小説 フランシスベーコン(2006年)
トライアングルの音を永久に引き伸ばしたような、ぴーんという微音が、さっきから鳴っていた。――すぐ脇の肩先を見下ろすと、だいたい九十センチメートル四方の薄い油紙が、塗り立てたばかりのペンキみたいにとても生生しい色使いのネイビーブルーの壁にぴったりとくっついている。その左の角が少し剥がれかけて、折からの風に弄ばれて機械のように手を振っている。と思うや、黒っぽい生き物がすうーとスライドしてこちらに近づいてくる。それは正面から間近にみると、全体的に暴力的な風貌だった。具体的に言えば、