住宅ローン的に「まず固定費として確保する」

家計管理に例えると、多くの人はまず「家賃や住宅ローン」などの固定費を支払って残った分を食費や趣味に回しますよね。ここで住宅ローンを後回しにしてしまうと、たちまち生活が破綻するのは言うまでもありません。

睡眠もこれと同じと考えてください。1日24時間という時間のうち、自分の健康とパフォーマンスを維持するために最低限必要な睡眠時間は絶対に削ってはいけないのです。例えば、健康的に7時間半の睡眠を要する方であれば、それを「住宅ローン」のように最初に「支払う」感覚で確保します。

  • Point: 「今日は特に忙しいから寝不足でOK」ではなく、「忙しくても睡眠は7時間半を死守。そのうえで仕事や趣味の時間をやりくりする」という逆転の発想を持つことが重要。

2-2. 過処分時間(趣味・残業など)より先に睡眠を固定

従来の多くの人は、仕事や家事、会食や趣味などの予定を全部詰め込んだあと、残った時間を睡眠に回す思考パターンになりがちです。すると、どうしても削られやすいのが寝る時間。「明日から頑張ろう」としても、夜更かしや急な作業が発生して結局同じ悪循環に陥りがちです。

ここを断ち切るために、スケジュールを組むときは真っ先に**“睡眠”をブロックするのが鉄則です。

  • 例: 23時〜翌朝6時半までの7時間半は就寝タイムと固定し、それ以外の17時間を有効活用する。

  • これだけでも日中の集中力や創造性が高まり、結果的に仕事効率がアップする場合が少なくありません。

3. 「黄金の90分」とは何か?

3-1. 深いノンレム睡眠がカギ

よく専門家の間で「黄金の90分」という言葉が使われます。これは入眠直後の最も深いノンレム睡眠のことを指し、睡眠全体の中でも疲労回復や成長ホルモン分泌、自律神経の調整などが集中的に行われる非常に重要な時間帯です。

  • 最初の90分に何が行われる?

    • 成長ホルモン(大人でも筋肉修復などに役立つ)

    • 深いノンレム睡眠で脳の老廃物を効果的に除去

    • 自律神経の切り替え(交感神経 → 副交感神経)

3-2. 最初の90分がズタズタだと後半の睡眠も乱れやすい

最初の深いノンレム睡眠が十分に確保されないままだと、その後に入るレム睡眠や第二周期以降の睡眠もバランスを崩し、結果的に夜中の覚醒回数が増える・翌朝の目覚めが悪い・日中の眠気が強いなどの問題を引き起こすことがあります。

ビジネスアスリートの場合、「黄金の90分」をしっかり獲得することで翌日の集中力・創造性が飛躍的に高まるだけでなく、体の疲労回復が早まり、トレーニングや仕事の両面でメリットが得られます。

4. 質 × 量の両輪を意識しよう

4-1. 短時間睡眠は“酩酊状態”と同じ!?

忙しいビジネスパーソンの中には「自分はショートスリーパーだから5時間でもOK」と思い込み、実は慢性的な寝不足状態に陥っている方が少なくありません。

  • 研究によれば: 1週間ほど1日4時間睡眠を続けると、脳のパフォーマンスが徹夜明けと同等レベル(酔っぱらい状態)に低下するデータがあります。

  • たとえ自覚がなくても、仕事のミスやイライラ感、創造力の鈍化として現れ、ビジネス成果を大きく損なうリスクがあるのです。

4-2. 質の良いノンレム睡眠+必要な睡眠時間を両立

「黄金の90分」を得るためには、体温調節(就寝1〜2時間前に入浴、寝室温度の最適化など)や寝具の選択、そして就寝前のスマホ利用控え(ブルーライト削減)がカギになります。しかし、どんなに良い寝付きが得られても、トータルの睡眠時間が足りなければ疲労は回復しきれません。

  • まずは自分にとって適切な睡眠時間がどれくらいかを把握しましょう。

  • 休日に起きたいだけ寝てみて、自然に目覚めるまでの時間を知る。

  • 多くの人は7〜8時間がベスト。自称ショートスリーパーはごく一部。

  • 「寝付きは良いけど短すぎる」場合は、日中の集中力やメンタル面に影響する可能性が高いです。

5. ビジネスアスリートにとっての睡眠のメリット

5-1. 生産性・創造性の向上

短い時間で仕事や勉強を片付けるためにも、“眠る”ことが一番の時短だと考えてみてください。脳の処理スピードが高まり、ケアレスミスや無駄な試行錯誤が減るので、結果的に仕事量が効率化されます。

  • 朝方の方がクリアな頭で戦略的思考に取り組める → イノベーションやアイデアを生み出しやすい。

5-2. 体力・筋力のリカバリー

深いノンレム睡眠時に分泌される成長ホルモンは、筋肉の修復や疲労回復を促します。トレーニングの効果を最大化するにも、睡眠は不可欠です。

  • 逆に睡眠不足が続くと、内臓脂肪が増えやすくなったり、免疫力が低下するなど健康面でも大きなリスクを伴います。

6. 本日のまとめ&次回予告

  1. 「睡眠=削れる余剰時間」ではなく、「先に確保すべき最優先コスト」

    • まず寝る時間を7〜8時間確保してから、残りの時間で仕事や趣味を計画する。

  2. 「黄金の90分」をしっかり確保しよう

    • 入眠直後の深いノンレム睡眠が疲労回復・脳のクリアリングに不可欠。

  3. 質も量も必要

    • ショートスリーパーを過信せず、客観的にパフォーマンスを観察する。

  4. ビジネスアスリートが目指すのは“高効率の仕事&健康体”

    • 睡眠不足で仕事の効率を落とすより、しっかり眠って短時間で集中するほうが結果的に生産性が高い。

次回予告

次回(第2回)は、「睡眠時無呼吸症候群(OSA)とその治療法」をテーマに掘り下げます。日本には重症度も含め約900万人の潜在患者がいるともいわれ、放置すると脳卒中や心筋梗塞リスクが数倍に高まる深刻な疾患です。

  • あなたの「いびき」や「昼間の眠気」は単なる疲れではなく、睡眠時無呼吸が原因かもしれません。早期発見と適切な治療のポイントを次回詳しくお伝えします。


本連載では、ビジネスパフォーマンス向上を目指す方々に向けて、最新の睡眠医学と実践的なヒントをお届けします。まずは「睡眠を最優先に確保する」という意識改革から始めてみてください。

あなたの脳と体が、きっと新たなポテンシャルを引き出してくれるはずです。

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