5時間視聴してレビュー!J1 第27節 清水エスパルス-名古屋グランパス
前節ホームで0-4と大敗しましたが、見事といっていいリカバリを見せてくれました。攻守ともに目に見えて完成度が高まり、ウノゼロお得意の名古屋相手に追いついての1-1。
気になった個所をまとめてみました。
前線に当てた時のフォロー
前節のレビューでも行ったが、前線にボールを当てた時のフォローがどうだったのかをまとめた。2試合同じ場面をまとめて思ったのは、パスを受けた選手の正面に味方を配置すると、リターンが出やすいということ。外から見ているとパスコースがあるように見えても、ピッチではそこに味方がいることが見えていないことも多々ある。ボールを見ると自然に視界に入る場所に位置する、もしくはそこから動き出すことで、ボール保持者が存在を認知でき、ボールを引き出す確率はぐっと上がると考える。
05:08 自陣ペナルティエリア付近にて松岡から前線のサンタナへ縦パス。松岡はパスを出した後サンタナへ寄っていく。サンタナは自陣に戻りながらワントラップして松岡へリターン。
18:47 センターサークル付近にいるホナウドから前線から降りてきたサンタナへ楔のパス。サンタナ回収できず。パスコースはサンタナの右にコロリ、左に藤本。どちらも、ボールを受けたサンタナの視界からは消えてしまう位置。
27:09 相手右からの攻撃を自陣ペナルティエリア内でコロリが足に当て、そのボールを松岡が前にいるサンタナへパス。中谷に潰された。パスコースは藤本のみ。藤本の存在は認知していたと思うが、基本的にサンタナはワントラップしたうえでパスを出したがる。個人的には、できればワンタッチではたいてほしい。
29:31 ハーフウェイラインにいる松岡から藤本へ縦パス。パスコースは、藤本の正面にホナウド、左に唯人。藤本はダイレクトでホナウドへ落とす。この距離、角度なら落としやすい。
46:00 自陣1/3 左タッチラインからの片山のスローイン。前線のコロリへ当てる。ボールを受けた時点ではパスコースは無かったが、片山がすぐにコロリの正面に動き、パスを引き出した。片山はこの際、ボールを呼び込むジェスチャーもしている。出し手としたら助かるだろう。
45:24 自陣2/3 左サイドにいる片山からサンタナへ少しふんわりしたパスを供給。パスコースは左に藤本、少し距離はあるが正面方向にホナウド。サンタナはキープし、ホナウドへ繋げた。
51:04 松岡がハーフウェイライン中央からドリブルし、藤本へ縦パス。藤本はワンタッチでサンタナへパスを出すが、キムミンテに阻まれカウンター。最終的に森下にシュートを打たれてしまった。前線に当ててコンビネーションで攻略したい意図は感じる。あとはその精度。
56:39 失点シーン。自陣1/2 左ハーフスペースにて松岡→サンタナへ縦パス。しかし稲垣と中谷に挟まれてボールロスト。パスコースはサンタナから見て左前の藤本のみだった。
また、このシーンでは、相手FWへのパスコースを制限すべきボランチもその使命を果たせていなかった。ホナウドは左サイドにおり、松岡は長澤の体勢と自身右にいるフリーの森下が気になり少し右に動いたため、左後ろにいる前田へのコースを開けてしまった。ボールを奪われた直後のため、背後の前田の位置を事前に確認できなかったのも痛かった。そこを通され、ズドン。陣形が整う前に早く攻められると、こうなってしまう。
82:14 自陣1/2 右タッチラインのスローイン。奥井からサンタナに当てた。パスコースはすぐ近くの藤本、少し離れたサンタナの正面にいる滝。サンタナはトラップして滝を選択。滝からワンタッチで藤本を裏に走らせるボールを送った。
前線にボールを当てた時のフォローは増えている。逆に言えば、フォローがない時に無理に前に当てないという判断もできてきている。あとは、フォローの位置と、サンタナの判断・頑張りというところか。
前線からのプレス
この試合、前線からのプレスがうまくできていた。理由は間違いなく右FWに入った藤本。2つのシーンを挙げる。
10:51 名古屋が最終ラインにボールを下げたところから、徐々に圧を強めていく。(下記画像はDAZNの映像と左右が逆)
藤本は中谷へプレスへ行きつつ、宮原にボールが入ったら稲垣へのパスコースを超警戒。コロリはマテウスへのコースを警戒。ホナウドはマテウスを意識しつつも稲垣へ寄せ、仮にボールを出されてもすぐ寄せられる位置をキープ。中谷へボールが戻ったら再び藤本がプレス。長澤へのコースはサンタナが切る。中谷からキムミンテにパスが出たら、外側から吉田へのパスコースを切りながら唯人がプレス。
この時も、藤本は稲垣へのパスコースを睨み、稲垣の後ろにホナウドが構える。キムミンテ→中谷へパス。中谷がマテウスへ縦パスを入れ、マテウスがワンタッチで柿谷へ出したところを井林が回収。マテウスの降りる動きには付ききれなかったし、マテウスのパス精度にも助けられたが、最後までボランチにパスを通させず、うまくできていた。
24:10 名古屋最終ラインからのビルドアップに対して圧をかける。中谷からキムミンテにパスが渡った瞬間、藤本がダッシュで寄せる。ただ寄せるだけでなく長澤へのパスコースも警戒する。松岡も長澤へ寄せるそぶりを見せ、借りにボールが出てしまってもケアできるように位置。キムミンテは中谷に返す。中谷→キムミンテ。長澤を自由にさせるべく、森下が下がってくる。よりゴールに近い位置にフリーの森下が来たことで、松岡が森下に寄る。キムミンテから吉田へパス。吉田に唯人が付く。唯人が出た外側のスペースに森下が移動。松岡も同じスペースへ。名古屋の狙い通り一瞬フリーになった長澤へパスが入る。が、松岡も長澤へ素早く寄せ、トラップする余裕を与えない。結果、長澤はダイレクトで森下へ出すことになり、そのパスが弱くなったところを出足よく奥井がカットした。ギリギリの攻防だった。
ボランチへのコースを消すことで、FWが置き去りにされることが無くなる。4-4-2の2が突破されなければ、破綻は無い。仮にボランチにボールが入っても、すぐに寄せることで時間を与えなければ相手の精度は下がる。
相手最終ラインからのロングボールの勝率
この試合、名古屋の最終ラインからのロングボールに対して、ほとんど清水の選手が勝つことができているように見えた。なので、実際にどうだったのか手集計で確認してみた。
結果は次の通り。
相手が競ってこない場合もあったので、「競り合い勝敗」という項目名も微妙ではあるが、やはりほとんどの場面で競り合いには勝てていたことがわかる。ファウルや両者触れなかった場合を除いて計算すると、17/19→勝率は89%にもなる。
名古屋の前線は上背もさほどなく、ヘディングが得意なヴァウド、井林からしたらやりやすかったのだと思う。
一方、気になるのは、その後マイボールにできたのが8/21→38%しかないことだ。競り合いには勝てているのにマイボールにできないのは何とも残念。はじき返すのがやっとの場面では仕方ないが、清水の選手の傾向として、
・トラップしようと思えばトラップできる場面でもヘディングする
・近くにいる味方ではなく、最前線に向けて大きくヘディングする
ということがあるような気がする。理由は、自陣で変な奪われ方をしないためだと思うが、もう少しボールを持てる際には保持した方が、試合を自分たちのペースに持ち込めると思う。
数少ない、ハメられたシーン
48:18 井林が自陣ペナルティエリアの中から前線へのフィード。ハーフウェイラインも超えず、味方にも合わないため、即カウンターでピンチになり、中央やや左の柿谷からペナルティエリアに走りこんできたマテウスがシュート。幸い、権田の正面だったので事なきを得る。このシーン、なぜ井林はこのボールを選択したのか。
片山にマテウス、ホナウドに長澤が付く。松岡へのパスコースを消しながら前田が井林に圧をかけ、柿谷は権田やヴァウドへ出たらプレスに行く準備をしている。松岡には稲垣も寄せようとしている。この試合で初めて、名古屋が前からハメに来た。ここまでは清水の最終ラインはほぼ自由にボールを持てていたため、急にボールの出しどころが無くなり、井林は焦り、中途半端なボールを蹴ってしまったのだと思う。嫌な感じがしたなら、相手ディフェンスラインの裏に蹴って、ボールを捨ててしまってもよかった。もしくはサンタナ狙い。
個人的には、前からハメられた方が清水にとってはきつかっただろうなと感じる。
得点シーン
72:49 得点シーン。キムミンテのロングボールをハーフウェイライン近く右ハーフスペースでヴァウドが回収したところからビルドアップ開始。ヴァウド→松岡→ヴァウド→井林→ホナウド→ヴァウド→松岡→ヴァウド→井林→ホナウド→滝→藤本→サンタナのゴールという流れ。
ビルドアップ時、最終ラインは右から松岡、ヴァウド、井林。アンカーの位置にホナウド。滝が左ハーフスペース、片山が大外。途中、ボールをもらうために藤本が中央のスペース、米本の脇まで降りてくる。藤本の位置には西澤が代わりに入る。藤本はそこから、フリーでボールが受けられそうな稲垣の脇、清水の右ハーフスペースに動くが、結局ボールは左サイドへ送られたため、藤本はがっかりのポーズ。ゆっくりと前線に戻ろうとする。この流れで、藤本が右サイドのスペースにいたところに、滝からパスが出て、相馬をかわして(頭ではなく)足で合わせる高さのクロスを右足で上げる。西澤がニアに走ることでキムミンテを引きつける。サンタナが右足でゴール左隅へ決めた。
サンタナが久々にゴールをした点(2か月ぶりらしい)、藤本がサンタナの信頼を勝ち得た点がさらに良かった。この二人のコンビネーションは今後どんどん良くなってほしい。
トピック
◆コロリの戦術理解
20:52 名古屋陣地1/3 左ハーフスペースから、長澤が右奥のマテウスへ長いボールを供給。オーバーラップした宮原にボールが渡り、エリア内にフリーで侵入されてしまった。原因はコロリが戻りきれず、宮原に付いていかなかったこと。
クリアした井林がコロリに対し、ボールについて来いよ!と強い手振りと声かけをしている。この辺は戦術理解度を上げてもらうしかない。
ただ、その後の飲水タイムでコロリが井林に話しかけ、おそらくポジションについて確認を行なっていた。この積極的な姿勢を見て、フィットするのにそれほど時間はかからないと感じた。
◆左に移ることで生き生きした滝
66分、コロリ→西澤に選手交代するとともに滝を左へポジションチェンジ。それまでは相馬に蓋をされてうまく行っていなかったが、左へ移ることで復活。得意のドリブルを見せる場面も出た。良い配置変更だった。
◆竹内
90:37 相手ペナルティエリア付近で滝のドリブルが止められた後。竹内が阿部に素早く寄せ、ボールを奪った。結果、片山のシュートシーンを作り出すことができた。あの位置で(ディレイではなく)ボールを奪えるのは非常に大きい。藤本へのクロスや味方への鼓舞も含め、良い活躍だった。
◆名古屋17番 森下
オフザボールの動きが良かった。名古屋のビルドアップ時、最初は清水最終ラインにいて、ボールを呼び込むように降りることで近くにいた奥井は付いていけない。唯人、松岡の間に降りてきてはボールを引き出していた。清水からすると、稲垣、長澤のダブルボランチからさらにパスの受け手が増えると苦しい。また、森下が降りてくることで、唯人は吉田、松岡は長澤へのプレスが行きづらくなる。
◆フィッカデンティ監督
46:07 フィッカデンティ監督、目の前にボールが転がってきて、一瞬取ろうとしたけど、清水ボールだからって腕組んで拾いもせずそっぽ向く。拾ってよ笑
◆名古屋25番 前田
絶対サイドの選手だよね。特に前半はかなり清水の左サイドをやられた印象。失点シーンは真ん中にいたからだけど。右サイドが主戦場だよなぁと感じた。
おわりに
前節から打って変わってチームとしてのまとまりを感じさせてくれたエスパルス。その一因は間違いなく藤本。ボランチを消しながら相手最終ラインへのプレスを最後まで続ける。自陣に押し込まれた時も、相手が最終ラインまでボールを下げたら素早くプレスに行ってチーム全体を押し戻す。正直、チャラいだけのキャラだと思ってしまっていたが、見直さないといけない。すばらしい選手。すばらしい補強だ。
攻撃についても、相手を押し込んで左右に揺さぶりながらじわじわと攻める時間も増えてきた。アタッキングサードでは、(今節はほとんどなかったがは)以前からあった右サイドから左足(左サイドから右足)で大外を狙うクロスのほかに、前線に縦パスを当ててそこから組み立てるやり方も、チームとして取り組んでいるのが伝わる。攻撃の手段を着実に増やしている。開幕当初のように、攻め手がない状況からは脱却した。
守備も、ボランチに強度の高い選手(ホナウド、松岡)が、前線に相手ボランチを消しながらプレスができる藤本が入ることで前からのプレスも成功率が上がっている。やはりゾーンで守る形になるので左右に素早く振られた時のスライド遅れからMFラインを突破される形が目立つが、多少は仕方がないとは思う。それよりも、前線に当てたのをあっさりと奪われ陣形が整う前に攻められることが続いているので、そこをどう整理するのか見ていきたい。フォローを増やすのか、無理な縦パスを減らすのか。両方か。
ホナウドやコロリのコンディション・戦術理解度の向上、前線に当てた時の連携強化、カルリーニョスの復帰など、これから上向く要素は数知れない。次節は前半戦で何もやらせてもらえなかった鳥栖戦(ボールポゼッション34%:66%。シュート数は4:16)。やり返そう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。