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世界一キライなあなたに


街が賑やかに彩られた夜。
サンタクロースは仕事を終えて帰っている頃でしょうか。
この日、久しぶりに映画を観ました。

ちなみにこの作品、個人的に好きな映画1位に堂々ランクインしております。


以下、ネタバレを含みます。




世界一キライなあなたに
(原題:Me Before You)


舞台はイギリスの田舎町。ルイーザ・クラーク(以下、ルー)は、お洒落をすることが大好きな26歳。ある日、働いていたカフェが閉店することになったルーが新たに得た職は、バイクの事故で車椅子生活を余儀なくされ、生きる希望を失ってしまった超ハンサムな大富豪ウィル・トレイナーのお世話係をする期間6ヶ月の仕事だった。最初はルーに冷たく当たるウィルだったがルーの明るさが、ウィルの頑な心を溶かしていき、やがて2人は恋に落ちていく。しかしある日ルーは知ってしまう。
ウィルが決めた「生きる時間」があとわずかだということを・・・。
(公式サイトより引用)



普段映画を観て高確率で泣いている私ですが、嗚咽するほど泣いたのは初めてです。


安楽死。

治癒が見込めない病気、以前のようには戻らない身体、それに伴う周りの苦労、等
これらを抱えて生きるには耐えられないと本人が選択した場合に、意図的に寿命を縮める行為。
自殺幇助、ともいいます。

日本では未だ認められておらず、犯罪とされています。
似たようなもので尊厳死がありますが、これは延命治療を施さず自然な死を待ちます。
こちらは日本でも度々あります。



この作品では、バイク事故で首から下は二度と動くことのなくなってしまったウィルが自らの意思により、自殺幇助の認められているスイスへ旅立ちました。

お世話係として雇われていたルーは、持ち前の明るさとウィルを救いたいという強い想いをもってなんとか気が変わらないか、と彼をあらゆる場所へ連れ出します。

少しでも今の人生に前向きになって"生きたい"と思ってもらうために。


どうすることが正しいかは時々によりますが、
必ずしも長く生きることがすべて幸せとは限りません。

心を開いたウィルは、ルーの前だけではできる限り前向きに振る舞っていた。
ルーはそれを生きる希望を取り戻してきている、と思い込んでしまったが故に、彼の本当の苦しみや決意を知った時、怒りに近い絶望を露わにしました。


しかし、事故以前の身体はどう足掻いても取り戻すことができないのです。
好きなように好きなことを自由にできる彼は、もういないのです。
この苦痛を本人以外に誰が理解できるでしょうか。


いくら周りの人間が手を尽くして励まそうとも、一度生きる希望を見失った者の決意を揺るがすことなど、容易いはずがありません。



私は看護学生として、倫理において常に問われるこの難題について、本人の強い意志は最大限尊重すべきである、と思っています。

何度も言いますが、今後元の身体には戻らないことや苦しみから解放されることのないとわかって生きることは当人以外には分かり得ない辛さがあります。
それを宥めて励ましたつもりになっていても、私たちの前ではそれまで以上に無理をして平気な顔をすることもあるでしょう。

もちろん、心から前向きになることができたなら新たな自分を受け入れて生きたい、と思えることだってあります。

だから、私は安楽死賛成派というよりは意志尊重派というほうがしっくりきます。
本人が生きたいと思えば今の状態でもより幸せに生きられるように模索し、もう楽にして欲しいと望めば最も意志に沿う方法を探すべきであると思うのです。


と、考えを書いてはいるものの、こんなものは理想論です。
実際日本に住む私にできることは限られてしまうし、そもそも身近にそういった境遇の人がいないのでこれまで見聞きしてきたことからの想像でしかありません。


ただ、これから医療職を目指すいち学生として、今回この映画を観たことで沸々と思いが生まれたのでここに記している次第です。



世界一キライなあなたに

医療職者、医療職を目指す人、
そして大切な誰かがいる人にぜひおすすめしたい映画です。


もうひとつ、この作品に関わって言いたいことを最後に。

パトリック、恋人への誕生日プレゼントに自分の名前入りのネックレスは重すぎるぜ。



では。


【追記】
この文章を書き始めた12/25の深夜から、投稿する今日に至るまで時間が経ってしまいましたが、クリスマス気分は抜けておりません。
あー、本当にいい映画だった。

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