無人島の音楽家の独り言
まがりなりにも、作曲家、ボカロP (AI音声なので若干違うと思うが) として、まずまず長い間活動している。その間に、コード理論を覚え、打ち込みの仕方を覚え、Cubaseをアップデートし、Neutorino と出会い、ギターの腕前をどこかでなくしてしまった。思えば遠くへ来たもんだという感慨がある。
YouTubeに曲を投稿し始めて、既に一年以上が経った。最初の頃は、本当に視聴回数は10回以下程度だった。インターネットという大海に曲を詰め込んだボトルを流しては、どこにも届かず無人島で体育座りをする日々であった。しかし、まあ、それはそういうものだと思って、音楽を作り続けてきた。
数ヶ月前から視聴回数が100回単位で増え始め、少しずつ上向いているように感じた。遠くの海にも人が確かに存在することを認識した、そんな驚きと喜びを感じた。
そして、つい最近、二ヶ月ほど前に投稿した曲が突然3000回近く再生された。3000回、その数字は人気のチャンネルならほんの数秒で得られる程度の再生回数だが、無人島ぐらしが長かったので、眼の前をタンカーが横切ったような衝撃である。
正直なところ、私自身はこの曲だけが特別素晴らしいとは思っていなかった。どの流したボトルに詰め込んだものにも光る部分があり、雑な部分がある。しかし、大型船舶の軌跡はなかなか消えず、未だに多くの人々に聞かれ続けている。
チャンスがやってきたと思ってないといえば嘘になる。さらにその次に似た世界観の曲を作ろうと狙いすまし、作曲を行った。これまでのボトル流しは無駄ではなく、このためのマイルストンだったのだと思いたかった。
結果は、単に元に戻っただけだった。視聴回数は伸びず、正直期待外れだった。楽曲のクオリティーに大きな差があったとは考えていない。この差異が一体何を意味しているのかはよく分からない。なぜあの曲だけが人々の関心を引くのか、その理由が掴めない。
ほとんど凪となった海面を見て、「まあそういうこともあるよね」とひとりごちる。今後も音楽を作り続けるつもりだ。ボトルは無限にある。もちろん、多くの人々に聞いてもらえることは嬉しいが、それよりも過程を大切にしたい。
YouTubeは広大で、多くの人々が様々な動画を楽しんでいる。その中で、どの曲が注目を浴びるのか、何が人々の心を捉えるのか、予測することは困難だ。だからこそ、数字ではなく、音楽を中心に添えたい。音楽が生まれるのは一人からだから。