「に」と「へ」で変えられる焦点〜言葉の素晴らしさ〜
プレバトという番組をご存知でしょうか。
タレントや芸能人のみなさんが水彩画や俳句、華などにチャレンジし、その業界の名人から査定されるという内容です。
作品の素晴らしさ(駄作も含めて)を拝見できたり、皆さんの意外な才能を垣間見たり、名人からの解説が知識欲を刺激してくれるので結構好きな番組なんです。(自分の作品をけちょんけちょんに言われてムキになる梅沢富美男さんがかわいすぎて)
先日フルーツポンチの村上氏が作った俳句について、辛口・毒舌・言葉への愛が溢れていることで有名の夏井いつき先生(通称:なっちゃん)が解説されている内容がめちゃくちゃ面白かったのでついシェアしたくなりました。
「観覧車の 列に春ショールの 教師」
今回の俳句のテーマは遊園地だったんですが、この作品のポイントは「列に」の助詞「に」の使い方だったんですよね。
夏井先生曰く他の助詞でも成り立つ俳句(情景がはっきり映像化できる素晴らしい内容)らしいので、助詞の効果、使い方などを詳しく解説してくださったんです。
<助詞「に」の場合>
「観覧車の 列に春ショールの 教師」
観覧車の順番を待つ生徒の中「に」制服以外の女性教師が一緒に順番待ちをしている姿がひときわ際立つ(制服が黒や紺で統一されているなかで鮮やかなショールの色がワンポイントで頭に飛び込んでくるよう)
※観覧車→順番を待つ生徒の列→女性教師、のように大きなものから小さいものへ焦点が合ってくるように、どんどん解像度が上がり読んだ人の想像力をかき立てる
<助詞「へ」の場合>
「観覧車の 列へ春ショールの 教師」
観覧車の順番を待つ生徒の中「へ」女性教師が歩み寄る、駆け寄っていくシーンが浮かぶ(言葉の中に動きが生まれ、アクセントがつき抑揚が生まれる)
※観覧車を待つ生徒(静)→駆け寄る女性教師(動)の対比と焦点が変わり、大きな動きが生まれる(印象が強くなる)
この解説を聞いて「へぇー!!」と感動したのと、俳句の深さ、言葉の素晴らしさにあらためて気付かされたんですよね。
何気なく使っている(話している)言葉、その一つ一つに目的や役割があり、使い方をちょっと工夫するだけで大きな変化をもたらせられるものだと痛感しましたね。
言葉一つで世界を変えられる
動画の素晴らしさは十分にわかっているつもりです。でも言葉って一言で世界をガラッと変えられるんですよね。しかも無料で。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」−雪国 川端康成
冒頭から読者の頭の中に真白な銀世界、幻想的な情景がぶわーっと広がりますよね。
「遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・」–スターウォーズ 冒頭文
もうこの短い一言だけで一瞬にして全く知らない世界に飛び込んだ感じしませんか?自分達の常識が通じない未知の世界が広がっているようなそんな気がしてきます。素敵すぎる。
僕たちが当たり前のように使っている言葉、少し考えるだけで伝わる印象はガラッと変わります。
誰かに何かを伝えたいと思ったとき、ふと立ち止まって工夫してみてもいいかもしれませんね。(オチはない)